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コラム

迂闊鬼十則 〜 うかつなヤツがトクするキャリアの法則

複業のススメ(ホワイト企業で満足してますか?)

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人より抜けた結果を出したい。
そして、社会からより必要とされる自分になりたい。
ただ、やりたいことがわからない。
自分は、いったい何をすればいいのだろうか?自分に何が向いているのだろうか?
わからないけど、ここではない、今の自分ではいけないような気がする……。

いま、若者の転職話をとてもよく聞く。ぼくが以前在籍していた巨大広告代理店・電通からも。
電通は、入社のハードルこそ非常に高いが、もと国策会社の伝統的な大企業なので、ぶっちゃけ入れば一生安泰だよーという企業だ。
なのに、なぜプラチナチケットを手に入れてまで、蹴る若者が増えたのか?と部長クラスの人にヒアリングした。

「ひとつは、年収かもね」

という驚きの返答だった。

いままで、同社の給与モデルに不服という声は聞いたことがなかった。
上場企業なので平均年収モデルが公開されている。

電通、なんと平均年収、1520万円!
(タレントスクエア調査より。今あらためて確認して、コーヒー吹きました)

「うおーっ!!羨ましい」
「うちの会社じゃ絶対無理すぎて死ねる」
など阿鼻叫喚の感想が聞こえてくる。

が、どうやら事情はもっと複雑らしい。

横に「平均年齢44.0歳」とある。

日本の伝統企業の特性として、若いときの給与は一般レベルとあまり差が出ない。電通の初任給は275,600円だ。しかし、コロナ以前から「若いのに高給だね」と言われるのは、実は残業代に支えられているところが大きい。残業代は通常給与の1.25倍であり、とことん働きまくって残業をすることで、20〜30代においても高水準の年収モデルになる。

逆に言うと、若いうちは残業しないと別に高くないのだ。

ここまでの話を聞くと、
「じゃけん残業ばーしとんじゃのお、こんブラック企業が!」
などと非難する諸兄もあろうが、実態は違う。

まったく逆で、ホワイト企業化が問題なのだ。
たとえば電通は、純白のホワイト企業になりつつあり、残業がしづらくなっている。
たいがい、「残業を制限する制度は作っておいたので、まあうまくやってよね」という建前であることが多いが、建物が自動的に消灯したり、残業時間を超えそうになると本人のみならず上司に警告が行くなど、きっちりと社員の過重労働を抑えようとしてくれる「驚きの白さ」である。三六協定により、残業時間が厳格に定められており、残業が絶対できないようになっている。

むしろ、残業をしたくてもできない。

電通だけではなく、令和のコンプライアンスと、ワークライフバランスを重んじるZ世代の空気感があいまって、社会全体が、

「もう、たくさん残業して働くなんてやめときましょうね。ね」

というベクトルに一気呵成なんである。

しかし、ことクリエイティブの職種に関しては、仕事が面白いから残業している人が大半ではないか。

仕事に結論や終わりがない領域なので、無限に時間が伸びる。営業やメディアであっても、今まで世の中になかった価値やビジネスをつくろうとするならば、創造性が求められる。残業ができなくなっているせいで、相応に給与も減らさざるを得ず、仕事もフルスイングできなければ、収入も思ったより伸びない。これがひとつの退職理由になっているらしいのだ。

ぼくが働いていたのが、おそらく最後のユルい世代。「残業時間200時間ですが何か(※勤務時間ではなく残業時間)」と競っていたり、土曜の朝まで働いて、築地市場が空く朝5時半に小休止で、場外の寿司屋で日本酒と3,500円おまかせセットをかっこんでまた会社に戻るとか、喫煙しながら仕事をし続けていたら、灰皿に吸い殻が詰まりすぎて、ガトリング砲のような状態になっているとか、そういうのがギリギリ見逃されていた。

仕事が面白いから、熱狂する。

「ピタゴラスイッチ」の佐藤雅彦さんが電通在職だった時代。当時から伝説的な大ブームCMをいくつも作られていたが、ご本人の産みの苦しみも相当だったようで、プレゼン前の彼のデスクには大量のCMコンテ案が乱雑に置かれた状態になっており、その上に、

