【短期集中連載】カンヌ・あの傑作の舞台裏――第2回 GETAWAY STOCKHOLM(MINI)

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『ブレーン』9月号のカンヌ特集では各部門から注目の受賞作をピックアップし、掲載しています。「AdverTimes.」では、誌面に載せきれなかったクリエイターのインタビューを紹介していきます。

第2回は、サイバー部門金賞ほかプロモ&アクティベート部門銀・銅賞、メディア部門銅賞を獲得したMINIの「GETAWAY STOCKHOLM」です。MINIの新型SUVの発売に合わせ、ほかの参加者とiPhoneアプリに表示される「バーチャルMINI」を奪い合い、最後に所有権を持っていた人に本物のMINIが贈られるという企画を実施しました。参加者が「バーチャルMINI」に50メートル以内に近づくとMINIの所有権が移るため、ストックホルム市街で大規模な「追いかけっこ」が勃発。1万1413人が参加し、企画後の四半期の販売台数を108%に伸ばした同企画の背景を、アカウントディレクターを務めたJan Casserlovさん(Jung von Matt Stockholm, CEO)が教えてくれました。

――この企画が生まれた背景は?

SUV「MINI カントリーマン」のスウェーデン発売に伴い、MINIから話題づくりが求められました。ターゲットは「若い感性を持つ人々」。企画の目的は彼らにMINIの熱烈な支持者になってもらい、新車発売の話題をオフライン・オンライン双方で広めてもらうことです。従来のメディアでは彼らへのPR手法としては不十分でしたから、私たちは慣例にとらわれないアイデアを考え出す必要がありました。

そこで生まれたのが、ターゲットが持つ原始的な狩猟本能に訴えかけようというアイデアです。

MINI_GatewayApp

ストックホルム市街の地図上に「バーチャルMINI」と参加者(DU=あなた)の現在地が、それぞれ赤い点と青い点で示されるアプリ。バーチャルMINIの50メートル以内に近づくと「今すぐMIMIを捕まえろ!」と表示する。

元々MINIは、ターゲットにとってブランド価値が高い。彼らのほとんどは子どものころから、マンガなどで見てMINIを知っていて、ある種夢のクルマなんです。ですから思い切って、彼らに「夢を実現してみせろ」と迫ることにしました。さらに、このキャンペーンを大々的に仕立て上げれば、人に教えたくなる価値も高まるだろう、と。

「バーチャルMINI」を捕まえて、誰にも奪われなければ、本物がもらえる――MINIの世界戦略コンセプト「Getaway」にも即したこのアイデアを実現させられたのは、位置情報技術を上手く使えたからだと思います。ターゲットの行動に火を付けるにはぴったりでした。

MINI_GatawayApp_iPhone

バーチャルMINIの所有権を獲得。ほかの参加者に奪われないよう逃げなければならない。

――企画中で困難だったことと、実施後の結果について教えてください。

MINI_GetawayApp_iPhone_SV-4

ほかの参加者が近づいてくると、黒い点が現れる。

当初はこのアイデアが、ここまで成功するという見込みを、私たち自身持っていなかったかもしれません。直感に従ったようなものです。MINI側から、企画が実際に機能するという論理的・合理的な根拠について、それはもう数多くの質問が寄せられて、それに回答するのが大変でした。

というより、私たちの答えは不十分だったかもしれません。もちろん事前に、デジタル領域の施策については追加調査を重ねていましたし、結局、それが今回最も力を注いだ仕事になりましたが、なにぶん前例のない企画ですからね。最終的には信用してもらうしかなかったのですが、クライアントはそれを示してくれました。

彼らのそうした勇気が、今回の素晴らしい結果を生み出したんだと思います。1週間の期間中、参加者1万1413人の平均プレー時間が5時間6分に上りました。あなたのターゲットを1週間で5時間、ブランドに接触させる労力を考えれば、その大変さがわかるはずです。PRについても予想以上でした。ゲームが始まる前から話題が広がり、作戦を練り始めていましたし、期間中は街中でふいに走りだすユーザーたちがそのまま屋外広告になったんです。また、スウェーデンの国内向け施策にもかかわらず、90カ国以上の人々が今回の企画に興味を持ってくれました。

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