【前回のコラム】「女性役員の謝罪記者会見の心得とは〜『リスクの神様』監修者が語る、ドラマの見所と危機管理・広報(1)」はこちら
『リスクの神様』第二話では、従業員による悪意の異物混入を題材に食品会社豊川フーズの危機的事態に対処するサンライズ物産危機対策室の活躍を描いている。前回同様、豪華キャストが勢揃い、様々な伏線が複雑に張り巡らされ、登場人物の異なる意図に翻弄されながら、ドラマは息も付かせぬ展開を見せていく。
このコラムでは、毎回の放送後に『リスクの神様』の見どころや危機管理と広報の教訓、キーポイントなどを本ドラマの監修者で危機管理の専門家としての筆者の目線から解説していく。
第二話のあらすじ
第2回のテーマは「食品への異物混入」。サンライズ物産 危機対策室長の西行寺智(堤真一)と神狩かおり(戸田恵梨香)は、同社傘下の食品会社「豊川フーズ」で発生した、カップマカロニへの異物混入事件に対処することに。混入したネジにより口の中を切る被害者まで出たにも関わらず、豊川フーズ社長の天野昭雄(飯田基祐)は「愉快犯の犯行」と決め付けるような発言をしてしまう。こうした対応にネットは大炎上、同社商品の不買運動まで巻き起こる。火消しを図ろうと、総務部長の麻生次郎(岡本信人)が謝罪会見を行うものの、社長の不在や会見中の麻生の態度により、かえって世間の反感を買ってしまう。同社は信頼を取り戻すことができるのか——。
第2話の教訓−安全神話と隠蔽体質が生んだ悪意の異物混入リスク
第2話では、豊川フーズのカップマカロニ製品にネジが混入していたことが原因で、口内を負傷した消費者が、写真付でブログに掲載、炎上する場面から始まる。
その後、製造過程での混入を全面否定する豊川フーズ社長の「被害者発言」と真っ向から対峙する苦情者は、あたかも金銭狙いのタカリ屋・愉快犯とも捉えられる社長の発言に怒りを感じ、自身のブログで「ぶっ潰す…不買運動呼びかけ開始!」と書き込み、豊川フーズはソーシャルメディアの風評被害の格好の的となる。
豊川フーズ社長をはじめすべての幹部が自身の製品管理は完璧と信じていたために言わしめた「被害者発言」であったが、食品会社として原因究明すら行わない姿勢は果たしてよかったのか。
危惧する麻生総務部長(岡本信人)は、社長に対して製品に対する安全性を説明する会見を行うよう進言するが、社長は「被害者の私がなぜそんなことをしなければならないのか」と逃げ続ける。
この事件での教訓は、製品製造過程で通常では決して混入が想定されない異物の混入が、商品購入後に発生した場合でも、2つの可能性があるという点である。一つは商品販売後に異物が入れられ店舗に再び戻されたか、購入者が異物混入があったと意図的に偽装する事例であり、もう一つは製品の製造過程(工場内)で従業員が意図的に混入を図った事例である。
安全神話に信頼を寄せる経営陣にとっては、後者の原因を認めることは許しがたいことであり、周辺を取り巻く幹部役員・社員にとっても説得は容易ではないだろう。
しかし、消費者に健康危害や人的被害を伴う事故が発生するリスクとなると企業側の原因究明に対する責任は重いと言わざるを得ない。
今回のテーマとなっているフードディフェンス(悪意の異物混入対策)に対する食品会社の基本的な考え方・対処方法についてはこちらにまとめているのでご参照いただきたい。
豊川フーズが原因究明を怠り、従業員の悪意の汚染(異物混入)の可能性を初めから「想定外」としていたことは、結果として大きな企業危機を招致することに発展する。
記者会見で社長の代役を務める総務部長の麻生が、記者の厳しい質問に対する回答につまって、ムキになり怒鳴ってしまった結果、「灰色会見、異物混入の疑念晴れず」とテロップを流されるシーンがある。
西行寺が天野社長に詰め寄り「謝罪広告」や「新たな安全包装」の検討を進言するも社長は依然として「被害者のウチがなぜそこまでするんだ」と言い、さらに西行寺が「対応を誤れば、会社の死にもつながりますよ」と諭しても、「それをなんとかするのが君たちの仕事だろう」と取り合わない。
多くの危機の原因は、このような経営者の危機管理行動の認識・在り方に存在するという点をリアルに描いている。
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