生活者が生成AIに商品の比較や推薦を求め、企業の広告より同世代の声を信頼する時代。ブランドは、人に向けて発信するだけでは選ばれにくくなっている。大広は7月6日、「ブランド成長の新手法」をテーマにしたセミナーを大阪市内で開き、AIにブランド価値を適切に理解・代弁させる「ブランドAIO」と、顧客を企画の内側に迎える共創型メソッド「PBGM」を紹介した。
1つ目のセッションでは、大広WEDOアカウントプランニング局 局長の鷲北雄介氏とAIコンサルタントの原田信宏氏、2つ目のセッションでは大広Growth Xユニット局長の濱口隆義氏、池田龍人氏、橋本このみ氏が登壇。AIとZ世代という異なるテーマを通じ、企業が情報や企画を一方的に届けるのではなく、ブランドが選ばれる環境そのものを設計する必要性を示した。
AIにどう説明されるかでブランドは選ばれる
鷲北氏は、生活者とブランドの間にAIが介在し始めたことで、ブランドコミュニケーションの前提が変わると説明した。変化は大きく3つある。検索行動、ブランド評価、購買前後のアクションの変化だ。
現在は、ChatGPTやGeminiなどの生成AIに直接質問し、その場で答えを得る行動が広がっている。Google検索でもAIによる要約で情報収集が完結し、個別サイトに流入しない「ゼロクリック」が起きる。
大広WEDO アカウントプランニング局 局長の鷲北雄介氏(左)、同AIコンサルタントの原田信宏氏(右)
問題は、AIが人間と同じようにブランドを認識しているとは限らないことだ。講演では「暑い日に一番おいしいキレのあるビールは」とChatGPTに尋ねた例を示した。人間なら想起しやすいブランドが筆頭に挙がらないことがあり、「人間が当然認知していることを、AIはできていないことがある」と説明した。鷲北氏は、ブランドの評価がAIの認知状況に委ねられる時代が来ていると指摘した。
さらに、AIは悩みの認識から商品比較、購入後の使い方まで購買プロセスの各段階に入り込む。ただし、お菓子と電化製品では、AIへの問いの内容やタイミングが異なってくる。商品カテゴリごとにAIの使われ方を捉える必要がある。
「ブランドAIO」は、ブランド価値とコミュニケーションの2つで構成される。
同社が提唱する「ブランドAIO(Brand AI Optimization)」は、単なるSEOの延長線上ではない。「AIに正しくブランドを代弁させ、生活者に伝えること」を目的とし、AIがブランド価値を正しく伝えられる状態をつくる「ブランド価値のAIO」と、AI時代のカスタマージャーニーに合わせて接点設計を見直す「ブランドコミュニケーションのAIO」の2つで構成する。
AIは「事実」に強く「らしさ」に弱い
原田氏は、AIは数値や事実の整理には強い一方、ブランド固有の世界観やトーン、「らしさ」の理解は苦手だと説明した。人間には感覚的に伝わる価値でも、AIには根拠や文脈、情報同士のつながりとして整理しなければ伝わらないことがある。
ブランド価値のAIOは3段階で進める。まず表層分析で、生活者がカテゴリやブランドについて尋ねた際、AIの回答にブランドが登場するか、どのように語られているかを確認する。カテゴリ探索、ブランド検証、ブランド深掘りなど、購買フェーズごとに問いを設計することで、AIがブランドをどの程度認知しているかを測る。
AIへの言及を、表層分析、深層分析、施策実施の3段階で改善する。
次に深層分析では、企業が語ってほしいブランド価値とAIの理解の差を可視化する。このとき活用するのが、情報同士の関係性を地図化する「オントロジー」という手法だ。ブランド名、製品属性、提供価値、利用シーン、利用目的、感情などのつながりを整理し、AIがどの概念をブランドと結びつけていないかを把握する。
講演では、スキンケアブランドの「バリア機能の回復」という特徴がブランドサイトに記載されていても、AIにはブランドの特徴として十分認識されていない例が示された。情報が存在しているだけでは足りず、その情報がブランドの価値として結びついていることが重要になる。
最後に、自社サイトのテキストや構造化データ、内部リンクを整え、不足する情報を補う。さらに、AIが参照する第三者メディアや専門情報への発信も設計する。重要なのは情報量を増やすことではなく、AIがブランドの属性と価値を正しく結びつけられるように情報を配置することだ。
カテゴリごとに変わるAI活用
大広および大広WEDOは2026年5月、全国20〜69歳の生活者5000人を対象に「購買プロセスへのAI活用実態調査」を実施した。有効回答4034人を分析し、20商品カテゴリにおけるAI活用を5つの類型に整理した。
