「自社にとってのマーケティングとは何か?から考える日本版CMOの理想像」Part2

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写真右上から時計回りにトヨタ自動車Lexus International レクサス ブランドマネジメント部・部長 高田敦史氏、モスフードサービス ブランド戦略室・ダイレクトマーケティンググループグループリーダー 齊藤雅久氏、「JAPAN CMO CLUB」CMO(Chief Marketing Organizer)加藤希尊(かとう・みこと)氏(セールスフォース・ドットコム Marketing Cloud本部 マーケティングディレクター)、ローソン マーケティング統括本部 客層拡大企画部・部長 鈴木一十三氏、森永乳業 広告部・部長 寺田文明氏。

一人の“企業人格”が求められる時代——CMO的な機能が高いホスピタリティを実現する

2014年11月6日に設立された「JAPAN CMO CLUB」の第2回研究会が11月26日に開催された。今回はトヨタ自動車 (レクサス)、モスフードサービス、森永乳業、ローソンという4つの異なる業界より、トップマーケターが参加した。

第2回研究会参加メンバー

  • 高田 敦史 氏(トヨタ自動車 Lexus International レクサス ブランドマネジメント部・部長)
  • 齊藤 雅久 氏(モスフードサービス ブランド戦略室・ダイレクトマーケティンググループリーダー)
  • 鈴木 一十三 氏(ローソン マーケティング統括本部 客層拡大企画部・部長)
  • 寺田 文明 氏(森永乳業 広告部・部長)

今回も1回目の研究会に続き「自社にとってのマーケティングとは何か?から考える日本版CMOの理想像」をテーマにディスカッションを行った。成熟市場において、各企業に共通する課題や打ち手のヒントが、1回目とは異なる視点で見えてきた。

今回の参加企業のうち、モスフードサービスとローソンの2社が、日々直接の顧客接点を持つ企業だっただけに、顧客満足を高めるホスピタリティをいかに実現するかが、大きなテーマとなった。

モスフードサービスの齊藤氏、ローソンの鈴木氏は、店舗アルバイトの接客を通じて、商品自体の美味しさといった価値に加え、商品、サービス、空間づくりなど総合的にマネジメントして、ブランドの価値をいかに伝えるかを考えていた。

またホスピタリティの高い接客で知られる「オーナーズラウンジ」を展開する、トヨタ自動車・レクサスのブランドマネジメントを担う高田氏の場合には、「買った後のコミュニケーション」も重視し、顧客との絆を深めるという点で、ホスピタリティを重視する戦略をとっていた。

さらに森永乳業の寺田氏もマスプロダクツメーカーでありながら、体験型の工場見学や料理教室などのイベント活動、コミュニティサイトなど、マス広告だけに頼らないお客様との双方向のコミュニケーションを重視した活動を行っている。

マーケターがコントロールできること、コントロールできないこと

日々発生するお客様とブランドの接点はマーケティング部門だけで、コントロールできるものではない。いかに現場でお客様と接するスタッフ一人ひとりに、ブランドの持つメッセージを共有してもらい、魅力的なカスタマーエクスペリエンスを提供できるか、各社にとっての課題となっている様子が見えてきた。

トヨタ自動車の高田氏からは「自動車業界の販売店の売上は、新車販売以上に車検や保険など、購入後のサービスの方が多い。購入いただいて終わりではなく、いかにお客様と良好な関係を構築できるかが重要だからで、レクサスの『オーナーズラウンジ』もこうした発想のもとで作られている。とはいえ、国内だけで保有台数が20万を超えてくる状況になると、現在のインフラで従来のホスピタリティを実現できるか、という課題も出てくる。それでもレクサスというブランドは特に販売台数ではなく、常に保有台数ベースで戦略を考え、お客様との対話を続けていくべきと考えている」との話があった。

一方で、全国に1411店舗の「モスフード」を構えるモスフードサービスの齊藤氏からは「創業当時には、店舗のオーナーさんが店舗で、近くの子どもたちにボランティアで勉強を教えていたこともあったという話を聞いた(笑)。現代の社会環境では、ちょっと考えられないケースですが、でもどこまで現場に裁量を任せるかは大きな課題」との話があった。

また、自身も店舗店頭に立っていた経験もあるというローソンの鈴木氏からは「各店舗の接客のマニュアルはあるが、お客様の想定を超えるサービスをどこまで実現できるかは、ファンを作る上では重要。一般的に、コンビニエンスストアはホスピタリティ溢れる接客をする場とは思われていないので、ちょっとした現場の機転がお客様にとっての高い満足につながる」と話した。

森永乳業の寺田氏も、「組織や役割が分かれているので社内の各部門が個別最適化し、個々の部門での効率を求めてしまいがちだが、お客様から見れば、そうした事情は関係なく一つの企業・ブランドにすぎない。お客様の視点に立ち、一人の企業人格を作っていくことが、マーケティングに求められる機能ではないかと思う。そこには社内の複数部門に横串を刺す必要があることから、CMO的な役割が必要とされているのだと思う」と指摘した。

お客様とブランドの接点で一番、重要な瞬間は?

