全社員で運営し記事数4万本超、クラスメソッドのオウンドメディア

自前の情報発信拠点として多くの企業・団体が注目するオウンドメディア。戦略の立て方や効果測定の方法、制作のコツを探ります。今回はクラスメソッドのオウンドメディア「DevelopersIO」の制作の裏側に迫りました。

※本記事は、広報会議2024年6月号の転載記事です。

DATA

URL:

https://dev.classmethod.jp/

開設:

2011年7月1日

コンセプト:

技術を「楽しむ」「やってみる」「情報発信」する。Blog it! たった1人、誰かの役に立つことができたなら、それは良いブログ

所管部門:

専任部署はナシ

制作体制:

グループを含めた全社員+少数のゲスト執筆者が投稿。インフラ管理やリスク管理などを含めた運営・運用もすべて有志で行っている

更新頻度:

約7700本/年(2023年)

総記事数:

約4万8000本(2024年3月時点)

CMS:

WordPress

効果測定:

新規案件獲得、実際の案件で参考情報としての提示など実際のビジネスでの活用

クラウドの技術コンサルティングやアプリの企画開発、SaaS・ウェブサービスの企画開発・運用を手がけるクラスメソッド。

2011年7月に代表取締役の横田聡氏が呼び掛け、社員が技術情報などを発信するDevelopersIOを立ち上げた。エンジニア業界では元々、個人ブログ等で技術をシェアし、業界全体で切磋琢磨する文化がある。

同社でも情報発信を推進することで、学びのアウトプットによる社員自身の成長と、エンジニアコミュニティへの貢献を目指している。

メディアのすべてを有志で運用

同メディアの運営体制は、インフラ管理から運用、タグやカテゴリ、特集の作成、記事の執筆~校正・フィードバック等、経費管理以外のすべての業務を有志で行っている。記事の執筆にいたっては、投稿数にばらつきはあるものの全社員が担い、メディアへの関わり方は社員一人ひとりの裁量に任されている。

定期的に、優良な記事を表彰したり、積極的に投稿をする人を評価したりはしているが、質の低い記事の乱造を防ぐため、ノルマを課すことや記事を投稿しないことによるマイナス評価はしていない。

それでも社員がメディアに対してモチベーションを高く持てるのには、代表の横田氏や創業時からのコアメンバーの存在が大きいという。「メディアの創成期から現在まで、代表やコアメンバーが率先して記事を投稿し続けていることが社員に非常に大きな影響を与えていると思います」と広報室の土肥淳子氏。

「今では、記事を週に1本書くなどと個人目標を掲げている人もいれば、普段携わらない分野だからこそインフラのメンテナンスに挑戦し、メディアを介して他部署のエンジニアと交流をして技術を磨くなど、それぞれに目標や目的をもって関わっています」。

ガイドライン整備で、リスク管理

とはいえ、投稿内容のリスク管理を行うための仕組みは整えている。「まずは入社時にジョインブログを書いてもらい、2~3記事は上司が確認のうえ公開、さらにガイドラインに確認・サインしてもらったうえで、自由に投稿できる権限が与えられる流れです」(土肥氏)。また、投稿した記事は社員同士で読みあってフィードバックを行うのが常となっており、それもリスク管理の一翼を担う。

投稿数やシェア数は社員や記事ごとに一目で分かるようになっている。メディア全体ではアクセス数やシェア数をKPIに設定していないが、社員にとってはモチベーションのひとつだ。さらに、魅力的な記事を書くための勉強会も開催。約12年の間にたまった、記事を読んでもらうためのネタの出し方や記事の書き方、タイトルのつけ方などのノウハウを社内で共有するなど、社員一人ひとりの記事を書く意欲は非常に高いという。

エンジニアに指名で仕事依頼も

同メディアは営業ツールとしても重要な役割を担っている。メディアを通して、技術力の確かさや常に研鑽を続けている姿勢が視覚化されることから顧客の信頼を得ることはもちろん、記事をきっかけに依頼がくることも珍しくない。仕事を進めるうえで、顧客に技術的な説明をする際にも役立っているという。

「エンジニアへの指名で仕事が決まることもあります。4万本以上の記事がたまっていることもありますが、特にAWSの技術情報を調べると、当社のメディアの記事が上位に表示されることが多いのです」(土肥氏)。クライアントはもちろん、同業他社やエンジニアにもよく読まれており、「参考にしています」と声をかけられることもあるという。「採用の際にも役立っています。特にエンジニアの方で当社のメディアを読んだことがないという人は少ないと思いますし、当社とマッチングするかどうかの判断材料にもしてもらっています」(土肥氏)。

2011年から全社員でメディアをつくる体制と文化を築きあげ、今では会社の資産となった。記事執筆の文化が根付き、意欲的な社員が増えたからこそ、プレッシャーを感じている社員へのフォローが今後の課題だ。

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広報会議2024年6月号では、「オウンドメディア 企業の“リアル”を届ける 距離感が縮まる広報戦略」と題した特集も展開しています。オウンドメディアの潮流や現在地、丸井グループやカルビーをはじめとした企業事例なども紹介しています。

ぜひ、本誌を参考に、自社のオウンドメディア制作に役立ててください。

広報会議2024年6月号

写真 書影 広報会議2024年6月号
  • 特集
  • オウンドメディア
  • 企業の“リアル”を届ける
  • 距離感が縮まる広報戦略
  • GUIDE
  • 顧客と持続的に関係を構築できる
  • オウンドメディアが再注目される理由
  • 鷹木 創 テクノコア代表取締役
  • 座談会
  • 元オウンドメディア編集長対談
  • 企業が陥りやすいポイントへの対処法を解説
  • 大槻幸夫 × 藤原尚也
  • CASE1
  • 丸井グループ将来世代に向けた発信で
  • 共感醸成し「協業・共創」目指す
  • CASE 2
  • カルビーへの愛着を醸成
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  • 企業ブランディング起点でリスナー来店の動線に
  • CASE 3
  • 投資家、求職者、足場への無関心層など
  • 各ステークホルダーに記事を届けるASNOVAの工夫とは
  • CASE 4
  • 「リハビリ体験記」ほか生活密着の切り口で
  • 理学療法士の普及とプレゼンス向上
  • CASE 5
  • 「世の中が知りたいこと」起点の企画で
  • 立命館大学と社会つなぐ架け橋に
  • 明確なロードマップを描き成功へ導く
  • 成果を出すまでの5ステップ
  • 中川順司 Faber Company
  • DATA
  • 担当者117人に聞いた
  • オウンドメディア運用の現状

ほか

 




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