国際NGOのグリーンピースは、6月12日、記者会見を開き、原発と金融リスクに関する報告書「原発―21世紀の不良債権」の内容を紹介した。報告をまとめたのはグリーンピース・インターナショナルのエネルギー投資シニアアドバイザー、ギョルギー・ダロス氏。報告書では、東日本大震災以降、東京電力の株価は90%以上下落し時価総額が大幅に減少したことや、福島第一原子力発電所の事故からの回復に20兆円を要すること、それが同社の時価総額の約85倍にのぼることなどといった金融データが示されている。また、日本の3大メガバンク、野村ホールディングス、大和証券のほか、シティバンクやBNPパリバ、バンク・オブ・アメリカ/メリルリンチ、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックスといった世界の大手金融機関が東京電力の社債を引き受けているにも関わらず、原子力発電所の抱えるリスクに無関心だったことを指摘した。
たとえば、バークレイズ・キャピタルは、2011年の推奨銘柄にアジア太平洋地域の水道・光熱部門から唯一東京電力を選び、目標株価を2360円としたが、1年後の株価は182円となっている。また、モルガンスタンレーやゴールドマンサックスも東電を推奨しており、モルガンは2010年12月のグローバル・ユーティリティーズ・マトリックス(電力銘柄)で、目標株価を2300円に、ゴールドマンは2010年8月の最上位推奨銘柄とし、1年後の目標株価を2600円としていた。
また、スタンダード&プアーズなどの格付け機関も、地震や津波のリスクを無視していた。2007年の柏崎刈羽原発のトラブル後も東電は最高位のAAA(トリプルA)の次のランク、AA(ダブルA)に位置づけられていた。
これらの金融機関が東電を推奨する前から、原子力発電所に関するリスクが警告されていた。869年の貞観地震に関する研究で、東北の津波リスクが、2004年のスマトラ沖地震と津波の後の東電自身による津波研究でも福島原発事故のリスクが指摘されていた。さらに、原子力安全基盤機構は、マークⅠ型原子炉が津波で大きな事故を起こすリスクを指摘していた。
報告書をまとめたダロス氏は、「1回の事故で時価総額の数十倍もの損失を出す原子力発電所をいくつも抱えている電力会社への投資は、世界経済を破綻させかねない。金融機関や個人投資家は、リスクの大きさを冷静に判断してほしい」と述べている。同氏は、13日午後にも衆議院第二会館で、より詳しい報告を行う予定。
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