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コラム

全日本広告連盟 創立60周年特集

トヨタ、サントリーなど広告主5社が登壇――全広連60周年記念 特別シンポジウム(2)

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広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)が今年10月、創立60周年を迎えるに当たり、記念大会が5月に青森で開かれました。この企画は全広連と来春60周年を迎える宣伝会議とのコラボレーションの一環で、青森大会のレポートや地域ごとの取り組みを紹介します。

全広連60周年の青森大会の目玉は、大手広告主でブランドや宣伝・制作を統括する5人によるパネルディスカッション。中央大学ビジネススクール・田中洋教授が広告市場の予測と今後起こりうるメディア環境変化について解説したのち、各社の事例がそれぞれ紹介されました。パネリスト同士の質疑も行われ、2時間にわたる密度の濃い議論が繰り広げられました。2回目の今回は、サントリービジネスエキスパート・久保田和昌氏と味の素・島崎紘而氏の話を中心に紹介します。

▽パネリスト

  • トヨタマーケティングジャパン・河本二郎氏
  • サントリービジネスエキスパート・久保田和昌氏
  • 味の素・島崎紘而氏
  • 資生堂・ズナイデン房子氏
  • 大和ハウス工業・山本 誠氏

▽モデレーター

  • 中央大学ビジネススクール教授・田中 洋氏

好調商品でさらなる挑戦――サントリービジネスエキスパート・久保田氏

45年の苦悩から生まれたヒット商品


サントリービジネスエキスパート
常務取締役 宣伝・デザイン本部長兼宣伝部長
久保田和昌氏
京都府出身。1977年サントリー入社。
宣伝企画部課長、ビール事業部企画課長、
宣伝事業部媒体部長、RTD事業部企画部
長などを経て、2007年から宣伝部長。
日本アドバタイザーズ協会常任理事。

久保田(サントリービジネスエキスパート): 今やサントリーの精神的支柱ともいえる商品に「ザ・プレミアム・モルツ」があります。ビール事業がうまくいかない時期が続いた中で、やっと出合えたコーポレートブランドと言っても良い商品です。

当社は1963年にビール事業に参入しましたが、黒字になったのは2008年で、それまでの45年間は赤字が続きました。ザ・プレミアム・モルツが発売になったのは03年。醸造家が世界一美味しいピルスナービールをつくりたいという情熱をかけて開発しました。05年にはモンドセレクションで、日本初のビール部門最高金賞を受賞。その後08年まで3年連続最高金賞を受賞しました。苦節45年、ビールに取り組む中で、ザ・プレミアム・モルツは、多くのお客さまから「美味しい」との評価をいただいた初めてのビールです。2011年まで8年連続最高売り上げを達成しました。

ところが、11年6月頃に社長の佐治(信忠氏)がザ・プレミアム・モルツのリニューアルを検討しているようだという話が聞こえてきました。売り上げが好調なのになぜリニューアルなのか。モンドセレクションの受賞歴を捨ててしまうことにもなります。当初は納得できませんでした。

その真意を聞いてみると、「1500万(ケース)しか売れていないのに満足していてどうする。もっと多くのお客さまにザ・プレミアム・モルツの美味しさを実感していただくために、ゼロから挑戦するのだ」ということでした。

「ゴールではなく、越えるべきバーだ」

そこで「もっと多くのお客さまの大切な時間に寄り添えるビール」をコンセプトに、「リバイタライズ」(=新しい活力を与えること)に踏み切り、さまざまな取り組みを徹底展開しました。テレビCMは「うまさに本物の輝きがある。新しい、ザ・プレミアム・モルツ」というテーマで、発売前からCMを流しました。メディアを押さえる一方で、店頭にも力を入れました。オウンドメディア、アーンドメディア、ペイドメディアに加えて、バーチャルからリアルへの誘導を意識した「4番目のメディア(店頭)」を、2月から5月にかけてフルアクセルで展開し、売り上げも大きく伸ばしました。

今回の成功には3つの鍵があったのではないかと思います。
(1)トップの強い意志。一サラリーマンが売れている時にリスクを冒すのは難しいことです。
(2)事業部、営業部、宣伝部が一体となった取り組み。商品そのものをリバイタライズしたため、今回は商品自体にも情報がありました。コミュニケーションも刷新し、同じタイミングで店頭にしっかりしたインターフェイスを作りました。
(3)ターゲットにいかにしてメッセージを到達させるか、これまでの知見で蓄積してきた「HOW TO SAY」を一気に爆発させました。

島崎(味の素):売れている中でリニューアルに踏み切るにあたり、どんなゴールを掲げたのでしょうか。

久保田:どの消費財メーカーも商品は時代に応じて常に進化させていかなければいけないと考えているのではないでしょうか。ザ・プレミアム・モルツにもまだまだ追求すべきことがあると考えました。目指したのは、何杯飲んでも飽きない味です。しかし、もし最高に達したと思えたとしても、「それはゴールではなく、越えるべきバーだ」と佐治は言います。品質や美味しさというものにはゴールがありません。常に越え続けよということなのでしょう。

島崎: 「ライフのビール」というキーワードが出ていますが、どういう意味ですか。

久保田:日本でビールは仕事の疲れを取ったりウサを晴らしたりするために飲まれてきました。しかし世相は移り、家族や友人との絆が見直されるようになりました。大切な人と一緒に過ごす、そういう時こそゆっくりビールを楽しんでいただきたい。「ワーク」から「ライフ」へ。「ライフのビール」という言葉で、そのコンセプトを表現しました。

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