システム導入後の教育が精度向上のカギ
イオンリテールは今春からAIを活用した「ワークスケジュール自動作成機能」「新・販売計画支援システム」を約360店舗で導入する。店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業務の属人化解消やデータによる可視化につなげる。労働環境の変化に対応するだけでなく、自動化や最適化によって業務効率を高める狙いも。スタッフの負担軽減と効率化によって、デジタルで代替不可能な顧客サービスの質向上や新サービス創出も図る。2020年以降に実装した各種AIシステムと「新・販売計画支援システム」で創出できる人時は、年間約200万人時になると試算している。
4月21日から店舗の全部門で実装する「ワークスケジュール自動作成機能」は、2022年に実装した「AIワーク」の機能拡張。「AIワーク」ではAIが客数予測を行い、最適な人時計画を自動で立案した。これまでは勤務希望に合わせてシフト起案を行うまでだったが、今回の機能拡張によって「何時から何時まで弁当製造」「何時から何時まで揚げ物製造」といったように、一人ひとりのスキル合わせた時間帯ごとの作業割り当てまで可能になった。
計画された時間内で個人の習得スキルに合わせた最適な業務項目をAIが自動で割り当てるようになったことで、すでに導入している一部の部門では、ワークスケジュールの作成時間が半減~8割減になったという。
今春実装予定の「新・販売計画支援システム」では、販売計画の作成を半自動化。作成時間は導入前の8分の1に短縮されるほか、タブレット端末での計画の確認や編集が可能になり、現場確認を含めた進捗管理や従業員同士のコミュニケーションがより円滑になるとしている。
店舗でのAIシステムの導入当初は、従来の業務プロセスの変更や新システム導入に対して反発もあったという。教育体制を整備し、導入の目的を明確に伝えることで利用率を高めることに成功。全社での実装の前に、実際の店舗で十分な検証を行い、デメリットを解消している。
システムへの理解度によって活用の度合いにばらつきが発生することを想定し、システム導入時にはe-ラーニングなどを活用し、各部門担当者の教育も実施している。同社は「システムを展開するだけでなく、展開後の教育も支援し、徹底的に活用できる体制を構築している」と話す。イベントや地域情報など、AIでは予測できないイレギュラー事項も存在するとしており「人が勘案しなければならない領域を理解し、並行して対応することで精度を向上させてシステムを活用できる」と指摘。年1回、DXにおける好事例を紹介する報告会も実施している。
AIによる需要予測についても、最初はデータの整理から始まったが、試行錯誤を重ねて実用性を高めた。現場スタッフが積極的に活用するようになった結果、AIによる改善事例が現場から多数報告され、システムの浸透が加速したという。
同社は「これまで培ってきたAIによる正確な需要予測を生かせば、開発・生産・物流などサプライチェーン全体の最適化に繋げることができる」とAIの有用性を強調。「まずは自社の範囲内で活用範囲を広げ、将来的にはグループの物流網にも貢献したい」と話した。
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