答えは絶対にある

という殴り書きがあったそうだ。
あんなすごい人でも熱狂して、残業して、ひたすら試行錯誤を繰り返していた時代があったのだ。
いま、それができなくなってきている。

しかし、実はいまの風潮は、大チャンスが目の前に転がっているとも言える。

これから紹介していく、迂闊鬼十則の6条
ルールはハッキングしよう
というものがある。

社会全体がたくさん働くことを禁じ、根を詰めさせないようになっていることを逆手に取ると、ほかの人がワークライフバランスで休んでるときに、差をつけられるようなことができれば、以前よりはるかにカンタンに周りをブチ抜けるわけだ。

みな正直に
「会社が休めって言ってるんだから休むよね、残業できないよね」と、仕事量を減らす。
すると、給与総額も減るし、「自分の仕事をローンチした!」という自己肯定感も減っていく。
Z世代だって、「仕事一辺倒の人間」にはなりたくないものの、人生で何かを成し遂げたい、いい待遇や暮らしもしたい、自分の没頭できるものには打ち込みたいと思っているのだ。

そこに、外資やらコンサルやらが
「当社ならクリエイティブディレクターになれるよ〜」
「年収ぐっと上がるよ〜」
などと引き抜きアクションを起こしており、彼らの気持ちは揺さぶられる。

「ああっ、これなら、私の『ここではないどこか』になりうるかも…」

 

部長、折り入ってご相談があります。
わたし、転職します。

(※ご相談と言っておきながら、相談する気は一切ない)

 

これが、この業界の状況であるようだ。

 

ぼくは、転職に関しては否定しない。

が、この世間でも高年収と言われる広告代理店でこれなのだから、時代を象徴している。

もう、日本の給与モデルと副業禁止の正社員スタイルは、今の若者に合ってない。

老後2000万問題は有名だが、世代間格差も開くばかりで、みんなが年金をもらう頃、2050年には、1.4人で1人の老人を食わせなければならない。

というか、どうせこの国であるからして、年金制度もしれっと崩壊するだろう。
震災からコロナ禍、岸田政権までで「しれっと改悪」はもうみんな、何度も辛酸を舐めたはずだ。みんなに送られている「ねんきん定期便」のシミュレーションが、実際の将来の金額をまったく担保していないことに注目してほしい。

もうひとつ、優秀な若者は、アウトプットに飢えている。仕事の経験値が上がるのは、プロジェクトがローンチして、世に出て、その反響を目にしたときだ。たとえば広告で、斬新な切り口のキャンペーンを行うとき、ローンチ1日前までは、いくらシミュレーションしても、結局のところどれだけ世の中で話題になるかわからない。ところが公開した瞬間「あ、こういうふうになるのね」と、自分の血肉に経験値が行き渡る。
令和の宿命は、コンプラだらけで、ローンチの数が異様に少ないのだ。
広告業界ならば、年に3〜4キャンペーンくらいじゃないだろうか?
これは致命的に少ない、と言える。

広告なんて、定年後も死ぬ直前までできてしまう仕事なので、「すごいシニアのエース」がいつまでもリタイヤせず、ずっと大きな仕事を取って行ってしまい、おこぼれみたいな仕事が続く。人生100年時代。自分が65歳になったころ、85歳のレジェンドCDのおかげでまだいい仕事が回ってこない、なんてことも想像に難くない。

どうすれば、打席数が増えるのか?
年収を増やせるのか?

