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上田義彦×葛西 薫が語る写真と広告 「光、形、言葉、なにやらかにやら」

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サン・アド50周年を記念して開かれた「Orange! サン・アド創立50 周年記念展覧会」の会場で、3 夜連続のトークショーが開かれた。
1夜目のテーマは、写真家の上田義彦さんとサン・アド アートディレクター 葛西薫さんによる「光、形、言葉、なにやらかにやら」。
サントリーウーロン茶の広告をはじめ数多くの仕事を一緒にしてきた2人は、共に何を見て、感じてきたのか。
※本記事は、ブレーン11月号からの転載記事です。

左が写真家 上田義彦さん、右がサン・アド アートディレクター 葛西薫さん。

初めての広告写真

葛西:上田さんとはウーロン茶の広告を筆頭にたくさんの仕事を一緒にしてきました。公の場で話すのは今日が初めてですね。

上田:僕は葛西さんと出会っていなかったら、広告をやってなかったと思います。僕のポートレートのシリーズを見て、広告の写真を撮りませんかと最初に声をかけてくれたのが葛西さんだったんです。

葛西:上田さんの展覧会に初めて行ったとき、それまで“ポートレート”に持っていたイメージが崩れました。それまで写真というものは、光の方向があって、コントラストがあって、人物には立体感があって、画面に奥行きもあって…というものだと思っていた。ところが上田さんの写真は、グレーというか、銀色が中心にあり、光がどこにあるのかよくわからなかったんです。いつかチャンスがあったら、このような人と広告の仕事がしてみたいと思ったんです。

上田:最初の仕事は、サントリーウイスキーの新聞広告でしたね。

葛西:ドイツ文学者の高橋義孝さんに出ていただいて。ご自宅で高橋さんのデスクの回転いすを少しずらしたら激怒されてね(笑)。

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上田:すべてのものを動かすべからずと言われていたのに、葛西さんが動かしちゃったんですよ。

葛西:まだ若かったから、縮こまってましたね(笑)。そのときの写真に感激し、それ以来、仕事のアイデアを考えるときに「これを上田さんだったらどう撮るだろう?」と考えるようになりました。上田さんを通じて、僕の写真に対する思いがものすごく変わったと思う。上田さんがあるとき「光で一番きれいなのは、水の底なんですよ」と言ったこともよく覚えている。

上田:それもウイスキーの撮影のときですね。自分の中であるとき発見したんです。水の底の光には方向性がない。けれど、何か中心のようなものはある。光の奥の、そのまた奥の奥というか…コントラストとはまた違う、光の重なりですね。ストロボのような強い光とは反対側にある美しさ。それを見つけて、一人で興奮したんです。それをスタジオで再現できないかといろいろ実験をしていました。空間の中で自由自在にしている光というのかな…あくまでものの考え方ですけど。

葛西:「光は直進するもの」「光は当てるもの」というけれど、上田さんの写真を見ていると、被写体が発しているものを上田さんが吸い取って、それを印画紙に焼き付けている感じがする。昔、そんな言葉を上田さんが特集された本に、寄せさせてもらいました。

次ページ 「見えないことを想像する力」に続く


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