オリエンに対して、きっちり合わせた答えをもっていくのが、プロフェッショナルと思っている人が増えている気がする。私たちの仕事がクリエイティビティを期待されているのだとすれば、オリエンに合わせた内容についてのプレゼンをするだけで受け手がワクワクするようなものになるだろうか。もちろん、オリエンそのものにビジネス上のビッグアイデアが含まれていることも、希にはあるだろう。しかし、それは滅多にないことだ。
人は、自分が想像していなかったこと、あるいは想像以上のものを体験する時、とても感動するのだと思う。そのためには、もちろん相手の想像以上のものを常に考え出すクリエイティビティが、こちらに求められることになる。「オリエンを無視していいんですか?」と質問する若手もいる。オリエンをそのまま信じては、良いプレゼンは多分できない。そのオリエンを、もう少し中長期の時間軸や、業界だけではなく広く社会や世界の情勢や意識の変容の中で、もう一度捉え直してこそ、真に世の中を動かせるアイデアが生まれてくるのではないか。
もし、自分に想像力や構想力があるのならオリエンに見事に応えたプランをA案とし、それ以上に面白いものをB案として企画、プレゼンするクセをつけてほしい。「そんな頼まれないものを作って…」と否定的な意見を言う人に限って、実は「想像以上」のものを作る才能をもっていない人が多い。なぜなら、そういう自己規制的な考え方をすること自体が、すなわち自分のクリエイティビティを磨き育てていくチャンスを自ら放棄していることになるからだ。
プレゼンの受け手を、想像や期待以上の内容で知的に興奮させ、ビジネスをより効果のある方向へと導いていく、そんな“知的ゲーム”を楽しめる人たちこそが、プロの名に値するのだ。
白土 謙二「プレゼンテーションの奥義」バックナンバー
- 第6回 巻(六) プレゼンとは“シンプル”なものである。(10/18)
- 第5回 巻(五) プレゼンは“知的ゲーム”である。(9/27)(こちらの記事です。)
- 巻4回 巻(四) プレゼンの切れ味は“一行”にある。(9/13)
- 第3回 巻(三) プレゼンの良悪は“オリエン”で決まる。(8/23)
- 第2回 巻(二) プレゼンは“密室の演劇”である。(8/2)
- 第1回 巻(一) プレゼンは“決定のための儀式”である。(7/19)
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