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コラム

CSR視点で広報を考える

経営者トップの陰謀!化けの皮が剥がされたとき企業はどうなる?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(4)

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【前回のコラム】「あなたの会社がもしも、スキャンダルに直面したらどうしますか?~『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(3)」はこちら

『リスクの神様』第4話では、サンライズ物産グループ企業「波丘樹脂」の製造工場で火災事故が発生する。「危機はチャンス」と言ってはばからない社長の塚原は、西行寺と同様、危機対策のプロの異名を持つ人物で、派遣された危機対策室メンバーも出る幕はなく、その対処はあたかも完璧であったかに見えた。しかし、西行寺(堤真一)だけは、塚原のその手際の良さとは裏腹に何か不自然なにおいを嗅ぎつけていた。

このコラムでは、毎回の放送後に『リスクの神様』の見どころや危機管理と広報の教訓、キーポイントなどを本ドラマの監修者で危機管理の専門家としての筆者の目線から解説していく。

第4話のあらすじ

サンライズ物産のグループ企業「波丘樹脂」の工業薬品倉庫で火災が発生し、西行寺(堤真一)とかおり(戸田恵梨香)、結城(森田剛)らは現地に向かった。一方、現場で西行寺らを出迎えた波丘樹脂社長の塚原(浅野和之)は、薬品に関する専門知識が必要であることを理由に、マスコミ対応を含めた対応について全て自分たちに任せてほしいと告げる。

現場検証の結果、出火原因はタバコの火の不始末であることが判明。倉庫近くの河川へ薬品が流出した可能性もあるとして、塚原は倉庫内の薬品に関するデータはすべて公表し、川の水が流れ込む湾内の漁業停止や遊泳禁止のほか、水質検査の実施も行うと発表する。

そんな中、西行寺らは、遊泳禁止のはずの波丘湾で泳いでいた子どものひとりが浜辺で倒れているのを発見し病院に運ぶ。海岸には、貝や魚を焼いて食べた後も残っていた。西行寺は念のため、市の保健所にこの貝の食べ後の検査を依頼するが–。

第4話の教訓—「早期解決」の落とし穴

第4話では、あたかもこれが「危機対策のお手本」とも言える塚原社長の危機対応の連続技をまざまざと見せられることになる。

このコラムでも何度か紹介しているが、不祥事発覚後の手順は、事実確認、原因究明、是正措置、責任表明、再発防止策であり、どの手順も疎かにすることができない。それを見透かすように社長の塚原は、経営トップの早期記者会見を通じて危機対策の王道を見事にやってのけた。

事実関係、原因究明の結果、責任問題、安全対策さらには未発表の工業薬品の流出の可能性を含めて疑念のない配布資料を準備し、マスコミの欲する情報・データを詳細に提供することで、一気に危機的事態を収束させる。

西行寺は、この塚原社長の類を見ない「早期解決」の手腕の裏に何か不自然さを感じ始めていた。西行寺は、この時点で恐らく、塚原社長が「危機管理」の概念を巧みに悪用し、ステークホルダーを誤導させている、と気がついていたはずだ。

筆者の知るこの種の経営者は、不祥事が発生すると、社長と担当の取締役が速やかに記者会見に登場し、社長の口から「私の管理能力のなさでこのような事態を招いてしまった。私の役割はこの会社のために再発防止など、できることをしっかりとやることだ。本当に申し訳ない」と説明し、その間ひたすら担当の取締役は頭を垂れている。

さらに、この種の経営者の語る「危機管理」とは、不祥事の発覚に連鎖して、直後に発生する最大瞬間風速で吹き荒れるステークホルダーからの攻撃をかわす術と認識しており、ゲリラ的な攻撃が収まれば、危機は去ったと理解し、危機の事後対策はおろか再発防止のための水平展開なども無視するなど、他の専門家の助言にも聞く耳を持たない危険な考えにとらわれている。

こうした背景のもと、危機への対応は表面的で、内部統制システムは有効性の観点からすでに形骸化していると考えざるを得ない。これまで「企業風土化」「組織の関与」と評価されてしまった多くの不祥事事件は、このような原因から生まれている。

内部統制システムが適切に働かず、結果として消費者をだますような行為があっては、消費者庁や株式を上場している市場も見過ごすわけにはいかない。社内の調査組織がすでに機能していない状況下においては、第三者機関による調査の実施を余儀なくされることになるだろう。そして、多くのステークホルダーは、本来、自ら宣誓し社会的責任を果たすべき企業トップが不誠実な対応を導いた責任を重いと考えるはずだ。

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