デジタルチャネルと人を組み合わせ、マーケティングに感情を入れていく
ディスカッションでは「デジタルテクノロジーの活用により、新しいお客様との接点づくりが可能になっているが、人を介しなければできないこと、デジタルで実現できることの見極めが大事ではないか」との議題が提示された。
モスフードサービスの「モスバーガー」では今年の8月にスマホ経由で、商品をオーダーできるアプリをローンチしたが、齊藤氏は「デジタル施策で送客をして、なおかつお客様と心でつながっていくことが重要」だと語った。
心でつながる場としては、数十名のお客様を招いて、提携の農家のトマトを収穫して自分でハンバーガーを作って食べてもらう、といった体験型のイベントを展開している。
森永乳業の寺田氏は「デジタルテクノロジーを活用することで我々のようなメーカーも直接、お客様と接点を持つことができるようになった。とりわけ商品のファンの方たちのコミュニティを作ることに可能性を感じてはいるが、大切なのは心の通じ合うコミュニケーションができることであり、10万人、100万人と規模を目指すべき活動ではないと思っている。何かしらの接点を持ったことのある、1万人程度のお客様とコミュニケーションをする上では、デジタルテクノロジーはこれまで実現できなかったことを可能にしてくれるという実感がある」と話した。
企業の組織が巨大化、複雑化すると、自ずと商品がお客様の手元に渡り、消費されるまでのバリューチェーンが分断化してしまう。一方で、コモディティ化した時代環境の中では、特に商品の背後にある「企業人格」「企業ブランド」に対して、共感できるか否かも、商品購入時の重要なファクターとなっている。
今回はデジタル、実店舗にかかわらず、分断化したバリューチェーンにいかに横串を刺し、親近感を醸成するコミュニケーションを実現するかという、各企業に共通する課題が見えてきた。
この課題を解決する方策として、企業を”一人の人”としてお客様に捉えてもらうという共通の認識が生まれた。その実現のためには、企業の感情をマーケティングメッセージに乗せ、ストーリーを語り、組織として、様々なファンクションを横串でつなげるCMO機能の重要性が浮き彫りとなった。
CMOという機能の必要性が、第1回とはまた違う角度から議論されるディスカッションとなった。
加藤氏は、あらゆる業態にとって「デジタルであろうとマーケティングに必要なのは企業側の感情を入れていくこと、そしてストーリーを伝えることだと思う。改めて“マーケティング活動に感情を入れていく”という基本が見直されているのではないか」、と2時間半に渡るディスカッションを締めくくった。
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