言語の壁を壊す。AI調査が変える、日本企業の海外マーケティング

海外進出(アウトバウンド)や訪日観光客(インバウンド)へのアプローチを検討する日系企業のマーケターが直面してきた最大の障壁は「言語の壁」である。ファストインサイトは、AIモデレーターが29言語で現地の生活者に直接インタビューを行い、日本語のレポートを数日で提供するサービス「Fast Insight」によってこの壁を解消し、企業の意思決定プロセスそのものを変革している。同社代表取締役の鈴木一成氏は、これまで多大なコストと時間を要した海外調査を、企画の初期段階から当たり前に組み込める「習慣」へと変えることで、日本のマーケティングが持つ本来のポテンシャルを解放できると語る。

海外調査を阻んできた「言語の壁」というコスト構造

日本企業のマーケターが海外リサーチを「やりたくてもできなかった」最大の理由は、聞きたい相手が日本語の通じない生活者であるという「言語の壁」にあった。この壁を越えるには、現地の調査会社、通訳、翻訳者といった専門家が介在し、見積取得に1〜2週間、調査実施に1カ月超、費用は数百万円に及ぶのが常態化していた。

この「言語をクリアするためのコスト」が、海外調査の高額な価格の正体であった。結果として、多額の予算を確保できる企業でさえ、実際にインタビューできるのは10人前後という少人数に留まっていた。このサンプル数では、得られた回答に偏りがあったとしても確かめる術はなく、マーケターは伝聞や現地代理店の「肌感覚」といった不確かな情報に基づいて意思決定を下すしかなかった。

「Fast Insight」は、AIモデレーターがこの構造的な課題そのものを解消する。29言語に対応し、現地の言葉で生活者に直接問いかけ、分析されたレポートは日本語で返ってくる。言語の壁が消えることで、コストと時間も同時に解消されるのである。

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「確かめてから提案する」へ、意思決定プロセスの転換

食品総合卸大手の日本アクセスは、インバウンド需要の取り込みをテーマにスーパーマーケットへの提案を行っていた。「Fast Insight」で3カ国の訪日経験者を対象に調査を実施したところ、わずか2日で60人規模の「生の声」が揃った。

この調査により多くの訪日客が「偶発的」にスーパーに立ち寄っていたことが判明。さらに、各国のレポートを読み比べると、購買品目やスーパーに期待する体験の違いも浮かび上がり、国籍ごとの違いを踏まえた売場提案の余地が見えてきた。

この変化を鈴木氏は、提案プロセスの根本的な転換だと見る。従来のセルフ型海外リサーチではわからなかった生の声を元に「確かめてから提案する」形へと入れ替わった。

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ファストインサイト代表取締役の鈴木一成氏

会議の起点が「意見」から「生活者の事実」へ

Fast Insightを利用する空港運営会社の担当者は、「企画会議ではさまざまなアイデアが挙がる。そこで『韓国の20代女性5人に聞いたら全員違うと言いました』と言えたら、説得力がかなり違う」と語った。社内会議では声の大きい人や役職者の意見が通りがちだが、「生活者がこう言っている」という事実は、誰の顔も潰すことなく議論を建設的な方向へ導く。組織の意思決定において、個人の経験則や推測ではなくファクトベースでの対話が促進される点は、調査の副次的な効果として極めて大きい。

「Fast Insight」では全回答者の発言が動画で記録されており、数字の表よりも30秒の動画のほうが納得感は速く、深い。経営層へのプレゼンテーションにおいても、現地の生活者が自分の言葉で語る映像は、どんなグラフよりも意思決定を後押しする力を持っている。

「たぶん売れる」「きっとこうだろう」という推測ベースの施策は、実行後に検証コストが跳ね返ってくる。初期段階で生活者の反応を映像付きで確認できれば、企画、営業、経営層の認識を早い段階でそろえやすくなり、社内合意形成の時間そのものが短縮される。

