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本屋経営者も参考にする「透明書店」 販売状況など経営の裏側を公開、freee

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「棚貸しサービス」などで新規事業者を応援

経営状況から企画内容まで、店舗運営の裏側を包み隠さずオープンにする書店が注目を集めている。クラウド会計サービスを手掛けるIT企業「freee」が開業した「透明書店」(東京・台東)だ。書店経営などのスモールビジネスを応援する目的で、店舗運営に関する工夫や施策を一般公開している。実際の経営を通じて学んだノウハウを共有することで、新たに本屋を始めたい人の参考にしてもらう狙い。同店が発信しているコンテンツを店舗づくりの参考にしている書店経営者もいるという。

写真 店舗・商業施設 freee
蔵前で営む「透明書店」。同店を通じて様々なスモールビジネスが誕生することに期待を寄せる

2023年4月にオープンした透明書店は、freeeのグループ会社「透明書店」が東京都台東区の蔵前で運営。広さは約72平方メートルで、日ごとの売上や来店数のほか、天気や細かい出来事まで、Webサービス「note」(約2175フォロワー)などで公開している。来店客は20~30代が8割で、男女比は4対6。会社員の利用が7割を占める。

ノンフィクションや小説、エッセイ、漫画、絵本など約3000冊の本を販売。大規模書店との差別化のため、個人出版の雑誌「リトルプレス」を多く扱うほか、小説やエッセイはアンソロジーを中心に気軽に読める本をラインナップしている。店内モニターでは「ChatGPT」などのAI技術を活用した「くらげAI」がおすすめの本の紹介や来店客との雑談を行う。

年間売り上げは約1000万円(計画比80%)。収益向上の施策として、イベント開催頻度の増加、店舗スペースのレンタル、飲食環境の充実などを検討している。外部イベントへの出展やオンラインショップの強化なども進める。今後、同店の一棚を貸し出す「棚貸しサービス」も開始予定で、選書や仕入れのサポートを受けながらビジネスを始めることができる。

書店運営の中で特にイベントを重視しており、2023年4~12月までに計28回実施している。書籍を販売した場合、書店が受け取れる利益は本体価格の2割ほどだが、イベントでは7~8割の利益率を目指すことが可能だという。4~12月のイベント売上は約136万円で、全体売上の約17%を占める。店内で俳句や短歌を楽しむ「句会・歌会」、新刊を取り上げたトークイベントなどを実施。今後は頻度を増やし、毎月6~8回は開催したい考えだ。

顧客と同じ目線に立つことで課題を体験し、freeeの会計サービスの改善につなげる狙いも。店舗運営で実際に経理や労務の事務作業を行うことで、UI/UX改善やAPI連携の利便性向上に反映させているという。

freee広報担当者は「透明書店オープンに関するメディア露出は、freee上場に次ぐインパクトだった」とコメント。同店を通じて「ChatGPT」などのAI機能をアウトプットするなど、自らがスモールビジネスを営むことで自由な経営を体現できたと手ごたえを強調。一方で開業1年での単月黒字化といった目標の達成には至らず、今後は「『魅力的かつ持続可能な本屋』のあり方を模索したい」と意気込みを語った。

3月13日から26日まで都内各所で開催された「Tokyo Creative Salon(TCS)」に参加。ファッションウィークとデザインウィークの同時開催によるイベントで、同店は阪急メンズ東京(東京・千代田)の会場で、「リトルプレス」の販売やトークイベントを実施。販売点数は約50点、売上は約10万円だった。

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