均質化する時代を乗り越える ブランド固有の「異常値」をつくる

あらゆる接点でデジタル化が進むなか、アウトプットが中央値に偏ることでブランドの個性が失われるリスクが高まっている。博報堂の中島優人氏と平井美紗氏は、この課題へのアプローチとして「対話」に着目。独自のメソッドを用いて、生活者の心に残る一貫したブランド体験をデザインする重要性を解説した。

AIに固有の人格や思想を宿らせ動的なブランドの定義を行う

企業のマーケティングにおいて、あらゆる接点がデジタルで常時つながり、そこにAIが導入される動きが進んでいる。博報堂の中島優人氏と平井美紗氏は、このAIを「生活者とブランドをつなぐ新たな接点(インターフェース)」と定義する。

しかし、システムの構造に依存しすぎると、あらゆる意思決定や制作物が平均的な「中央値」へ収斂し、ブランド固有の個性が埋没する同質化のリスクが生じると語る。

この没個性化の危機を乗り越えるアプローチとして、中島氏は、生活者とブランドを結ぶコミュニケーションのあり方が変遷してきた歴史を示した。産業革命以降のモノが溢れた時代はロゴなどの「信頼の記号」で識別させ、マスメディア時代は大衆へ「意味・メッセージの伝達」を行うことで記憶に定着させてきた。さらにSNS時代には、情報の透明性から言葉だけでなく「行動による証明」が求められるようになった。こうした変遷の延長線上にある現代は、AIなどを介した「無数の対話」そのものでブランドらしさを伝える時代へ突入したと語る。

この対話時代におけるコミュニケーションの実例として挙げられたのが、2024年7月に一般リリースしたミツカンのコミュニティサイト「ミツカン365」だ。

平井氏は365日変化するキャラクターの仕掛けや、デザインの力で心地よい行動を促す“安心感のあるUI/UX”のアートディレクションを徹底。これにより、デジタルでもリアルでも一貫した世界観を保ち、ファンコミュニティの活性化に寄与したという。平井氏は「デジタルとリアルの質を揃える世界観設計は、まだシステムが代替することはできない」とも語る。

こうした人間による設計を前提としつつ、爆発的に増える接点へブランドの個性を実装するための方法論が、同社が開発したソリューション「Branded AI Agent」である。これは静的なガイドラインではなく、エージェント自身に固有の人格や思想を宿らせ、動的なブランドの定義を行うもの。同グループのAI専門家集団の知見や独自のプロンプトエンジニアリングを投入し、クリエイティブな対話を通じて生活者の気づきや行動を引き出すことを目指しているという。

これまでに、同社が人材育成の方針としても掲げる「粒ぞろいより粒ちがい」というカルチャーを反映し多様な個性と想いを持たせたAIエージェント群「tsubuchigAI(つぶちがい)」や、企業キャラクターの口調で健康トークを展開する保険業界の取り組みなど、多岐にわたる実装が始まっている。

最後に中島氏は、広告クリエイティブの知見とエンジニアリングを融合させることで、形のない創業者の想いや歴史が新しい資産に変貌すると言及。購買データに留まらない「対話データ」を蓄積してブランドを育てる未来を展望した。

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中島優人氏

博報堂
CXクリエイティブ局二部
エクスペリエンスディレクター

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平井美紗氏

博報堂
CXクリエイティブ局三部
アートディレクター

お問い合わせ

株式会社博報堂

URL:https://www.hakuhodo.co.jp/

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