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ヤングカンヌPR部門 日本代表への道「審査員はココに惚れる!」ポイント伝授します

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左から、ヤングカンヌPR部門の2016年日本代表選考審査委員長の嶋浩一郎さん(博報堂ケトル)と、同審査員の井口理さん(電通パブリックリレーションズ)

毎年6月にフランス・カンヌで開催される「カンヌライオンズ」にむけて、早くも選考レースが始まる。カンヌライオンズ内で実施される、ヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)の日本代表を決める戦いだ。

ヤングカンヌは、2人から成る各国の代表チームが、カンヌ現地で与えられた課題に対し、24 時間で作品を提出するコンペティションで、デザイン部門/プリント部門/サイバー部門/PR 部門/フィルム部門/メディア部門/マーケターズ部門の7部門がある(日本代表選考は、マーケターズ部門を除く)。昨年まで、28歳以下が対象であったが、今年から30歳以下に対象年齢が引き上げられた。

世界中の若手プランナー・クリエイターにとって、大きな登竜門であるヤングカンヌ。1995年の発足以降、日本代表は2007年にサイバー部門で初入賞。2013年に、フィルムとデザイン部門でブロンズを獲得し、2014年のPRとプリント部門で初めてゴールドに輝いた。受賞はこの5回だ。いったい、どうすれば世界で高い評価を得られるのだろう。そもそも、日本代表になるには、どうしたらいいのだろう。

そこで今回は、ヤングカンヌのPR部門をテーマに日本代表への道、そして世界で戦い抜くための必須スキルについて、ヤングカンヌPR部門の2016年日本代表選考審査委員長の嶋浩一郎さん(博報堂ケトル)と、同審査員の井口理さん(電通パブリックリレーションズ)に話を聞いた。

今年は30歳までチャンスあり! 応募締め切りは3月11日

井口理さん、以下、井口:ヤングカンヌPR部門、2016年日本代表選考の応募要項が公表されました。今年は、制限年齢が30歳以下に引き上げられたので、さらにチャレンジできる層が増えて喜ばしいですね。

嶋浩一郎さん、以下、嶋:「戦場臭」のある人が世界で戦えるチャンスですよね。すごく期待しています。ちなみに「戦場臭」っていうのはよく電通の岸勇希さんと話すキーワードで、やっぱり戦いの最前線にいる人のセンスが一番だと思うんです。

井口:ヤングカンヌに行くには、まず日本代表選考戦を勝ち抜かないとです。昨年は「#SaveKidsLives: Stop Drinking and Driving」という課題に対して128件の応募があり、1次の企画審査と、英語プレゼンの2次審査を経て、最終的に石川達也さん・村石健太郎さんのペアが選ばれました。二人はフリーランスでPR専業ではなかったですが、そのセンスはとてもPR的で、遺憾なく力が発揮されたチームだと思います。

嶋:そもそも、今の時代のコミュニケーションプランニングは、デジタルとPRは必須アイテムですよ。PR視点やPR要素のないプランニングなんて考えられない。そういう観点から言うと、必ずしもPR会社やPR部門に所属してなくても、PR関連業務に携わっている人は多いはずです。

井口:PR会社や広告会社、制作会社などの所属企業の垣根を越えて、我こそは! と思う人たちに、ぜひチャレンジしてほしいですよね。応募締め切りは3月11日なので、その日までに30歳以下のチームを作って、どしどしエントリーしてください!

嶋:お待ちしています! じゃあ今日は、そんな意欲的な若者に向けて、PR部門で審査員の好印象・高評価を獲得するためのヒントをお話ししちゃいましょうか。

井口:題して、PR部門審査員はココに惚れる! いかがでしょ。

課題設定に鋭い洞察力を!

嶋:これは何度でも言っておきたいのですが、「PR」って、世の中に議論を投げかけて、納得させて、ひとつの新しい「合意」を生み出していくことであって、パブリシティを獲ることじゃないですよね。パブリシティはあくまで手段にすぎない。

井口:PRの成果は3ステップに分けて考えることができますよね。一つ目は認知の獲得(Awareness)、次が意識の変化(Perception Change)、そして行動の変化(Behavior Change)。

嶋:態度変容まで起こせれば最高! そのためには、課題に対する、着眼点が命だと思います。「なるほど!」と、こちらが思わずうなずいてしまうような、鋭い洞察力で問題を捉えてほしい。

井口:昨年の日本代表選考に出した課題「#SaveKidsLives: Stop Drinking and Driving」では、物理的にお酒を飲ませない工夫、あるいは人々の意識啓発、飲酒運転防止のためのテクノロジー導入など、いろいろな視点から解決方法を見いだしていました。また、ターゲット設定もドライバー、子ども、アルコール販売店とさまざま出てきていて、問題をどう捉えるかの最初の視点で各自のアイデアが光りました。正解はひとつじゃないけど、もっとも納得感があって、さらにクリエイティブな解決方法にうまくブリッジしたプランが高く評価されたと思います。

嶋:例えば、「フードロス」という課題が出たとします。フードロスの原因は多岐にわたるわけですが、メディアでは、流通による大量廃棄という側面がよく報道されています。だからその課題解決プランとして、流通へのアプローチを考えがちですよね。

でも、本当に畑でとれる野菜はもっとさまざまな形をしているのに、流通に乗る野菜はまっすぐに形のいいものだったりする。そうすると、野菜っていうのはそういう形なんだって思ってしまっている人たちもたくさんいる。実は、野菜の形はもっと多様なんだってことを気づかせたら、なにかフードロス削減に寄与できる変化が起きるかもしれない。そういう「なるほどそう来たか」的な課題へのアプローチを見つけてほしいんですよね。そこがとてもカンヌ的。

井口:さらに、そういった意識の生活者がいるっていうことを、きちんとデータを揃えて、ファクトとして見せられると一番いいですね。PR部門の審査員はファクトが大好きですから(笑)。

嶋浩一郎 氏

嶋:PRはファクトありき、ですからね。あまり知られていない、ある事実を「発見」し、その「事実」に基づいて、共感を呼ぶ「ストーリー」を紡ぐ。それがPRパーソンの醍醐味というか、腕の見せどころです。去年の課題でも、実は発展途上国のほうが酔っぱらい運転が多いってデータを持ってきた人がいましたよね。

井口:カンヌライオンズの本選もそうですよね。例えば昨年、PRをはじめとする複数部門でグランプリを受賞したAlways(P&Gの生理用品ブランド)の「#LikeAGirl」は、「女性らしさ」は生まれつきなのではなく、後天的に社会に教えられるものであるということを「発見」し、「ファクト」を使ってストーリーテリングした、とても素晴らしいキャンペーンでした。

嶋:ファクトがあるからこそ、説得力があり、第三者であるメディアも記事にしてくれますからね。課題に対する目の付けどころの感度を、若いうちからヤングカンヌで鍛えていると、ひいては本選にもつながるわけです!

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