「広報」は、なぜ必要なのか?

企業の存続は、人として生きることと同じ

人は生きていく上で、色々な人々とかかわっている。家族・友人・同僚などのように長いつきあいもあるだろうし、袖触り合うも多生の縁という関係もあるかもしれない。個人としてのつきあいであれば、自然とその関係の濃淡で、情報交換の頻度や内容を変えているものである。相手の何かを知りたい、相手に何かを伝えたい、そんな当然の気持ちのキャッチボールを生きていく基本姿勢の中で学んでいく。

そのあたりまえの情報伝達機能が「人」から「企業」に変わると、希薄になってしまった。ある時代に、「広報」は技術であり、専門性が必要との知識が植え付けられた。素人が触れてはいけない何かがあるかのような錯覚さえ感じさせた。しかし、現実には、かかわっている「人」が「ステークホルダー」に変わっただけである。

「人」が生きるかのように「企業」は存続する。それは、関係しているすべての人々に正確に、かつ過不足なく情報を伝えること。誰に何を伝えるかは、企業側の狙いや、ましてや戦略などという大げさなものではなく、聞く側の要求に従い伝えればよい。企業にとって「広報」は、人と係っている限り間違いなく必要なものであるが、伝える優先順位や内容については、企業が個々のステークホルダーとのかかわり合いで判断すればよい。

にもかかわらず「広報」が戦略的なものでなければならない理由は、伝い手の言葉の曖昧さや表現力のなさが、聞く側の誤解を招くことにある。人とのコミュニケーションが苦手となりつつある日本人は、いつのまにかステークホルダーに対するコーポーレート・コミュニケーションにおいても苦手意識をもってしまった。

人は、褒めてもらいたいときには言葉も滑らかだし、自然と表情も緩くなる。一方、怒られるときには、言葉は重くなるし、表情も硬くなる。しかし、企業という無機質的な組織の行った不祥事における謝罪会見で多く見られる現象は、当事者の存在感がないものばかりだ。これだけは伝えたいという意思表示もなく、誰に向けられた情報なのかも定かではない。残念なことである。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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