食品・日用品ではAIを軽い確認相手として使う一方、デジタル機器や投資などでは比較・精査に活用する。医薬品や保険では不安や失敗を避けるために使われ、スキンケアや旅行では条件を相談しながら選択肢を探す。家電や健康食品などでは購入後も使い方や継続メリットを尋ねる。
つまり、AIOはすべての商品カテゴリで同じ施策を行えばよいわけではない。AIがどの場面で、どのような相談相手になるのかを捉え、生活者が実際に投げかける問いに応じて情報を設計する必要がある。
広告、第三者メディア、SNS、自社メディアから成る「PESO」も、生活者向けだけでなく、AIにブランドを理解させる情報源として捉え直す必要があるという。広告は生活者に直接届く接点であり、第三者メディアや自社サイトはAIがブランドを理解する材料になり得る。人とAIという2つのオーディエンスを同時に意識したコミュニケーション設計が求められる。
Z世代は「消費者」ではなく「仲間」にする
次のセッションでは、Z世代との関係づくりをテーマに、大広の顧客共創型メソッド「PBGM(Project Based Growth Marketing Communication)」について解説した。
大広若者研究所「D’Zlab.」の調査では、企業の広告やキャンペーンに「大人が考えたZ世代向け」と感じ、興味を失ったり距離を感じたりした経験がある18〜24歳は約6割。企業の公式広告よりUGCの方が信頼できるという回答も53%に上った。
大広Growth Xユニットの濱口隆義氏
そこで大広は、顧客をターゲットではなくパートナーとして捉えるPBGMを提唱する。特徴は、単発の施策ではなく継続的な活動としてプロジェクトを設計すること。企業が介入しすぎない「非関与」、顧客自身が発想し実行する「顧客自走」、まだ顧客ではない段階から仲間として関わってもらう「0次ファンづくり」を重視する。
従来は、商品を購入した顧客の中からロイヤル顧客やファンを育てる流れが一般的だった。PBGMでは、まだ強いブランド愛着を持っていない人をプロジェクトの内側に迎え、知る、考える、つくる、届けるという過程そのものをブランド体験にする。参加者を早い段階から味方に変えていく考え方だ。
実践した2つの事例
春日井製菓との「つぶグミ大学」は、その代表例である。春日井製菓からの相談は「若い人のつぶグミファンをもっと増やしたい」というものだった。グミ市場で競争が激しくなる中、一度食べてもらうだけでなく、次も選ばれ、誰かに薦めたくなる関係性をどう育てるかが課題だった。
大広 Growth Xユニットの橋本このみ氏(左)は春日井製菓の事例を、池田龍人氏(右)は河内長野市の事例を紹介した。
関東3大学の約30人の学生が半年間、春日井製菓とともにつぶグミの魅力や伝え方を考えた。学生たちは2週間に1回の講義やグループワークを重ね、6チームが企画をプレゼン。採用企画は「つぶグミ文化祭」として実現し、総予約件数は1万3000件以上、来場者は1000人以上となった。
参加学生からは「プロジェクトを通して、自分自身つぶグミファンになりました」といった声も寄せられたという。既存ファンに施策へ参加してもらうのではなく、ブランドと向き合う過程の中で参加者自身がファンや発信者に変わる点が特徴だ。
もう一つの事例が、河内長野市との「若者ミライプロジェクト」だ。若年層流出などの課題に対し、35歳以下を中心とした市民47人を企画開発と情報発信のチームに分け、若者を施策の参加者ではなく、街を動かす推進者として位置づけた。
市民、市役所、大広がワークショップを重ね、市民主導で駅前の空き地を活用した蚤の市を開催。来場者は想定の4倍となる3200人以上に達した。情報発信チームも、市民自身が街の魅力を自分の言葉で発信し、プロジェクト全体で1万人以上のフォロワーを獲得した。
河内長野市のプロジェクトでは、蚤の市に3200人以上が来場。市民主体の発信が大きな話題化につながった。
濱口氏は、共創型プロジェクトの肝は中長期視点、非関与型、顧客自走型、0次ファンをつくる、以上の4点にあると説明した。広告会社や行政が前に出すぎず、生活者が考えて動ける余白を残す。ただし放任するのではなく、実装に必要な段取り、安全管理、広報、運営は裏側で支える仕組みだ。
Z世代は「消費者」ではなく「仲間」にする。AI時代の情報設計とZ世代との共創に共通するのは、企業が一方的にメッセージを届けるのではなく、ブランドが正しく理解され、人に選ばれ、自ら語りたくなる環境をつくることだ。
お問い合わせ
株式会社 大広
ビジネス戦略本部
広報局 広報部
EMAIL:info@daiko.co.jp
TEL:03-4346-8111
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