なぜ街の電器店でエアコン上位機種が売れるのか 地域と電器店の太いつながり

売り込まなくても依頼がある

夏季に向け、パナソニックはエアコン「エオリア」の提案活動を始めている。エアコンは決して安い買い物ではなく、上位モデルほど顧客との関係構築が重要だ。そこで欠かせない存在となっているのが、地域密着の営業スタイルで、消費者の潜在的なニーズに応える“街の電器店”。「α湘南あすか」「パナリブVividトーシン」の2店舗に取材した。

「α湘南あすか」。「α湘南」グループ6店舗のうちの1店だ。各店舗間での情報共有にも積極的で、有用な施策を互いに取り入れている

パナソニックショップ「α湘南あすか」(神奈川県)は1970年創業で、本店(茅ヶ崎市萩園)7人、支店(同市南湖)5人の計13人体制。顧客世帯数は約1300に上り、年商は支店を含めて約1億4000万円。本店における2023年のエアコン販売台数は180台、うち2割が最上位モデルの「XSシリーズ」という。

「ほかの家電を他店で買っても、エアコンについては必ず当店で、というお客さまがいらっしゃる」と話すのは、「α湘南あすか」の舛水昭博社長。実に既存顧客の5割がエアコンを同店から購入している。

なぜ、大手家電量販店ではなく、“街の電器店”か。顧客とのつながりを築くのに一役買っているのが、エアコンの無料点検活動だ。「α湘南あすか」では、30年以上にわたって毎年、実施。2〜3月から始める点検活動は、ちょっとした風物詩となっている。

点検は、顧客が悩みごと、困っていることを話す機会でもある。「エアコンを売るためではなく、ご相談に乗る。“ついでに”ということで、別の電機製品の不調についてもお話いただくケースは多い。特段、売り込まなくても、お客さまのほうからご依頼をくださる」(舛水社長)

6年ほど前に代表になった舛水社長

ほかにどのような電機製品があるか、何年前の機種か。点検するエアコン以外にも気を配る。舛水社長は、「家電の購入はタイミング」と話す。買ったばかりの新品で、別の商品を勧められたって誰も買わない。逆に、いつ買ったかなんて覚えていないのも確かだ。いつの間にか耐用年数を超えた家電が壊れると、想像以上に不便なものだ。

「単にお得なキャンペーンがあるから、ということよりも、今どのような製品をお使いで、その中に、突然故障してもおかしくないものがあった。そんな状況をきちんと踏まえた上で、じゃあこうしたキャンペーンがありますよ、と。そうお伝えするのとでは大きな違いがある」(舛水社長)

「地域電器店は、能動的に、お客さまの課題を解決していく存在」と話すのは、「α湘南あすか」を担当する、パナソニック専門店営業部の安藤健太主務。自ら動いて消費者ニーズに接していく地域電器店の活動は、メーカーであるパナソニックも重要視している。

「パナリブVividトーシン」もエアコン点検などを通じて顧客を訪問し、家電の経年数などを把握している

販売から施工、修理まで同じ担当者

「売って終わりではなく、お買い上げいただいてからが始まり」と話すのは、東京都足立区のパナソニックショップ「パナリブVividトーシン」の浅川賢二営業部長だ。約92平方メートルの店舗で、年商は約1億5000万円。顧客としているのは1500~2000世帯。同店も、パナソニックのエアコンを年間で230~250台販売し、上位機種がその2、3割を占める。

「パナリブVividトーシン」では、1世帯に対して、同じ担当者が継続して対応に当たる。販売だけでなく、施工や修理もすべて同じスタッフが担い、「当店で直せないなら、どこに行っても直せないがモットー」(浅川営業部長)。ベースとなる技術力や、故障や不具合だけでなく、「操作方法がわからない」といった細かな要望にも応えることで、気軽に相談できる信頼を獲得していく。月間で担当1人あたり50〜100軒を回っているという。

商品を販売した日を「商品バースデー」とし、保証期間が切れるころにはがきを送って家電製品の調子を確認する取り組みもある。顧客自身の誕生日にちょっとしたプレゼントとバースデーカードで感謝の気持ちを伝えるなど、気配りも細やかだ。

浅川義男社長の次男である賢二営業部長(右)と、母親の美代子氏

メーカー発のキャンペーン情報だけでなく、自治体の補助金の情報などにも目を配り、申請のサポートもしている。「キャンペーンや補助金の情報がお客さまに浸透しているのは地域店のおかげ」(パナソニック専門店営業部の浦下哲也所長)

同店は自店に顧客を招いて楽しんでもらう個展も年4回実施している。単なる販促目的の催しではなく、顧客に日頃の感謝を伝えるための取り組みで、景品付きのくじ引きを用意し、家族連れで遊びに来てもらっている。店の外に設置したテントで野菜なども販売していることから一見客も多く、毎回2日間の開催で150~180世帯が来店。売上は当日だけで約1000万円に上る。過去に個展で遊んでいた子どもが成長し現在の顧客になったケースもあるなど、イベントを通じて世代を超えた関係を築いている。

「高齢化が進む中、購買難民を減らすためには、顧客の来店を待つ量販店だけでなく、自発的に顧客に会いに行く地域電器店が重要」と強調する浦下氏。ネット通販が台頭した現在でも地域電器店の存在は同社にとって欠かせない。後継者不足などで店舗数は減少傾向だが、パナソニックは専門店モデルの販売やホームページによる店舗紹介などで連携を深め、”街の電器店”の存在感を高めていく考えだ。

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