品が良すぎる漫才(有元沙矢香)コピー年鑑2023より

2023年度TCC賞の受賞作品や審査通過作品を収録した『コピー年鑑2023』。今回の特長のひとつは、読み応えのある審査選評です。一般部門の「TCCグランプリ」「TCC賞」の計15作には、3人の審査委員がそれぞれ800~900字の選評を寄せています。その一部をアドタイで紹介します。

今回は、TCC賞を受賞したハースト婦人画報社「婦人画報のお取り寄せ」(受賞者/岡本欣也、泉田岳)への、有元沙矢香さんの選評です。

品が良すぎる漫才(有元沙矢香)

あぁ、なんだろう。心地いい言葉のリズム。ワクワクする言葉の連鎖。はじめて見た時から、本能的に好きでした。何を言っているかよりも、音としてまずとても好きで。だからついつい何度も見てしまうのだと思います。そして見るたびに沼にハマっていく感じ。

冷静に見ると、現実には起こり得ない会話をしていて、この時代に何を言うか、ということばかり考えがちでしたが、言葉が持つ音、韻、文字数といった物性を使ってこんなにも楽しいCMが作れるのかとハッとさせられました。あまりに上質な紙でラッピングされていたから気づかなかったけれど、これは漫才に近いのかもしれないなと。

そして、とても大事なことを話しているようで、実はものすごくどうでもいいことを話していたり、適当なことを言っているようで、実は人間の本質に迫っていたり。音の強弱もさることながら、内容の強弱も、このCMが心を惹きつける理由だと思います。

特に好きなのは、2 本目の「もう間違えることはできないのね」の一言。最初見た時は、なに言ってんねんと笑ってしまったのですが、何度も見るうちに、あの方の過去やその先の人生まで想像してしまい、なんだかとてつもなく深い一言に思えたりもして。

キャスティングも素晴らしいなと思いました。それぞれにいろんな経験を積んできたであろう3人が、家庭や会社ではストレスを抱えているのかもしれないけれど、この時だけは目の前にある幸福と向き合っている。たった30 秒なのに、人生を感じる時間に仕上がっている。心が満たされるおいしいものがあるからこそ、たわいもない会話が生まれて、中身のない会話だからこそ、その背景にあるものまで想像してしまう。そういう意味で、ちゃんとこのCMの真ん中には商品があるんだなと再確認。

あと、字幕もとても効いていて、「お取り寄せ」「ありがとう」「おめでとう」5 文字の幸福の発見感は、字幕によってより印象的になっているなと。会話劇ってこんな遊び方をしたっていいんだよなと、悔しいながらも希望を感じ、1票を投じざるを得ませんでした。

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コピー年鑑2023

2023年度のTCCグランプリ、TCC賞、TCC新人賞をはじめ、5000点超の応募作品の中から90人のコピーライターが選んだ広告645点を掲載。受賞作品とファイナリスト作品には、審査委員の眼力と筆力の集積ともいえる充実の審査選評を収録しました。今年の広告は、世の中に何を問いかけたのか。「言葉を読む、コピーを読み込むための年鑑」から、コピーライターたちの熱いエネルギーを体感してください。

編集/東京コピーライターズクラブ 審査委員長/太田恵美 編集委員長/麻生哲朗 アートディレクター/関戸貴美子 発行/宣伝会議 定価:22,000円(税込)

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