デスクトップからモバイルへ。
消費者のメディア体験をつかさどるプラットフォームは大きく変貌している。そこで顕在化している問題のひとつが、広告に対する消費者からの手厳しい抵抗行為だ。
象徴的なのは、表示に時間のかかるディスプレイ広告を回避する「広告ブロック」の浸透だろう。むろん、広告ブロック機能が広まる以前から、消費者は“邪魔”な広告に対して、心の目を閉ざすすべを身につけていることは、後述するように明瞭だ。
Facebook、Google、Appleら大手プラットフォームが、アプローチこそ異なれ、記事の高速表示にいっせいに乗り出したのも、消費者による抵抗行為への対策という意味があることは言うまでもない。
筆者は、このような広告回避の流れと向き合うためには、良質なメディア体験の構築、すなわち、「ユーザー体験ファースト」(ユーザー体験を最優先する)思想から始めるべきだと考える。それは優れたメディアやプロダクトを創造する際に求められる設計思想と同等の重みを、広告にも振り向けなければならないことを意味する。
つまり、メディアを継続可能なビジネスとするためにも、良質な体験を生む新たな広告の開発が求められるのだ。
そのためには、ポイントが二つある。
第一に、表示が高速、あるいは、“めざわり”でないものでなければならない。そして第二に、クリエイティブとして魅力的なものであるべきだ。
前回のコラムで、消費者が広告を回避する理由が、「邪魔する」「うんざりさせる」「表示が遅い」であることに触れた(「ディスプレイ広告で稼ぐ時代が終わる? スマホのユーザー体験が突きつける現実」)。これらはクリエイティブそのものの問題である以前に、フォーマット(表現形式)の問題であることをうかがわせる。
「ネイティブ広告」は、いまだに毀誉褒貶をともなう概念だが、“フォーマット”の視点からすれば、広告は徹底的に“ネイティブ”であるべきだ。というのも、たとえば、ヤコブ・ニールセン教授らの研究からも(「バナーは目に入らないのか?~新旧の知見」)、消費者は、編集コンテンツと分離しえるバナー広告には、見向きもしない行動態様をすでに身につけているからだ。
このように、表示デバイスの多様化、特にモバイル化が劇的に進む中、その最適な体験を創造することが急務のはずだが、ことに広告のフォーマットにおいて、取り組みが遅れてきた。
「藤村厚夫のメディア地殻変動」バックナンバー
- 「広告の終わり」が始まった、邪魔ものからの変身は可能なのか?(2017/5/23)
- 大手広告主の予算凍結事件が突きつけるもの。メディアが生み出す文脈的価値とは何か?(2017/4/20)
- コンテンツの供給過剰が価値下落を生む?メディアの付加価値を高める5つのポイント(2017/3/24)
- 「エンゲージメント」はメディアの価値を支えられるか?2016年の大転換から見直す(2017/2/20)
- 2017年、メディアをめぐる白熱のポイントを展望する―藤村厚夫氏(スマートニュース)(2017/1/25)
- Webメディアへの信頼が揺らぐなか、課金型メディアが新たな局面を迎えている(2016/12/15)
- 米国大統領選を動かした?“フェイク(偽)ニュース”とメディアはどう戦うのか(2016/11/22)
- 近未来のメディアでは、「編集部」が姿を消すかもしれない(2016/10/20)
新着CM
-
販売促進
新規獲得に依存しない「守りの販促」を実現する グロースマーケティングとは何か
-
マーケティング
顧客インサイトを発見する能力を高めるには? 味の素マーケター育成の取り組み
-
人事・人物
ダイハツ工業、「三つの誓い」改革推進部を設置(24年4月1日付)
-
販売促進
採れたての初日の出を電力に 受賞者が明かす「販促コンペ」企画が実現するまで
-
販売促進
価格帯の二極化進む外食市場 インバウンド活況の裏で人手不足も、日本フードサービス...
-
AD
広報
日本板硝子、企業認知拡大とメディアとの接点増加へ PRオートメーション活用で
-
AD
特集
広報業務が変わる!PRのデジタルトランスフォーメーション
-
販売促進
本屋経営者も参考にする「透明書店」 販売状況など経営の裏側を公開、freee
-
広報
大塚製薬、会社経営者に「社員に対する健康管理への意識調査」実施