本研究会では「JAPAN CMO CLUB」のCMO(Chief Marketing Organizer)である加藤希尊(かとう・みこと)氏(セールスフォース・ドットコム Marketing Cloud本部 マーケティングディレクター)が、モデレーターを務めている。

加藤氏は「顧客満足を高めるためには一人ひとりのお客様のカスタマージャーニーを描き、それに対応したコミュニケーションの設計が必要だ。コミュニケーション・販売のチャネルが複雑したために、そのジャーニーを読み解くのが難しくなってはいるが、カスタマージャーニーは“瞬間”の連続で作られるもの。まずは自分たちのブランドとお客様との接点の中で、最も重要な“瞬間”を理解し、そこからお客様理解を進めていくアプローチが適切」と話し、研究会では「それぞれのブランドにとって重要な“瞬間”をテーマにした議論も行われた。

トヨタ自動車「レクサス」(高田氏):レクサスとの初めての接点となる瞬間

トヨタ自動車 高田 敦史 氏

トヨタ自動車 高田 敦史 氏

高田氏からは、販売店が「オーナーズルーム」等を活用して既存のお客様との関係を強化する一方で、新しいお客様が店頭に足を運んでいただくお手伝いをするのが本社のマーケティング部署の大きな役割であるという話があった。

さらに自動車自体に関心の薄い層も含めて、新しい接点を作ることが必要であるとの考えから、マス広告やオウンドメディアを使った発信の他、2013年に東京・表参道に第1号店がオープンした「INTERSECT BY LEXUS」についても言及。

「『INTERSECT BY LEXUS』は都市とつながり、人と人、人とクルマが交わるをテーマに、デザインやアート、ファッション、カルチャーなどを通じて、レクサスが考えるライフスタイルを様々な形で体験できるスペース。レクサスのオーナーさんしか入れない「オーナーズルーム」とはまた違い、裾野広くブランドの世界観を体感いただける接点になっている」と話した。

森永乳業(寺田氏):日常の中で思い出してもらう瞬間

森永乳業 寺田 文明 氏

森永乳業 寺田 文明 氏

寺田氏からは「食品のような商品の場合、店頭で瞬間的に購買を決められることが多く、AIDMAやAISASといったプロセスを経ないケースも多い。私の属する広告部の役割としては、「店頭で思い出してもらうきっかけを作ることが大事なこと。そのためには、広告、PR、店頭ツール、パッケージなど全ての情報の統合がとれ、さらに買い物をされるお客様にとって自分事化される情報であることを心掛けている。」との話があった。

ローソン(鈴木氏):他のコンビニにはない、思い出してもらえる瞬間

ローソン 鈴木 一十三 氏

ローソン 鈴木 一十三 氏

一方で2013年の10月に「マチの健康ステーション」宣言をし、このミッションの推進役を担うローソンの鈴木氏からは「全国にコンビニエンスストアは5万店以上あると言われるが、思い出してもらえる瞬間はおなかがすいた、喉が渇いた、トイレを借りたいといった緊急の時が多いのではないか。でも、それはどのコンビニエンスストアでも提供できる「便利」という価値。ローソンならではの価値を考えた時に、出てきたのが『健康』というキーワード。身近にあって、ちょっと健康や身体のことが気になった“瞬間”に思い出してもらえるようになることを目指している」との話があった。

ディスカッションを通じ、“瞬間”の作り方が、成熟市場における企業の差別化要素につながることも見えてきた。

モスフードサービス (齊藤氏):モスバーガーを食べたいと思ってもらえる瞬間

モスフードサービス 齊藤 雅久 氏

モスフードサービス 齊藤 雅久 氏

またモスフードサービスの齊藤氏は「『モスバーガーを食べたいな』と思ってもらえる瞬間をどれだけつくれるかが大事」と話し、最近始めた繰り返し入金して使える「モスカード」について説明し、「常にお財布の中にモスのカードを入れていただくことで、ブランドとの接触頻度を増やし、思い出してもらえることにつながれば」と話した。

次ページ 「デジタルチャネルと人を組み合わせ」へ続く

 

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