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「広告商品の改善はデジタルメディアの死活問題」急成長メディアQuartz発行人が語る<前篇>

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150年の歴史を持つ米国のオピニオン誌『The Atlantic』を発行するアトランティックメディア社。同社が2012年に開始したビジネスメディア『Quartz(クオーツ)』は、立ち上げから10カ月でUU数500万人を突破するなど、その躍進ぶりがデジタルメディア界の注目を集めてきた。マネタイズに課題を抱えるデジタルメディアも少なくない中、クオーツはいかにして独自のポジションを築き、それをビジネス上の成功につなげているのか。発行人のジェイ・ローフ(Jay Lauf)氏に話を聞いた。

—2015年の売上は前年比185%増を達成したと聞く。収益増の最大の理由は何だと考えているか。

今年に入って、すでに前年同期比122%を達成しており、成長は相変わらず加速している。非上場企業なので数値を出すことはできないが、きわめて黒字に近い状態にまで来たと言える。

成長の理由はいくつかある。まず、認知度の向上だ。クオーツは、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカとグローバルで1500万人に読まれており、マーケターをはじめ、幅広い人に知られるメディアとなった。第三者の調査機関によれば、大手ビジネス誌よりも多くの読者を抱えているとも言われている。

そして、成長の最も大きな要因となっているのが、我々の広告モデルだ。現在、160社にのぼる広告主と取引をしており、そのうちの実に90%が、継続的に出稿する意向を示している。そうして、毎年、出稿企業数・出稿金額とも成長を維持してきた。

—開設当初から読者層に変化はあるか。また変化があるとすれば、それに合わせて、クオーツが変化したこと、または変化すべきと考えていることは何か。

創刊から4年間、読者層はそれほど大きな変化はない。企業における決裁権者、役員の割合が高いことが特徴と言える。また、近年は女性読者の割合が高まっている。立ち上げ当初は男性が7割を占めていたが、現在の男女比は5対5。ビジネスの現場における女性の躍進が背景にあると考えている。また、45%が米国以外の読者が占めている。

また、のちほど話に出ると思うが、iOS版アプリと、データビジュアライゼーションプラットフォーム「Atlas」(クオーツが過去に制作したチャートを検索・ダウンロードできる)も、60%以上が米国以外の国のユーザーが占めている。こうしたグローバルへの展開が、ここ数年で最も大きな変化と言えるかもしれない。中南米の国々をはじめ、まだ開拓できていない地域についても、時間をかけてアプローチしていきたいと思っている。

あらゆる領域で、モバイルシフトの重要性が叫ばれているが、クオーツは2012年の立ち上げ当初からモバイルファーストを念頭に置いてビジネスを成長させてきた。現在は、約6割のユーザーがモバイル経由で閲覧している。モバイル上のユーザー行動に対する深い理解に基づいて、あらゆるコンテンツ、プラットフォームをつくることができる。そのことが、我々の成長を支えていると言えるだろう。

—読者とのエンゲージメントをどのように強化しているのか?信頼され、支持されるメディアであり続けるためにどんな取り組みをしているのか。

私たちがいる場所に読者を無理やり連れてくるのではなく、読者がいる場所に私たちのほうから会いに行く。これが、クオーツが大事にしている信念だ。FacebookやTwitter、LINE…読者が存在する場所に合わせて、私たちが持っているコンテンツを出し分ける。そうすることで、読者との信頼関係を築いてきた。

また私たちは、デザインやユーザーエクスペリエンス(UX)の発想を非常に重視している。サイトにアクセスしてもらえれば分かると思うが、クオーツが提供するユーザー体験は、とても「クリーン」なものだ。読者の閲覧行動を阻害する広告は表示しないし、近年増えている動画広告の自動再生も行わない。読者と深い関係性を築くために必要なのは、PC/モバイルとデバイスを問わず、質の高い体験を提供することに尽きると考えている。体験を重視しているので、UX設計は外部企業に委託せず、すべて自社内で行っている。

そして、質の高いジャーナリズムに基づく優良なコンテンツが、読者との信頼関係を築く上で重要であることは言うまでもないことだ。クオーツの編集者の多くが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『エコノミスト』、『ニューヨークタイムズ』といったビジネス誌で編集者としての経験を積んだ人材だ。

次ページ 「読者に支持される広告は「デザイン」「UX」の発想でつくれる」へ続く