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いま大事なのは正しく恐れること。そしてユーモアを忘れないこと――正しい方法を知れば 内部被曝は防げる

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ストレスのない暮らしが最大の予防医学

講演

子ども連れのお母さんたちも熱心に講演に聞き入った。


講演2

チェルノブイリ事故による放射能の影響で、奇形児やガンが増えているといったインターネットなどからの情報の真偽について質問する来場者。質問に対するナージャ院長の説明は次の通り。事故後妊婦に対する医療制度が充実し、放射能の影響が重篤と認められる胎児に関しては中絶が勧告されることや、これまでに放射能の影響と断定される奇形は認められないと説明した。

いま、福島県をはじめ、ホットスポットに住んでいる方々は健康への不安を抱えていることでしょう。高い濃度の放射線が検出されるところは移住が必要です。しかし、私たちの経験から明らかな通り、年間1~5mSvの範囲までなら、食事に気をつけることで、内部被曝を抑えることができます。25年間汚染地帯に住んでいる私自身が病気もせず、健康に暮らしていますし、ベトカ地区の住民の平均寿命は、ベラルーシの汚染されていない地区とほとんど同じです。小児甲状腺がんを除くと、大人に関しては疾病との因果関係も確認されていません。

事故のあと、私たちは各国の支援によって助けられました。その結果、国の制度が充実しました。店頭では、食品の放射線量が測定されますし、住民は毎年whole body counterで検査を受けています。国の負担によって、妊婦と14歳以下の子どもたちは2カ月間、そのほかの住民も1カ月間の放射線疎開ができます。

国の制度を充実させるとともに、住民1人ひとりが正しい知識をもって実践しながら、毎日ストレスなく過ごすことです。放射能と付き合っていくうえでは、それがいちばん重要なことを私たちは身をもって実感しています。

体を動かし、好きなものを食べ、生きることを楽しむ

ナジェージダ院長

放射線量の高い地域でも、食品を管理することにより内部被曝は軽減できるというナジェージダ院長。事故当時は医学生で、ベラルーシに帰省していたときにチェルノブイリ原発事故にあった。以来25年間ベトカ地区の医療に携わる。健康の秘訣は趣味の家庭菜園でつくった野菜を調理して食べること、そしてユーモアを忘れないことだという。

私自身のことをいえば、なんでもよく食べ、ふつうの暮らしをして25年間過ごしてきました。毎日仕事がたくさんあって、あれこれ悩んでいる暇がありません。

私のストレス解消は、サウナに入ったり、家庭菜園で野菜をつくったりすることです。ベトカ地区ではみんなそうしていますが、家の裏庭で、有機肥料で育てた野菜を食べています。肥料は近隣のコルホーズで分けてもらいます。植物の世話には、体を使いますから、余計なことを考える暇はなくて、とてもリフレッシュできます。

もちろん、25年前からこうだったわけではありません。原発事故の直後は不安とストレスでいっぱいでした。しかし、考えていても仕方がないし、やるべきことはたくさんあるので、いつの間にかストレスを忘れてしまいました。

ストレスが病気を悪化させることは、医学的にも知られています。もし放射能の影響でなんらかの病気のリスクが高くなったとしても、十分な免疫力があれば病気に打ち勝つことができます。しかし、重大な疾病でなくても、毎日悩んでストレスにさらされていたら、病は悪化してしまいます。

汚染された土壌の浄化や医療制度の充実など、政府が必要な対策を講じることはもちろん重要です。地域のコミュニティで支えあうことも必要でしょう。そして、自分の身を守るためには環境に適応することも必要です。

ロシアやベラルーシの人々は伝統的に小話(アネクドート)を楽しんできました。あまり喜ばしいことではありませんが、チェルノブイリ原発の事故以降、放射能に関係した小話がたくさん生まれました。

たとえば、こんな話があります。

3人の男が船で航海中、遭難し、海に放り出されました。一人はベラルーシ人、一人はロシア人、一人はウクライナ人です。3人は「もうだめだ」と思いました。でも、よく見ると遠くに島が見えます。

そこで3人は諦めないように、がんばって泳いでいくことにしました。ロシア人は「助かったら真っ先にしたいことを考えよう」と言って仲間を励ましました。そうして島にたどりついた3人は互いに何を考えたかをたずねました。

ロシア人は「ウォッカ」、ベラルーシ人は「女」、ウクライナ人は「サーロ」と答えました。サーロというのは豚の脂の塩漬けで、ウクライナ人のサーロ好きはよくジョークのネタにされているのです。

チェルノブイリの事故でロシア、ウクライナ、ベラルーシの国民はひどい目にあいました。でも、辛い状況でもユーモア忘れないことで生きることを楽しんでいます。

※ジミナ・ナジェージダさんのお話は、25年間にわたる除染や放射線量測定、さまざまな医療支援活動などのうえでのことであり、福島の現状にそのまま適用できない内容もありますのでご注意ください。

人間会議2011年冬号
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