アジアのデザイン力——「販促会議6月号」より

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パッケージのメディア特徴は購買に近いことだ。パッケージを見る人は、商品の購入をその場で検討している人である。それだけ、販売促進におけるパッケージデザインの役割は大きい。パッケージデザインを手掛けるアイ・コーポレーションの小川亮氏に、優れたパッケージを紹介してもらう。

ここでは、『販促会議』2013年6月号に掲載中の連載「販促NOW-パッケージ」の全文を転載します。


(文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川 亮)

国のデザイン力を決める要素は、主に三つあると思う。一つは、企業の選択眼。いくら秀逸なデザインがあっても、それを選ぶ企業に選択眼がなければ、質の高いデザインが選ばれることはないし、世に出ることもない。最終的には消費者調査や社長の独断で選ぶとしても、それまでのデザイン制作・選択・ブラッシュアップといった工程において、現場の高い選択眼がなければ、企業のデザイン力は上がっていかない。

二つ目は、その国の消費者の選択眼だ。質の高いデザインを生活に取り入れて「違和感がない」と感じる人がどの程度いるかにより、その国のデザイン力は決まる。数年前、ロンドンのスーパーで、非常に洗練されたデザインのPB商品が売られていて驚いた。当時は、あの商品を日本に持ってきても売れないという業界関係者の判断により、デザインレベルの高いPBが国内に出回ることはなかったが、近年は日本のPBのデザインも向上しつつある。その背景には、日本の消費者のデザイン力の向上があるだろう。

パッケージデザインは、多くの人の生活に入り込む。鑑賞するためのものではないため、その国の生活レベルに“なじむ”かどうかがパッケージデザインの大切なポイントになる。一商品のパッケージデザインだけが飛び抜けて洗練されていると、家の中で浮いてしまうのだ。

三つ目が、デザイン産業の育成環境である。国内でデザイナーを教育し、産業として育成する環境が整うと優秀な国産デザイナーが増え、じわじわと国全体のデザイン力が上がっていく。そして、この三つの要素は互いに連携しており、三つが互いに高め合っていくことでその国のデザイン力向上につながっていく。

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統一企業グループ「ALKAQUA」。同グループは、日清製粉、キッコーマン、日清オイリオ、明治など日本企業とも積極的に提携している。

今月、気になったのは上海で見た天然水「ALKAQUA」のパッケージだ。必要最小限のスペースを最大に生かして、清涼感、透明感、シズル感を見事に表現している。さらに、必要な記載事項は正面のデザインの裏側、つまりシールの接着面に印刷されている。見事なデザインだ。しかし、私がさらに驚いたのは、この商品が上海のコンビニで普通に売られ、多くの人が手に取っていることだった。上海の日常シーンに、違和感なくこの洗練されたデザインが受け入れられているのだ。

中国ではこの10年間で多数の美術学校が設立され、デザイン特区も設置された。海外の優秀なデザイナーを招き、積極的にデザイン産業の育成環境に投資している。また、この「ALKAQUA」を販売する統一企業グループは、台湾最大手の食品・流通企業グループで、従業員7万人、売上高は8000億円を超すグローバル企業だ。今まさに始まっている、非耐久消費財分野のアジアグローバル競争に、日本企業も日本のデザイン産業も置いていかれないようにしたい。スピード感を持って企業の選択眼、消費者の選択眼を上げ、デザイン産業育成の環境を整える必要性を痛感したパッケージである。

小川 亮氏(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部・販促企画部・市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社のアイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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