プレゼンの質は、クライアントによって行われるオリエンの巧拙によって、大きく左右されるという人がいる。私も、その意見に半分は賛成である。しかし、もう半分の責任は、戦略や広告を作り提案する側にもあると思う。
最も大切なのは、広告やPRをしていく商品やサービスが、どのような志や想いから生まれ、どのようなお客様に利用していただきたいのかを、きちんと知ることだ。できれば宣伝部や広告部の方々からだけでなく、開発した方々や、売るために日々苦心されている営業の方々を自分で直接お尋ねして、納得できるまで取材することだと思う。なぜなら、その“現場”にこそ、最も大切なコミュニケーションやプロモーションの“アイデアのヒント”が隠されているからだ。
つまり、オリエンとは、クライアントの考えや要望を“聞く場”であると同時に、いや、それ以上に、その商品のメリットや事業のあり方について、こちらが納得するまで“聞く=質問する場”なのである。自分が見たこともない映画の素晴らしさや感動を見ていない人に伝えることが難しいように、自分がその商品やサービスの良さや魅力を本心から実感できていない限り、その効果的なコミュニケーションなど作れるはずがないのだ。プレゼンのプロとは、ジャーナリスト以上に“現場”へ足を運び、徹底的に取材し、納得できる情報を素に、最もふさわしい提案を考える人だ。どれだけ有効な情報を入手できるかは、その人が事前に、そのブランドや商品サービスについてどれほど深く広く考えたか、その質と量によって決まってくるのだ。
白土 謙二「プレゼンテーションの奥義」バックナンバー
- 第6回 巻(六) プレゼンとは“シンプル”なものである。(10/18)
- 第5回 巻(五) プレゼンは“知的ゲーム”である。(9/27)
- 巻4回 巻(四) プレゼンの切れ味は“一行”にある。(9/13)
- 第3回 巻(三) プレゼンの良悪は“オリエン”で決まる。(8/23)(こちらの記事です。)
- 第2回 巻(二) プレゼンは“密室の演劇”である。(8/2)
- 第1回 巻(一) プレゼンは“決定のための儀式”である。(7/19)
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