「AXIS Font」を“超マニアック”にカスタマイズ
企業のロゴやWebサイト、商品パッケージにいたるまで、一貫したメッセージを届けるための基盤となるコーポレートフォント。しかし、文字数の非常に多い日本語フォントをゼロから開発するには3年から5年以上の膨大な期間を要する。この課題に対し、文字の太さや字幅、コントラストをシームレスに調整できる独自の「フィットフォント技術」を持つタイププロジェクトの鈴木功氏は、既存書体を柔軟に最適化することで短期間かつ高品質に企業ニーズに応えるソリューションを提示。サントリーホールディングスデザインセンターの西川圭氏とともに、2018年から運用を開始した商品パッケージの表示組み専用フォント「AXIS SUNTORY TP」の実践事例を詳しく紐解いた。
サントリーのインハウスデザイン組織は、年間数千SKUに及ぶ膨大な商品デザインをクリエイター37人の体制で網羅している。年々商品化の件数が増加し業務が逼迫するなかで、ミスなく的確に運用できる使い勝手の良い書体が現場で強く求められていた。さらに、近年の原材料やアレルギー物質への関心の高まりに応えるための「可読性の確保」と、環境配慮によるラベルの小面積化という相反する課題をクリアする必要があった。
そこで西川氏は、ベース書体にクリーンでニュートラルな空気感と芯の強さを併せ持つ「AXIS Font」を選定。そこから現場の実務課題に直結する“超マニアック”とも言えるカスタマイズをタイププロジェクトに依頼した。
例えば、食品表示に不可欠な「グラム(g)」表記において、行間を極限まで狭めても下の行にぶつからないよう、下部が飛び出ない美しい専用の「メガネグラム」を新設。さらに、数字の間に挟まれるハイフン(-)が微妙に下がって見えるデザイナー特有の違和感を解消するため、数字と数字が前後に来た場合に自動で位置が少し上がり、長さも微調整されるという、オペレーションの手間を省く設定を組み込んだ。また、前後の情報を区切る丸記号などは、長体でも常に美しい正円に保たれるよう設計されている。
作業スピードは3割アップ CSへの問い合わせも減少
開発期間はわずか5カ月。導入後は現場のデザイン作業スピードを体感ベースで20~30%も向上させ、表示組みのストレスを大きく軽減したという。さらに、適切な社内運用のルール化と合わせて組織へ定着させたことで表記品質が安定し、コールセンターへの「表示が読みにくい」といった問い合わせが確実に減少するという、確かな商品力の向上をもたらした。
鈴木氏は「フォントはブランディングを支える非常に重要な要素であると同時に、日々の実務を支える基盤でもある。今後もその両立を支援していきたい」と展望を語った。

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