『宇宙兄弟』最終巻の特装版に「宇宙空間で描いた漫画」のフルカラー版収録、物語の完結記念で「ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ」

写真 漫画 宇宙兄弟

講談社は7月22日、小山宙哉氏による漫画作品『宇宙兄弟』の最終巻を発売。その「特装版」には、本編で描かれなかった、425話と426話の間の「425.5話」のフルカラー版を収録している。

「425.5話」は、小山氏の漫画を描く手の動きをデータ化して、国際宇宙ステーション(ISS)/「きぼう」日本実験棟船内に設置されたロボットアームを地上から操作し、宇宙空間の微小重力環境下で描画した作品だ。

『宇宙兄弟』は、2007年より講談社『モーニング』にて連載を開始。宇宙飛行士を目指す兄弟・南波六太と南波日々人の物語で、アニメ化・実写映画化もされ、約18年連載した。

最終話を掲載した『モーニング』の発売日である6月11日に、講談社は、「Mission: SPACE COMIC(ミッション スペースコミック)」について発表。「宇宙兄弟を宇宙で描く」同ミッションは、ISSの「きぼう」日本実験棟を有償で利用する制度を活用して実現したもの。特設サイトも開設し、「宇宙の物語は宇宙で完結させたい」「『きぼう』船内のロボットアームを使用して、漫画を描いた人類史上初の試み」といったメッセージを発信。最終巻発売後の7月27日には、サイトを更新し、失敗と検証を重ねた26カ月の記録として特別動画を公開する予定だ。

写真 漫画 宇宙兄弟 ミッションロゴ

ミッションロゴ。
©小山宙哉/講談社

「宇宙で漫画を描く」アイデアはどのように生まれたのか。企画制作に携わったTBWA\HAKUHODOの宇佐美雅俊氏は「『宇宙兄弟』は、多くの人の背中を押し、“挑戦する勇気”を届けてきた作品。完結記念の施策も“新たな挑戦”にすべく、作品が描いてきた近未来の世界を、現実の宇宙へとつなげる企画が生まれました」と話す。作品の一部として、そして読者にとっても意味のある挑戦にするため、物語の余白を埋める特別なストーリーを宇宙で生み出すアイデアに至ったという。

だが、その挑戦は簡単ではなかった。宇宙開発、ロボティクス、ソフトウェア、漫画制作など、それぞれ異なる専門領域の技術や知見をひとつにつなぎ合わせる必要があったという。TBWA\HAKUHODOの伊藤裕平氏は「クリエイティブとして面白いだけでは成立しませんし、技術的に実現できるだけでも、プロモーションとして成立するとは言えません。その両方を高いレベルで実現することが最も難しい部分でした」と話す。

ISS内の微小重力環境で、小山氏の筆跡を再現するための精密な調整、地上とISS間のタイムラグ、厳しい時間制限がある中での宇宙飛行士との連携……。技術・運用面でも数々の課題に直面する中で、不思議とプロジェクト全体を支えたのは、『宇宙兄弟』という作品そのものだったという。「チームの合言葉は作中の六太の言葉『ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ』。この言葉が私たちを一歩前へ進めてくれました」と博報堂の奥野凜氏は振り返る。

ミッションが始動したのは、2024年5月のこと。「ロボットに、漫画家の手つきを身につけさせる」ことを実現するため、宇宙産業・ロボット産業からエキスパートが結集。2025年10月にJAXAのロボットアームをのせた「H3ロケット7号機」が打ち上げられ、ミッション本番では、このロボットアームを使って6日間にわたり描画に取り組んだ。ペンが紙に接地しないトラブルなどの問題が発生するもミッションを遂行したという。

「本施策で最も伝えたいのは『宇宙の夢に、終わりはない』ということ」と博報堂の德岡淳司氏は言う。「作中には、地上から遠隔操作で宇宙空間での医療を行うような未来が描かれています。ロボットアームを遠隔操作する本施策は、作中の未来を現実へと一歩近づける試みでした。『宇宙兄弟』は、少し先の未来を描き続けてきた作品。その未来の多くは、少しずつ現実になり始めています」。

新しい技術や挑戦によって、これからも夢を少しずつ現実に変えてほしい――。そうした思いを込め、本ミッションで制作したロボットアームの制御ソフトウェアには「ヴェロッキオ」という名前を付けたという。「作中に登場する遠隔操作ロボット『ダヴィンチ』から着想を得ています。作中で『ダヴィンチ』が活躍するのは2029年ですが、今回のミッションで得られる技術や知見が、その未来へとつながっていってほしいという願いを込めて、『ダヴィンチ』の師である『ヴェロッキオ』の名を付けました」と博報堂の嶋元司氏は話す。

ミッションについては、2026年6月の発表直後からXを中心に反響が広がった。幅広い分野のメディアが取り組みについて報道。『宇宙兄弟』のファンからは、「宇宙を描く漫画だと思っていたら、本当に宇宙で描く漫画になった」「宇宙兄弟だからこそできる企画」といったコメントが寄せられている。

スタッフリスト

企画制作 博報堂、TBWA\HAKUHODO、東京アドデザイナース、Sketch、Y’s、博報堂プロダクツ、コントラスト、スペースエントリー、メノー、インテリジェント・ロボット・テクノロジー
CD 宇佐美雅俊
SAD 伊藤裕平
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PL 嶋元司
C+CM PL 德岡淳司
AD 奥野凜
AD+D 海津典義
TD 黒川瑛紀
Pr 柳貴男、岩戸太郎、松浦嵩、熊谷亮一
Dir 橋詰衛
撮影 長野柊太郎
編集 見田伸夫
レタッチ 小柴託夢
システムインテグレーター 松本翔平、後藤孝之
マネージャー 根本雅人、青山正倫
エンジニア 吉海智晃
音楽 SSHY・ザ・SSHY
PR 橋本恭輔
AE 池田直広、近藤陽子、松井文、伊藤達哉
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