読者に支持される広告は「デザイン」「UX」の発想でつくれる
—クオーツはどのように読者の声を聞き、それを記事や、自社のサービスに落とし込んでいるのか?
読者の意見を基にコンテンツをつくることはしていないが、読者が記事に対する意見や感想を自由に書き込めるコメント欄「Annotation(アノテーション:注釈)」を設けている。通常、読者のコメント欄は記事の最下部に設置されることが多いが、それでは他の読者の目に触れにくく、有用な議論が行われにくい。日本の状況はわからないが、アメリカではしばしば、記事下のコメント欄で無意味な“炎上”が繰り広げられている。
Annotationは、記事の特定の箇所(パラグラフ)を指定して、コメントを書き込むことができるスタイルで、コメントは記事の横に表示される。コントロール不可能な炎上を招くのではなく、コンテンツを媒介にした議論を活性化させたいと考えてのことだ。また、質の高いインタラクションを担保するため、投稿権限は登録会員(無料)のみに限定している。
こうした設計は、読者からも非常に好評で、SNSでは、幸いにもクオーツに対する数々の好意的なコメントが見られる。特徴的なのは、記事コンテンツだけではなく、クオーツに掲載されている広告に対しても、好意的な声が多く聞かれることだ。「クオーツの広告はいいね。クオーツのために、アドブロックを解除したよ」とTwitterでコメントしている人さえいる。
クオーツでは、編集記事と同様に広告も、情報・ストーリーの一部として読者に受け入れられている。閲覧ページをスクロールすると、スポンサードコンテンツ(ネイティブアド)を読んでいても、その下には通常記事を含む関連コンテンツが次々と表示される仕組みになっている。これにより、読者の興味関心に合った文脈の中で、広告を表示することができるようになるのだ。こうしたスポンサードコンテンツは、一般的なバナー広告よりも多くのユーザーに見られているというデータもあり、クオーツの最大の収入源になっている。
—ネイティブアドの制作には、編集者は関与しないと聞いた。ネイティブアドの質を担保するために、どのような工夫をしているのか。
確かに、社内の編集者、ジャーナリストはスポンサードコンテンツの制作に関与しない。編集コンテンツと広告コンテンツの明確なすみわけは、ジャーナリスト(編集者)にとって非常に重要なことだと考えているからだ。
とは言え、制作にあたっては、編集者からのアドバイスは欠かせない。例えば、チャート(図版)を効果的に使うなど記事内容ビジュアライズすると、記事がソーシャルメディアでシェアされやすいといったこと。立ち上げ当初、チャートを使ったネイティブアドは全体の半数程度だったが、現在では、できる限りチャートを入れるようクライアントにアドバイスしている。
編集者だけでなく、高い専門性を持つライター、リサーチャー、デザイナー、エンジニア、ディベロッパーから構成される15~20人のチームが、見た目に美しく、かつ効果の高いスポンサードコンテンツの制作をサポートしている。クオーツに掲載されるネイティブアドのうち85%がこのチームによって制作され、2割弱がクライアント(およびエージェンシー)の手によって制作されたものだ。
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