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コラム

迂闊鬼十則 〜 うかつなヤツがトクするキャリアの法則

失敗するなら、若いうちにしたほうがトクである

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見る前に跳べ」という言葉がある。

元東芝・元東大教授の竹内健さんの『世界で勝負する仕事術』にはこうある。

もう少し考えてから、様子を見てからなどと言っていたらチャンスはどんどん逃げていきます。跳ぶことが怖くなってきます。だから、見る前に跳ぶのです。もちろん、見る前に跳んだら、落ちてケガすることもあるでしょう。(中略)しかし、跳ばないで待っているより、跳んで失敗した方が断然学ぶものが多いのです。最後に勝ち残るのは、リスクを怖がらずに跳んで、たくさん失敗した人です。

今回の連載でいちばん伝えたいことの本筋でもある。

一方、ちょっと暴論かなとも思われるのではないか?

現代は、全員が炎上リスクやハラスメントリスクに囲まれている。ドラマ『不適切にもほどがある!』にもあるように、ふとした社内やSNSでの発言でいとも簡単に会社人生が終わったりする。

リスクを避けて動きたい。タイパよく動きたい。ムダなことはしたくない。

そういう考え方の人には
「おいそれとリスクを取る発言や行動はできないっす」
と響かないメッセージなのではないか。

「やらない理由」はいくらでも作れる環境にある。新規事業、転職、新しいプロジェクトへの参画、留学、リスキリング——。やらない理由の一番はやらなくても、別に死なないからだ。

この国でどんなに仕事をしなくても、なかなか飢えることはない。しかし、サラリーマンは稼ぐ力という牙を静かに抜かれている。会社を離れたら個人で売上を立てられるのか?そして、自分がなぜ結果を出せないかわからないまま、井の中の蛙で一生を終わる。

学校や親は「いろいろ首を突っ込んで、自分から失敗しに行きましょう!」などとは絶対に教えない。むしろ、中学受験、大学受験、就職活動においては「後々失敗する回数を減らすために、いま頑張っておきましょうね」とインプットされているのではないだろうか。

しかし、彼らに備わらないのが迂闊力、「見る前に跳ぶ」力だ。

 

たとえば、ほとんどの場合人からものを頼まれたら、まずは成功や失敗を打算しすぎず、二つ返事で「やります」と言ったほうがトクをする。やらない理由を探す人は損をする。

なにか依頼をされているということは、あなたご指名で何かの期待をされているという、非常に稀有な状況だととらえよう。相手も、あなたに話しかけるために、それなりの覚悟やカロリーを使っているのだ。それに敬意を表し、まずは、とにかくポジティブに依頼を聞くべきだ。絶対にゼロ回答はするな。

で、その後「あ、でも、基本やるのですが、その上でいくつか問題があるかもしれないので確認しますね。もしダメだったらごめんなさい」と言えば、あくまで自分は前向きなんです、そのあと断らなければならなくなったら、自分の意図とは違うんですということが明確になる。

2003年ごろだったか、当時一度も会ったことのない、一度も面識のない方から社内メールで

「はじめまして。突然ですがインターンシップがあるのでブログを作ってくれませんか」

と頼まれた。おそらく、当時の電通で、社員むけにCMSを無料で立ち上げてくれる人なんていなかったから、人づてにぼくの名前を聞いたのではないか。

ぶっきらぼうな方だなとは思いながら、ぼくのスキルがお役に立てることが嬉しかったので、「こんなことは自分の仕事ではない」などという気持ちを抑え、すぐに自費でレンタルサーバーを借りて、WordPressをインストールして(月額500円程度だった)、新規ブログを立ち上げた。

どうせなら、サプライズ感があったほうがいい。
まさか、相手も、いきなり細かい相談もなく立ち上げてくれるとは思うまい。
ドメインも仮で取ってしまおう。

メールには、こう返事した。

「はじめまして!中村と申します。ご連絡ありがとうございます。
 さっそくつくってみました!こちらです。
 https://xxxxxxblog.com
 何かご要望があれば、なんでもどうぞ」

この「ブログを作りたい」とメールした人が、ソフトバンク家族割「犬のお父さん編」でおなじみの澤本嘉光さんである。当時から飛ぶ鳥を落とす勢いだった澤本さんのことを知らなかったのも不謹慎きわまりないが、これがきっかけで、その後何度もプロジェクトにも声をかけていただき、果ては東京FMのラジオパーソナリティに「毎週ゲスト」という口実で誘ってくださった。番組はもう10年も続いている。

ADHDは、リスクへの警戒心が低い。リスクをリスクと思わない。その分いろいろな失敗を繰り返す。いくつかの大きな成功と多数の失敗。こと人生の前半、特に30代までにおいては、新しいチャレンジに本当のリスクなんてほとんどないということだ。

 

人は「得られることより失うことのほうがずっと嫌い」と感じる傾向があるという。
行動経済学では「損失回避バイアス」と呼ばれる。

こんな実験がある。

「サイコロを振って偶数だったら1万円もらえるが、奇数だったら1万円払う」というルールだ。圧倒的な数の人がサイコロを振らない。もらえる金額を1万5000円、2万円と引き上げていっても、まだ振らない人が結構いる。2万5000円でようやく半数の人間がサイコロを振った。

つまり利得x2.5=損失くらいで感覚が釣り合うことがわかった。

逆に考えると、損失のリスクは2.5倍引きで考えるべきだ。

新しい選択・行動によって「自分のスキル・名声・ネットワーク・収入が上がる可能性」と、「使う時間・失敗したときのリスクの可能性」を、期待値で見て判断しよう。

 

そもそも、きみの失敗なんて、誰も覚えていない
人は、失敗を忘れる生き物である。他人の失敗であればなおさらどうでもいい。

若ければ、2.5回失敗して1回成功するくらいの期待値でいいのだ。

 

そして、この期待値は、40代50代と大人になってくるにつれ逆転する。責任や、守るべき物が多くなると、自然と失敗のリスクの方が重くなってくるのだ。だから、若いうちに失敗を含めたチャレンジ経験を多くしたほうがよい。

 

某大御所アートディレクターが、もうかなりのお年になって「弊社」と「御社」を間違えて使っていた。

クライアントとのミーティングで、

「いやいや、御社なんて本当にひどいもんで…。タハハ。
それに比べて弊社はすごい!」

と発言して、会議を凍り付かせていたらしい。

 

失敗は若いうちにしたほうが致命傷になりづらい。

 

 
迂闊鬼十則の43

リスクは期待値で考えて行動しろ。
損失回避バイアスに惑わされるな。

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