拡散力あるツイッター、ネガティブコメントが少ないフェイスブック
――最近ではフェイスブックも始められたようですが、こちらはどういった経緯で開始されたのでしょうか。
亀田 フェイスブック自体は検討をずっとしていたものの、なかなか踏み出すきっかけがなかったのですが、今年の4月にソフトバンクとして公式のページを開設しました。そのちょっと前、3月29日には社長の孫が一足早くフェイスブックを開始して話題にもなりましたが、その時ちょうど社長と一緒にフェイスブックの勉強会を行っていて、公開する瞬間を目の当たりにしていました。その直後に、ソフトバンクのフェイスブックページを公開するよう指示がありました。
――検討しながらもフェイスブックを始めなかったというのは、何か懸念があったのでしょうか。
亀田 フェイスブックにどれだけの効果があるのか見えていなかった、というのが大きな理由ですね。
澤田 今までの事例を見ても、フェイスブックで大きく成功したという事例も見受けられなかったことに加えて、フェイスブックの運用に対して投資した際にどれだけリターンがあるのか、という点でも疑問がありました。我々の最終的なゴールは携帯電話を契約してもらうことですが、そのためには店舗に行って契約してもらう必要があるため、フェイスブック経由で契約につながった、というのは可視化しにくい。そういう状態でコストをかけて人員を割り当てる、というのが難しい状態でした。
――ツイッターのほうが運用メリットは高かったのでしょうか。
ツイッターであればすべて無料ですし、短い文章を投稿するだけで済みますが、フェイスブックは画像をたくさん使ったりアプリを開発したりというコストも発生します。また、ツイッターはRTという形で外部へ拡散していくのがわかりやすいというところもありますね。
――実際にフェイスブックを始められてからの感想をお聞かせください。
亀田 ツイッターだと非常に多くのお客さまからお声をいただけるのですが、匿名でも許されるシステムのせいか、中にはネガティブな意見も多く見られます。フェイスブックは実名が基本ということもあってそこまで強いネガティブなコメントは少なく、お客さまと接しやすい、という印象はありますね。そうは言っても、フェイスブックでも本音ベースで弊社の弱点やサービス面で至らないところはご指摘いただけるので、そうした声を参考にしながら改善に結びつけられると考えています。
――ツイッターとフェイスブック、両方を比べてみるといかがですか。
亀田 ツイッターの勢いに比べるとファン数の伸びは思ったほどではなかったですね。最近ようやく社長の孫のファン数を抜いたので1つの目標を達成したな、と思っています。
澤田 ツイッターは簡単にフォローできるけれど、フェイスブックでは企業のサイトに「いいね!」する文化があまりないのかな、という印象はありますね。
8月の「ソーシャルメディア課」発足で運用体制の刷新へ
――フェイスブックの運用で心がけていることはありますか。
澤田 写真は工夫するようになりましたね。
亀田 最初は新製品などのリリースが出たら載せるようにしていましたが、それではなかなかファン数が伸びず、フェイスブックでお客さまが求めているのはそこではないなと実感しましたね。文章もお客さまと対話するような表現に変えたり、投稿には写真をできるだけ入れるようにしたりと工夫しています。
――運用に関してはツイッターよりも手がかかるということでしょうか。
澤田 思っていた以上にフェイスブックのほうが手がかかりますね。もちろん我々がまだ慣れていないことも理由の1つなので、今後は改善していきたいと思います。
――ソーシャルメディアのアカウント運用体制はどのようになっているのでしょうか。
亀田 8月から新たに「ソーシャルメディア課」というチームが発足し、広報とマーケティングの担当が1つのチームでフェイスブックを運用するようになりました。今はまだツイッターはそれぞれの部署で運用していますが、この辺りも整理していきたいと思っています。
――広報とマーケティング、それぞれの部署を兼務しながらの新体制ということですが、どういった理由でこの体制になったのでしょうか。
澤田 ツイッターはそれぞれの部署で、Ustreamは主に広報が決算中継のために、と部署ごとに分かれて運用するのが普通でしたが、フェイスブックについては「ソフトバンク」というブランドで集約して運用することを前提としていたので、広報・マーケティングそれぞれの専門分野を担当しつつも、運用については一体化したほうがいい、という考えですね。
――今後考えられている施策や興味を持っているソーシャルメディアはありますか。
亀田 Google+やLINEといった新しいツールも検討しますが、まずはフェイスブックで今後いろいろな仕掛けをしていきたいですね。先日もフェイスブックの3万いいね達成を記念して、社員向けに開催するイベントへフェイスブックページのファンをご招待するといった企画を実施しました。広告施策なども考えつつ、フェイスブックがどういった効果を出せるのかはいろいろ検証していきたいと思います。
――効果検証はどのように行われているのでしょうか。
澤田 フェイスブックはこれからですが、ツイッターは発言内容のポジティブ、ネガティブを判別し、週次や月次でレポートしています。また、実際にお客さまが契約したかどうかまでは分析できていませんが、キャンペーンサイトへどれだけ誘導できたかという点は計測しています。
ただ、先ほども申し上げたとおり、ツイッターですとソフトバンクに対してネガティブな意見も多く、ポジネガの判別はネガティブな部分が強く出てしまうところはありますね。お客さまとのコミュニケーションという点ではフェイスブックのほうが文字数制限もなくやりやすいのかなと感じていますし、それが現在フェイスブックに注力している理由でもあります。
――インタビュー雑感
単に、最新のソーシャルメディアを利用するのではなく、ユーザーの反応を見ながら利用するメディアの取捨選択や、活用方法を柔軟に変更し、合わせて社内の体制もスピード感をもって最適化していく姿勢は、他の企業も参考になるのではないかと思いました。(アジャイルメディア・ネットワーク)
インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹
高柳 慶太郎「ソーシャルメディア活用 先進企業に聞く」バックナンバー
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