(この記事は『宣伝会議』9月15日号~11月15日号の連載「広告界就職ラボ」に掲載されたものを再編集しています。)
電通 小島雄一郎・笹木隆之
前回お話ししたOB訪問は、志望企業を詳しく分析するための方法のひとつですが、今回はそもそもこの「志望企業」の考え方と決め方についてお話したいと思います。
就職活動ではよく「マスコミ志望」、「メーカー志望」、「IT志望」など、業界単位で志望企業が括られますが、実はこの「括り」が企業分析の落とし穴なのです。
一口にマスコミと言ってもテレビから新聞、出版、広告などさまざまですし、たとえば広告会社の中でも営業から媒体、マーケティング、クリエイティブなど、職種によって得られる経験や必要な能力はまったく異なります。それにも関わらず、就活ではつい業界単位で表現してしまう学生が多い。これでは本質的な志望とズレが生じてしまいます。
実はこの考え方、私たちが広告制作において「ターゲット」を決める際も同じです。広告でもよく「20代男性」など、いわゆるデモグラフィック的な視点で括るターゲット論がなされますが、20代男性はみんな同じではありません。サラリーマンと自営業など立場も違えば、志向性だってブランド志向からアウトドア志向までさまざま。「インスタントラーメンだから20代男性がターゲット」などと、短絡的に考えてしまっては本質的な広告活動はできません。
就職活動も広告活動も、業界やデモグラフィックなどの括り方はあくまで「便宜上の」ターゲット論であると意識することが重要です。先ほどの例だと、確かに若い男性にはインスタントラーメンを好む人が多く含まれるため、便宜上のターゲットを「20代男性」とすることはあります。しかし、20代でもジャンクフードが苦手な男性はいますし、インスタントラーメンが大好物の60代女性もいるかもしれません。本質的なターゲットである「インスタントラーメン好きな人」が、いつしか「20代の男性」にすりかわってしまうと、これらの人たちを取りこぼすことになってしまうのです。実はこのミスが、就活ではとても多く見られます。
たとえば、「広告志望」だからと広告会社ばかりを分析している学生に出会うことがありますが、話を聞いてみると本質的な志望は「人に気付きを与える仕事」であることがわかったりします。その場合、彼や彼女は「広告志望」ではなく、「人に気付きを与える仕事志望」です。それにも関わらず、「広告」という業界にこだわってしまうと、その他の「人に気付きを与える仕事」を見落としてしまう可能性があります。
確かに、広告も「人に気付きを与える」という面が重視される仕事ですが、たとえばコンサルティング会社や人材会社にも同じような面はあるはずです。それを、業界に縛られて見落としてしまうことほどもったいないことはありません。
実際、就活情報は業界ごとに分類されていますし、周囲の人たちから「どこの業界志望?」と聞かれることも多いと思います。そんなときに「広告志望」と答えることはもちろんあるでしょうが、大切なのは、それが便宜上の志望であることを「意識する」ことです。そうしないといつしかあなたの志望は、本質から離れて「広告」という便宜的なものにすりかわってしまいます。
あなたがもし今、広告業界に興味を持っていて、企業分析をしようと考えているならば、まずは広告に惹かれた理由を丁寧に紐解いていくことが必要です。それを行うことによって、あなたの企業に対する視野は格段に広がるでしょう。一見遠回りに見えるかもしれませんが、企業研究を行う際にはそういった志望の本質を浮かび上がらせることがもっとも大切なステップなのです。
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シリーズ 【就活応援企画】広告界の先輩に聞いた「伝わる就活のツボ」
【就活応援企画】広告界の先輩に聞いた「伝わる就活のツボ」―① OB訪問、される側が思うこと(全3回)
小島雄一郎
電通のコミュニケーションプランナー。立教大学法学部卒業。営業職として流通企業のキャンペーンプランニングを担当後、2010年プランナーに転向。メーカーのキャンペーンプランニングから、ミュージシャンの戦略プランニングまで幅広く活動。(07年マスナビ、08年宣伝会議コピーライター養成講座卒業生)
笹木隆之
電通の戦略プランナー。筑波大学社会工学類卒業。未来創造グループのメンバー。経営者とビジネス活性化および再生プロジェクトを進行中。右脳型アイデアで企業の成長戦略をサポートしている。「次代のフロントライン」をテーマにした論文がJAAA第40回懸賞論文を受賞。
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