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「想定外のインサイト」こそ価値になる

ある衛生材料メーカーのタイ調査では、「Made in Japanは効く」という前提に対し「気にしない」という回答が一定数存在した。品質の証としてポジティブな受け止めがすべての国・セグメントで通用するわけではないという事実は、ブランド戦略そのものの見直しを迫るものであった。

自動車関連企業のインド調査では回答者の75%が「結婚」を車の購入きっかけに挙げ、購入動機の前提が覆った。「車が売れる理由は収入や実用性」という日本での常識に対し、「結婚式には車が必要で、花嫁と花婿の移動に欠かせない。車は幸せやお祝いの象徴なんです」という声に象徴されるように、購入のタイミングは個人の「欲しいとき」ではなく「家族の節目」に立ち上がることがわかった。

日本市場の常識で組み立てたコミュニケーション設計が現地では的外れになりうることを、調査開始前に知ることができる意義は計り知れない。こうした想定外のインサイトが、新たな戦略の起点となる。

企業にとって本当に価値が高いのは、期待通りの答えではなく、期待を外す答えである。想定外の反応は一見ネガティブに見えるが、実際には無駄な投資を未然に防ぎ、勝ち筋の再定義を可能にする。早く間違え、早く学べること自体が、海外市場では大きな競争優位になる。

調査を「最後の裏付け」から「最初の習慣」へ

レポートが即日〜翌日に届くスピードは、調査の役割そのものを変える。従来の「結果が出る頃には企画が進んでいる」という状況は、「調査結果を待つ」という工程の消滅によって過去のものとなった。ある大手電機メーカーの担当者は「早すぎてびっくりした」と語り、食品卸の顧客が昼過ぎに設計した台湾調査は、その日の夕方には12人分の回答が揃っていたという。

この速さは、これまで不可能だった調査の用途を可能にする。海外の大手食品企業の調査責任者は、従来1.5カ月かかっていた調査が3日になったことで、「この3日だから成立するユースケースがたくさんある」と証言している。例えば、大型販促を打つ直前に、少額で生活者の反応を確かめる「直前検証」だ。1.5カ月では制作日程に組み込めないが、3日なら可能になる。調査は「最後の裏付け」ではなく企画の「最初の習慣」となり、提案の根拠が「弊社はこう考えます」から「現地の生活者がこう言っています」へと変わるのだ。

この変化は、調査の回数と使い方も変えていく。以前は高コストゆえに一度きりの大型調査に頼らざるを得なかったが、低コストかつ短納期であれば、仮説生成、コンセプト確認、表現チェック、販促案比較といった複数の局面で小さく回せる。つまり調査が単発イベントから、企画開発に埋め込まれた反復的な習慣へと変わる。

日本のマーケティングを解き放つ「言語の壁」の消滅

鈴木氏は、日本のマーケティングにおける最大の制約は能力ではなく言語の壁にあったと強調する。国内市場においては、生活者の声を聞き、製品やサービスを磨き込む力は世界屈指であるにもかかわらず、海外ではその声が聞こえないために、伝聞と推測で戦うことを余儀なくされてきた。

この壁が消滅し、1人あたり数千円から調査が可能になれば、中堅・中小企業や地方の企業も同じ土俵に立てる。予算や人脈の制約に縛られず、知りたいことを知りたいタイミングで直接聞ける環境が整うことで、日本企業の海外展開のあり方は根本から変わりうる。国内で続けてきた「聞いて磨く」という強みを世界に展開する。その土俵をつくることが、ファストインサイトの仕事なのである。

特に今後は、海外を一括りにせず、国・都市・年代・利用文脈ごとの差異を細かく捉える力が必要になる。日本企業は「海外向け」という曖昧な発想から卒業し、より具体的な生活者像に基づく戦略へ進めるようになる。市場を遠くから眺めるのではなく、現地の一人ひとりの声を起点に組み立てる。その当たり前を実現できるかどうかが、次の成長を左右する。

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お問い合わせ

ファストインサイト株式会社

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