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広報担当者が押さえておきたい サステナビリティ情報開示の3ポイント

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社会起点に立った企業価値を示すことが重視されている昨今、サステナビリティの取り組みもブランディングに寄与する傾向にある。だが、その開示にあたっては注意点もある。サステナビリティ情報の開示に詳しい安藤光展氏が解説した。
※本記事は『広報会議』2024年4月号 (3月1日発売号)「企業ブランディング 求心力を生む新たな取り組み」に掲載している内容の転載記事です。
写真 人物 プロフィール 安藤光展氏

サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事
安藤光展氏(あんどう・みつのぶ)

サステナビリティ・コンサルタント。専門はサステナビリティ経営、サステナビリティ情報開示。国内上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』ほか多数。

上場企業などを対象に、有価証券報告書でサステナビリティ情報の開示が義務化した昨今。IRやサステナビリティ推進の担当者だけでなく、広報担当者にもサステナビリティ関連の情報発信が身近となる時代が来ています。

情報開示における国内外のトレンド

このサステナビリティ情報の開示規制(法制化)はグローバルで起きている潮流です。中でも欧州では、2024年1月から開示を規制する法律が段階的に施行されて企業の対応がスタートし、今後は欧州で一定レベルのビジネスを行っている日本企業にも施行されます。

国内外での規制やガイドラインが急速に整備されている分野として、目立つのは「人権」や「生物多様性」関連です。直近に大手企業の不祥事がありましたが、性加害や過重労働など人権に関するテーマの社会問題が顕在化。一般メディアでも「ビジネスと人権」について取り上げられてきています。国内でも今後、対応を義務化する動きもあり、注視すべき分野です。

また「生物多様性への対応(環境保全活動)」は、国際的な議論が先行する形に。グローバル事業を展開する日本企業が追随する状況です。2023年9月に発表されたTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の対応も進み、2024年は企業から対応状況の発信が増えそうです。

サステナビリティ経営のジレンマ

グローバルでサステナビリティ実現に向けたガイドラインの整備が加速していますが、過度な規制の結果として「反ESG」、つまり「“ESG規制”を規制する」動きが増えています。ESG規制により「経済と自由が損なわれる」というのが主な主張で、特にアメリカでは機関投資家がESGという表現の使用を控えたり、ESG投資が減少したりする動きもあります。

しかし、大手企業を中心にサステナビリティ推進の活動自体をやめる企業は少なく、「ESGであってもなくてもステークホルダーのためにすべきことを粛々と取り組んでいく」状況のようです。サステナビリティは政治問題ともいわれるように、悩ましい世界的なジレンマではあります。

サステナビリティ経営とは、企業を軸に様々なステークホルダーとの関係づくり(エンゲージメント)を進めることです。ステークホルダー同士で利害が対立することも多く、綺麗なことばかりではないのが現状なのです。

では、広報担当者は今後、どのようにコミュニケーションを構築すればいいのでしょうか。以下の「3つの方法論」が、コミュニケーションの質を高めるポイントと考えます。

広報担当者が押さえるべき3ポイント

ひとつ目は、「グリーンウォッシュに注意する」こと。「グリーンウォッシュ」とは、見せかけだけで実態が伴わない環境対応や表現を指します。ネガティブな意味で使い、昨今では環境分野だけではなく社会全般の事柄についても指します。広報がサステナビリティに関するコミュニケーションをしていく上で、最も重要な要素のひとつといえます。欧州では「環境配慮をアピールする広告表現の一部が、消費者などステークホルダーの誤解につながる」として、グリーンウォッシュ規制が制定される動きが進んでいます。つまり「1年前に問題なかった広報手法・表現が、1年後も問題がないとは限らない」という時代なのです。

対策は、消費者に分かりやすい適切な環境表示を徹底することでしょう。環境省の「環境表示ガイドライン」では「あいまいな表現や環境主張は行わないこと」「環境主張の内容に説明文を付けること」「環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能であること」などを企業に求めています。

2つ目は「パーパスを軸に一貫性を仕組み化する」ことです。不透明で変化の大きい時代こそ“変化しない軸”を持つのが重要です。たとえば企業固有の確固たる理念として「パーパス」があります。パーパスは社会が変わっても、変えてはならないものです。パーパスを軸にすると、広報手法がどのように変化しても一貫性を体現できます。この一貫性こそ、矛盾が多いサステナビリティの世界で唯一の道標となります。

図

実務的には「パーパスはスタートでありゴールでもある」と考えます。従業員からするとパーパスは「スタート(業務の意思決定の判断軸)」であり、組織からするとパーパスは「ゴール(あるべき姿、実現すべき目標)」だからです。

ただ難しいのは、パーパスは定性的で抽象度が高く、従業員が行動を逆算しにくい概念であること。そのため中長期的には「個人のパーパス」と「組織のパーパス」のすり合わせが重要です。パーパスの社内浸透や企業文化の形成は、サステナビリティ時代の広報戦略の前提として常に意識する必要があります。

3つ目は、「(社内外の)矛盾を飛び越える…

 

記事の続きは、本誌からご確認ください。
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誌面の特集では、このほかにも、35年ぶりのグループリブランディングを実施しているJTBグループや、リブランディングで売上高70%増加(単月比較)を実現した北海道のメーカー・環境大善、企業のビジョンをクリエイティブで伝えることに注力したプロニなど、様々な業種や企業規模のリブランディング事例を取り上げています。

ぜひ誌面を参考に、自社の企業ブランド力の向上につなげてください。

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広報会議2024年4月号

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