博報堂・長谷部守彦氏が語る映像クリエイティブ「フィルムこそが、王道コンテンツ!」

【第1回目】「電通・菅野薫が語る映像クリエイティブ「統合キャンペーンの時代だからこそクラフトマンシップが必要」」はこちら

ACCの協力のもと第一線で活躍するクリエイターに、映像クリエイティブについて深掘りした話を伺う短期シリーズ企画。第2回目は、2015年カンヌライオンズ・フィルム部門審査員の長谷部守彦氏(博報堂/エグゼクティブクリエイティブディレクター)に話を聞きました。

———カンヌライオンズでの審査、お疲れさまでした!受賞作品の個別レビューに関しては、きっとアドタイに出ているであろう他記事にお任せするとして、長谷部さんには、審査を通じての純粋な感想、そして世界の映像クリエイティブ全体の潮流を、お聞きしたいと思っております。
さて、カンヌライオンズといえば、かつては“フィルムが王道“という時期がありましたよね。しかしながら、ここしばらくはチタニウム部門や、サイバー部門、PR部門に注目が集まり、フィルム部門の影が少し薄くなっていた印象を感じていたのですが…。

確かに一時期、「CM離れ」とか、「フィルムは古い」と言われていた時期はありました。しかし、カンヌ広告祭自体が1954年、フィルム部門から始まったこともあって、フィルム部門の審査員達は皆、独特のプライドを持って審査に当たっています。

そして、今年のフィルム部門の審査員達は、すごく良いチームでしたね。作品に忠実に、フェアにということを重要視し、未来の指針となる審査をしようという空気に満ちていました。

そして、僕自身、今年の審査を通じて「フィルムこそが、伝統的かつ、最新の王道コンテンツだ」と、確信するに至りました。

———おお、そうなんですね。具体的にはどういった点で?

デジタル化により、テレビメディアの力は確かに弱まったかもしれません。でも、今現在、オンライン上で最も観られ、シェアされているコンテンツは何なのかというと、それは結局のところ「フィルム(映像)」なんじゃないかと。

人々が、タイムライン上に気軽に動画をシェアできるデジタル環境が整った現在こそ、「フィルム」が、オンラインも含めて最も流通される王道のコンテンツなのだと。

———確かに。通信環境が進化して、Facebookのタイムライン上で動画がストレスなく観れるようになったのも、ここ1~2年ですもんね。「フィルムの逆襲」の時代が来ている、と。しかし、作り手側に求められることは、これまでとは変わりますよね。

その通りです。

例えば、プレロールアド、いわゆるYouTubeの一番頭に強制的に5秒くらい出てくるCMですね。本来、もっとも視聴者に嫌がられ、基本はスキップしていくことを前提にせざるを得ないという過酷なメディアです。

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