クリエイターたちは、全日程を振り返って、どのように感じたのか。カンヌはじめ海外広告賞の審査員経験も豊富な木村健太郎さん、古川裕也さん、レイ・イナモトさんの3名に語ってもらった。
(本コンテンツは『ブレーン』9月号からの転載です)
左から、古川裕也さん(電通)、レイ・イナモトさん(AKQA)、木村健太郎さん(博報堂ケトル)
キャンペーンから社会課題解決のプラットフォームへ
——今年のカンヌライオンズからどんな潮流を感じましたか?レイ:
一つはテクノロジー系企業の台頭ですね。象徴的だと感じたのが、泊まっていたホテルの会議室が、LinkedIn、Mashable、Facebook、Oracleなど、テック系企業の予約で埋め尽くされていたことです。10年前はそれが全部エージェンシーでした。5年位前から、ユニリーバやコカ・コーラ、マクドナルドなどのクライアントになり、今年はテック系に完全に塗り替わりました。
木村:
その流れでいうと、受賞作がキャンペーンからプラットフォームへと移行してきていると僕は感じました。同じソーシャルグッドの課題でも、これまでは人に問題に気づかせるまでだったのが、ソリューションを作り上げ、実際に使える何かや仕組みにまで落とし込んだものが受賞しました。クライアントのブリーフ発ではなく、作り手のアイデアがまずあり、作ってから広めていくというような。プロダクトやテクノロジー起点のものが多いと感じました。
古川:
ブランドという観点からは、VOLVOの「Life Paint」が挙げられますね。すべての存在には、いい面と悪い面があります。「原罪」のように宿命的に。例えば車や飛行機であれば、便利と引き換えに事故が生まれるとか、ネットなら過度のいじめが出現するとか。VOLVOは以前から「世界中から交通事故をゼロにするのが我々のミッションだ」と言っているんですが、「Life Paint」はそれを日常レベルで具現化している。
