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コラム

CSR視点で広報を考える

目を研ぎすませ!まだまだあるはず消費材の「食品偽装」

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一連のホテルの食品偽装は氷山の一角?

大阪新阪急ホテル、ホテル阪急インターナショナル、宝塚ホテルなどを運営する阪急阪神ホテルズ、ザ・リッツ・カールトン大阪を経営する阪神ホテルシステムズ、かんぽの宿塩原を運営する日本郵政、小田急系列の山のホテル、箱根ハイランドホテル、ハイアットリージェンシー東京で、次々と食品偽装が発覚、公表されたことでホテルやレストランにおけるメニューと異なる食材の使用が明らかとなる中、食品表示の信頼性の懸念が急速に高まっている。

食品表示に関する法律は、専門家でも解釈が難しく、ボーダーラインはいくつもある。

一例に「おふくろの味の定食」を顧客に出した場合など、消費者は母親がつくってくれた食事を想い浮かべるだけにとどまり、「表示上に不適切な表現があった」と断言することは難しい。

「鮮魚のムニエル」にしても、「鮮魚」という定義があいまいであり、イメージ上は「冷凍していない魚」を思い浮かべやすいがそう定められているわけでもなく、消費者庁的に言えば「鮮魚のムニエル(冷凍魚を含む)」と記載した方が親切というレベルにすぎない。

実際のところ、そんな細かな表示をしているメニューはあまり見たことがない。それほど表示法をしっかり丁寧に実行しようとすると消費者側にとって「あれっ?」というほど意味不明になってしまうものもある。

偽装か誤表示か?

今回の食品偽装に関する消費者の信頼を失った背景には、阪急阪神ホテルズの出崎弘社長の記者会見でのコメントが起因する。

名門ホテルグループのトップとしてブランドを傷つけたことに謝罪したことはよかったが、一連のグループホテル内での度重なる多種の食材での偽装に対して、「偽装ではなく誤表示」と言い放った点にある。

「偽装」について「意図はなかった」との意味で話したつもりであろうが、景品表示法は「意図的」かどうかにかかわらず、実際より著しく優良と誤解を与える「優良誤認表示」を禁じている。すなわち、消費者から見て著しく誇大な表現であるかが試金石となる。

社長はあくまで知識や認識不足を理由とするが、結果として優良誤認があれば、それは消費者への大きな裏切りとなり名門ホテルにおいては絶対にあってはならないことだろう。

特に、名門中の名門、「ザ・リッツ・カールトン大阪」においても次々と偽装が判明、現在も調査中でどこまで問題が拡散するかは今後の結果報告を待つしかないが、現時点で判明しているだけでも、「フレッシュ」と記載しながら「ストレートジュース」を使用し、提供していたパンの中にも「自家製」と表記しながら外部から仕入れていたことが確認され、さらに「車エビ」についても安価な「ブラックタイガー」が使用されていたなど、単純にメニューと異なる食材が使用されていただけでなく、明らかな消費者への期待を裏切る行動が目に余る。

食通の客が指摘した「フレッシュ」の味の疑いに対しても、現場責任者が「フレッシュ」であることを念押しする対応からして、もはや「意図的ではなかった」という社長のコメントすら疑わしい。

食品偽装への司法・行政の対応

食品偽装には優良誤認行為に対する不正競争防止法違反や詐欺罪、さらに2009年からはJAS法違反における直罰規程も定められており、刑事罰が規定されている。

行政的には消費者庁の臨検や改善命令の発布という厳しい対応も可能であるから、自浄能力に懸念がある場合は、司法や行政が積極的に動くことで消費者へのリスクを低減することも検討すべきだ。

特に、加工品や完成品など、包装されている商品への調査や検査で、これまで多くの摘発が行われてきたが、一瞬にして現場(レストランなど)で消費される消費材に対して本格的な調査が行われるのはめずらしい。逆に言えば、今まで調査の盲点となりやすいディープポケットであったと言えなくもない。

一方で、法律は原材料の調達、加工・生産、保存、流通、調理を経て、最終的に消費者の口に入るまで、平等かつ公平に責任を負わせており、決して今回の事例も想定外ではない。もしあったとすれば事業者側の気の緩み以外に考えられない。

新・食品表示法については前述のとおり、食品衛生法、JAS法、健康増進法、計量法などの表示部分の一元化を目指してつくられた法律であるが、一部に不明瞭な部分もあり、今後も議論されるべき課題は多い。

しかし、食材を提供する側は善意の視点からこれを運用すべきであり、万一にもボーダーライン上の解釈を逆手にとって優良に誤認させる表示を行った事業者には司法・行政・消費者は厳しい目を向けなければならない。

オリンピックの開催も決まり、金融・経済の信頼に応えていくためには生活の基盤となる食品業界への信頼もまた不可欠だ。


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