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世帯普及率10%達成のロボット掃除機 アイロボット日本法人の独自戦略

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普及価格帯の新製品でさらなる拡大を目指す

アイロボットジャパンは4月17日、ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」や床拭きロボット「Braava(ブラーバ)」の全国世帯普及率10%を達成したと発表した。世界の累計販売台数は5000万台、同社による日本国内での出荷台数は600万台を突破。日本市場でのさらなる普及拡大を目指すため、新たな販売戦略として普及価格帯の新商品を4月19日に発売する。幅広いニーズに応えるため、プレミアムモデルとスタンダードモデルもラインナップする。

新製品の「Roomba Combo Essential robot」と挽野社長。カラーは定番の「ブラック」に加え、日本の消費者からリクエストが多かった「ホワイト」も12年ぶりにラインナップした

エントリーモデルとして発売する「Roomba Combo Essential robot」(税込3万9300円)は、ルンバの基本となる掃除機掛け機能に加え、モップの取り付けによる水拭き機能も追加。これまで水拭き機能は10万円を超えるモデル限定だった。

ほかのルンバと同様、V字型シングルアクションブラシやエッジクリーニングブラシなどを備えた「4段階クリーニングシステム」も搭載。センサーで家具を避けながら効率的に走行することもできる。同社が蓄積した学習データによる高性能なソフトウェアは、競合製品が追随できない強みの一つとしている。

性能と低価格と両立するため、日本家屋の広さにおいて十分な性能を発揮できるセンサー数に絞ったほか、ソフトウェアでカバーできる要素は極力省いたという。初めてロボット掃除機を扱う人のほか、単身者やシニア層などに訴求する考え。オンラインストアのほか、新たに認定販売店に加わったヤマダデンキなど、幅広いタッチポイントを通じて普及拡大を図る。

過剰な価格競争を避けるため、在庫リスクを負担する代わりにメーカーの指定価格で販売する「指定価格制度」を初導入。今回発表した新製品から対象となる。「購入後、より安価で売られていた」といったケースが少なくなるなど、顧客が安心して購入できるようになるメリットもあるとしている。

新製品と並ぶ山田マーケティング本部長

日本でのシェア拡大には様々な困難もあった。上陸当時の日本ではロボット掃除機に対する理解が進んでおらず、普及が難しかったという。他人や機械に家事を代行してもらうことになじみがなく、現在のように共働きも一般的ではなかったためだ。

当初のルンバは「あなたの代わりに掃除する」といったマーケティングコミュニケーションを採用していたが、日本市場ではあまり効果的ではなかったという。マーケティング本部長兼新規事業開発室長の山田毅氏は「日本人は毎日自分で掃除する人が多く、機械に自分の代わりができると考える人は少なかった」と話す。

日本法人であるアイロボットジャパンが2017年に設立してから、マーケティング戦略を一新。「あなたに掃除の助けになる」という文脈で訴求を始めた。「海外ではベビーシッターなど、家事のアウトソースが一般的だが、日本では引け目を感じる人も多い」と分析する山田氏。「任せる」ではなく「助ける」ための商品という認識を広めたことで、日本での普及が進んだという。

日本市場での普及には価格戦略の見直しも効果的だった。従来は信頼できる機能性をアピールするため、高価格なプレミアムブランドとして訴求してきたが、2018年に手頃価格の「e5」を発売し、普及が加速した。現在、ルンバは70ヵ国以上で販売しているが、日本市場でのシェアは米国に次ぐ第2位。労働人口の減少、共働き世帯の増加、高齢化など、ロボット掃除機が必要とされる環境が進んでいることも追い風となっている。

これまでは30~40代の子育て世帯が主要客だったが、最近は共働きが多い20~30代の需要も拡大し、客層の若返りが見られるという。働き方改革が進んだことで、生活スタイルが多様化したことも要因とみる。

2019年に開始したサブスクリプションサービスも普及を後押しした。サブスクは日本限定の取り組み。日本家屋でロボット掃除機を有効活用できるか不安に思い、購入をためらう人に効果を発揮している。返品可能なため、まずはサブスクで試すことで有用性を確認してから購入する人も多い。

ロボット掃除機の普及には、顧客のライフステージを意識することも重要だという。ロボット掃除機は引っ越し、結婚、出産、ペットの購入など生活の変化に合わせて購入することが多く、「引っ越し応援キャンペーン」なども積極的に実施した。

同社は、耐久消費財は世帯普及率が10%を超えると一気に普及が進むとみている。挽野元社長は、今年を商品普及の障害(キャズム)を乗り越えた年として、「すべての家庭にロボット掃除機がある時代を目指す」と意気込みを話した。将来的には世帯普及率100%を達成したいとしている。

4月19日にはプレミアムモデル「Roomba Combo j5+」(税込10万8700円)とスタンダードモデル「Roomba Combo i5+」(同7万9000円)も発売する。交換式2in1モデルで、水拭きを行う際に対応容器に付け替えるだけで、掃除機掛けと水拭き掃除を同時に行うことができる。

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