 

ぼくは「複業・パラレルキャリア志向になろう」という意見だ。
副業ではなく、複業。

副業で、タイミーやUberEatsでバイトしたり、YouTube切り抜き、せどりをするのももちろん悪くないと思う。ただ、せっかくならば、自分の本業とまったく関係のないところで、お金を稼ぐためだけに働くような働き方はしないほうがいい。それはお金の奴隷になっているだけだ。

「複業」とは、本業で培われた自分の軸となるスキルを、本業のためではなく、マルチに使えるようにすることだ。そのサブ活動で得た、新たなサブスキルや人脈ネットワークが、また本業に生かされることで、プラス還元されて協力になる。
これをぼくは「じぶんシナジー」と呼んでいる。
そして、その軸スキル+サブスキル+人脈が、あなたのさらなる武器になり、会社にとって必要不可欠な存在になり、重宝され、本業においても年収が上がるのだ。年収が高くあるべきは、「愚直にあなたの会社一本槍で外の世界を見てこなかった人」ではなく、「多くの経験値を積み、あなたしかできない仕事がたくさんある魅力をもった人」になっていく。

おそらく、企業の経営側でこの文章を読まれた方は、
「会社で身につけたスキルをそのままよそで使われちゃ、こちとら商売あがったりだ。利益相反の可能性もある。副業を許しても、それはダメ!!!」
と思われる向きもあろう。

しかし、もう、そういう時代じゃないのだ。
才能ある人材を「これはウチの人材だもんね」と囲い込んでいくことがナンセンスになっている。
本業で蓄積したスキルを、複業で活用して何が悪い。競合を支援するとか、本来なら会社で受けるべき仕事を横取りするなど、悪質なものでなければ、寛容になっていくべきだ。
(もちろん、悪質か良質かの線引きができない人は、やる資格がないが)

 

「でも、副業も複業も認められてないし、そもそもシナジーのある仕事なんてどうやってつくっていくの?」

 

そこなんです!!!

そこで、このコラムです。

 

ぼくは、子供の頃から多動ぎみで、何かと「迂闊(うかつ)な子」と言われてきて、あらゆる面で落ちこぼれであった。通信簿には「落ち着きのない子供」と書かれ、ついたあだ名は「ロクなことをしない」だった。
ところが、いくつかのきっかけを境に、3社の経営・3社の顧問と社団法人の理事、ラジオパーソナリティなどを兼任するパラレルキャリアになった。

 

そのきっかけとは、「迂闊力」の活用である。

 

「迂闊」という言葉は、「十分に注意せず、不用意に行うさま」という意味で、「迂闊にものを言うな」「こりゃ迂闊に手が出せぬわい」などとネガティブな用法で使われる。しかし、令和の現代、多くの人がKY力が高まり、迂闊な失敗をしなくなった一方で、気をつかわなくていいところを忖度し、手を出さず、大変な機会損失をしているようにぼくには思える。正直、ほかの人がやらないおこぼれを拾っていったら、人よりよいパフォーマンスが出せた。

ぼくは「ここは迂闊なほうがトクする法則」を、電通鬼十則のごとくルール化し、誰でも使える技術に昇華した。これが中村流「迂闊鬼十則」である。

 

ちなみに、十則といっておきながら387則ある。

 

迂闊に増やしていったら、こんな数になっていた。
この中から汎用性のあるテーマを紹介していく。

とにかく、令和の時代、みんないろいろ気にしすぎなのだ。

一億総パラレルキャリアになっていくこれからの時代には、日常のちょっとした意識を「迂闊モード」に変えるだけで、人生は好転する。

次回からは、日常の選択肢を「迂闊モード」にしていく方法、そして「自分の軸」となっている「クリエイティブ × デジタル × マーケ」の3つをどう育て増やしてきたか。複数のキャリアをうまく乗りこなす秘訣。墓まで持っていこうかと思ったような、話しちゃいけないことも、迂闊にも極力全部解禁していこうと思う。

たぶん大丈夫っしょ!

 

迂闊鬼十則の6

ルールはハッキングしよう

ルールは、かならず作り手の意図がある。その意図を理解し、うまく利用したり逆手に取ることでブルーオーシャンに出会えたり、大きな武器になりうる。

 

そして最後にお願い。
全部解禁と言いつつ、このコラム、連載枠としてもらっているのは、3回ぶんほど。
しかし、読んでくれたみなさんがシェアしたり反響をくださることで、もう少し連載が伸びます。
ぜひ「もう少し読みたい」と思った方はシェアください!

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