ポケモンGOと過去の位置情報アプリとの違い
スマートフォンのようなモバイル端末は、人々が世界を移動しながら使うパーソナルアイテムです。そこには必然的に、GPS機能による位置情報が記録されていきます。
人のリアルな位置情報はデジタルマーケティングでも注目される分野です。ただ、ビーコン端末やNFCを使った、リアル店舗でのオムニチャネル連携やジオマーケティングというのは、なかなか難しいものがあります。
古くは位置情報のチェックイン系のアプリとして「Foursquare(フォースクエア)」や「Gowalla(ゴワラ)」が有名でしたが、いまは外食や観光といった分野のアプリの一部の機能として吸収されてしまいましたし、Facebookでも積極的に活用されているようには思えません。
かつてニューバランスでも位置情報のゲームアプリである「MyTown」とタイアップをしたことがあり、そのときは店舗だけでなく屋外広告もチェックイン場所として設定したのですが、なかなか継続できるモデルにはなり得ませんでした。
そこに今回、ポケモンGOのような位置情報ゲームアプリがあっという間に人々の話題にのぼって、ブームになったことは衝撃でした。これまで似たような位置情報を活用したゲームはなかったわけではありませんが、あれほど短期間に人々の手に広がり、行動を変えることはなかったからです。日本ではいち早くマクドナルドがタイアップして、店舗をアイテムが手に入る「ポケストップ」とするなど、マーケティング上でも注目を集めています。
ポケモンGOは、位置情報を活かしたかつてのデジタルツールとは違って、ユーザーの生活を大きく変えたという点で、マーケターには無視できないエポックメイキングな出来事だと思います。
ポケモンGOはメディアから可処分時間を奪う
ローンチから数週間して落ち着いてきたとはいえ、ポケモンGOがまず奪ったのはユーザーの可処分時間です。このコラムでも取り上げたことがありますが、スマートフォンはパーソナルアイテムだからこそ、仕事でデスクに向かうなどの時間よりも、寝る前や移動時間などの可処分時間をどう奪うかがカギになってきます。
ポケモンGOは、モバイルユーザーのソーシャルメディアや他のメディアの接触時間を奪っていることが明らかになっています。しかも、通常なら家でゆっくりとテレビを見ているような時間でも外にポケモンを探しに行くとなると、そのようなスクリーンの接触時間も奪うことになり、スマートフォンを使う時間自体が結果的に増えていくはずです。
これは他のメディアにとっては由々しき事態です。ポケモンGOの熱狂が冷めることをメディアは願っているでしょうが、このことによって「強いモバイルアプリ」がメディアよりも強力に顧客の時間を短期間に奪っていくという姿が見えたのです。
このことは、機会とも脅威とも捉えられる事態だったと言えるでしょう。
短期間でも熱狂を作り出すことがマーケティング目標になるとすれば、マーケターとしては、テレビや他のメディアに出稿するよりも、ポケモンGOのようなモバイルアプリの方が有効だと気付いたはずだからです。
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