AI検索の普及がもたらす変化とLLMOの重要性
AIの普及は、ユーザーの情報収集行動に大きな変化をもたらしている。小熊氏はあるクライアントの事例として、2024年8月に「Google AI Overviews」が提供開始されて以降、自然検索経由のアクセス数が約30%減少したデータを提示。検索結果上で情報取得が完結するケースが増え、Webサイトへの流入機会が失われつつある現状を指摘した。
この変化は、単なる情報収集に留まらない。マッキンゼーが2025年に実施した調査によれば、消費者の意思決定プロセスの「認知」「興味・検討」「意思決定」の各段階において、過半数がAIからの回答に影響を受けたと回答している。小熊氏は、AIがユーザーの意思決定プロセスに深く入り込んでいると分析し、こうした新しい情報チャネルに対応する必要性を説いた。
そのための取り組みが「LLMO(大規模言語モデル最適化)」である。これは、生成AIの回答内で自社サイトの情報が引用・言及されることを促し、AI経由での認知や流入を増やすための施策だ。小熊氏は、AIという新しいチャネルに対して能動的に働きかけることの重要性を強調した。
LLMOの土台となる「技術施策」とは
LLMOの施策は、AIやユーザーが理解しやすい情報を作成する「コンテンツ施策」、AIがサイト情報を正しく発見・理解できるようにする「技術施策」、サイト外での言及や評価を増やして信頼性を高める「外部施策」の三つに大別される。この中で小熊氏は、特に「技術施策」がすべての土台となると位置づけた。
その根拠として、AI Overviewsの引用傾向を挙げた。引用元は検索上位ページと連動する傾向があるが、検索上位に表示される以前の条件として、サイトがクロール・インデックスされやすい状態、つまりサイト情報がAIに読み取りやすい状態であることが不可欠だと説明する。「検索順位が1位にもかかわらず、ページ表示速度が不十分なためにAI Overviewsに表示されない」というクライアントからの問い合わせ事例を紹介し、LLMOにおいてはSEO以上に技術的な要件がシビアに評価される可能性があると述べた。
小熊氏はLLMOにおける3施策の関係性を、技術施策を土台とする階層構造で整理した。AIが情報を発見・取得・理解できる技術基盤を整えた上で、引用されやすいコンテンツを用意し、外部からの言及や評価を高めることで、初めてAIによる引用・推奨につながるのである。
ミツエーリンクス データアナリストの小熊氏
AIの情報取得プロセスから考える4段階の技術実装
小熊氏は、AIクローラーによる情報取得の流れを「発見」「取得」「構造理解」「意味理解」という4段階に整理し、それぞれに対応する具体的な技術施策を解説した。
第一段階の「発見」では、「XMLサイトマップ」の整備が挙げられた。AIクローラーにサイト内のURLリストを伝える基本的な施策であり、特にページの更新日時を示すlastmodタグ(ページの更新日を伝える役割を持つ)の記入が重要だという。情報の鮮度は引用可能性に関わるため、更新状況を正確に伝えることが推奨される。
第二段階の「取得」では、「ページ表示速度の改善」が鍵となる。生成AIは大量の情報を処理するため、軽量なページほど解析しやすく、優先的に扱われやすい。小熊氏は具体的な指標としてLCP(主要コンテンツの表示時間)、TTFB(サーバー応答速度)、ページサイズを挙げた。また、ユーザー操作後にしか表示されないFAQや料金表などの情報はAIクローラーが取得できない可能性があるため、主要な情報は初期HTMLで取得できる状態にしておく「JavaScript無効時の情報表示」の重要性も指摘した。
第三段階の「構造理解」では、「セマンティックHTML」の適切な使用が求められる。これは見た目を整えるためではなく、見出し、段落、リストといったページ内の情報関係を機械に伝えるための技術基盤である。小熊氏は、同社がアクセシビリティの標準対応を通じて、HTML上の意味や関係性を正しく設計していることに触れ、この対応がAIにとっても読み取りやすい形式につながると説明した。
最後の第四段階は「意味理解」であり、ここでは「構造化データ」の実装が有効となる。構造化データは、ページ内の情報に機械可読な形式で「意味」を与える仕組みだ。例えば「ミツエーリンクス」という単なる文字列に対し、「Organization(組織)」として定義することで、それが企業名であり、どのような事業を行っているかといった属性をAIに正確に伝えることができる。
自社サイトでの検証から見えた構造化データの効果と考察
ミツエーリンクスは、これらの技術施策の効果を検証するため、自社サイトへの実装を行った。具体的には、2026年5月下旬から6月末にかけて、サービス関連の約550ページに「Service」、ナレッジブログの約230ページに「Article」という構造化データを追加した。
その結果、サービスページへのAIクローラーによるアクセス数は、実装前の4月と比較して6月には約10倍にまで増加した。さらに、AIアシスタント経由で流入したユーザーから、数件のコンバージョンも発生したという。
小熊氏は、このアクセス増加の背景について慎重な見解を示した。構造化データはページ内情報に意味を補足するものであり、それ自体が直接アクセスを増やす要因とは考えにくいという。むしろ、「構造化データの実装というアクションが、大量のHTMLを更新するきっかけになった。そのため、AIクローラーが再学習・再取得のために訪問してきた」ことが、アクセス増加の主因だと分析した。
しかし、これは構造化データが無意味だということではない。小熊氏は「構造化データの実装により、ページ内情報の意味がAIに伝わりやすくなり、AIに正しく引用・推奨されやすい状態を整備できた」と述べた。その結果としてAI回答上での露出が増加し、最終的にコンバージョン獲得につながったと、その二次的な効果の重要性を強調した。また、LLMOとして一部で提唱・推奨されている「llms.txt」も実装してみたが、検証期間中には明確なクロールの増加は確認できなかったと補足した。
施策の優先順位付けと今後の展望
講演の最後に、小熊氏はLLMO施策の進め方について言及した。施策は全ページに一律で実施するのではなく、優先順位をつけることが重要だという。具体的には、サービスサイトであればサービス詳細ページや導入事例、料金ページといった「コンバージョンへの関与度が高いページ」から着手することを推奨した。AIに引用された際の事業インパクトが大きいページから進めることで、施策の効果を説明しやすくなるためだ。
小熊氏は「今日お話ししたLLMOにおける技術施策は、AIによる引用・参照を狙う上で土台となる施策」であると改めて強調し、早期に対応することの重要性を訴えた。Webサイト構築から運用、システム開発まで幅広く支援する同社の知見を基に、AI時代における自社サイトの新たな役割と、その基盤となる技術設計の指針が示された。
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