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革新的なブランドはどうすれば生まれるのか― 獺祭×スープストックトーキョー社長対談

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「宣伝会議サミット2016」が11月17日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催され、マーケティング担当者の課題解決に役立つ最新事例や手法を紹介する講演が行われた。本記事では注目企業のキーパーソンによって行われた講演の一部をレポートする。


講演者

  • 旭酒造 会長 桜井博志氏
  • スープストックトーキョー 取締役社長 松尾真継氏

「宣伝サミット2016」のオープニングでは、旭酒造の桜井博志会長とスープストックトーキョーの松尾真継社長が対談。桜井会長は山口県山間の小さな酒造を継いだ後、「純米大吟醸」への製造特化や、杜氏制度を廃止するなど常識破りの変革と革新で日本酒ブランド「獺祭」を生み出し、今ではニューヨーク、パリなど世界17カ国で愛飲されているまでに育て上げた。

一方、スープストックトーキョーというブランドは、三菱商事の社員だった遠山正道氏が起案した企画書「スープのある一日」から始まった。2年後「スープストックトーキョー」1号店を出店。翌年三菱商事ベンチャーとしてスマイルズを設立、遠山氏が社長に就任。以降遠山氏のカリスマ的経営手腕によって成長。今年スープトックトーキョーを分社化し、遠山氏の懐刀と呼ばれていた松尾氏が社長に就任した。分野は異なるが、いわば革新的なブランドの創成者と継承者の対談となった。

社会に必要とされなければ企業の存在理由はない

—お二方とも、事業展開や経営においてマーケティング的な手法を特に取り入れてはいないと聞いておりますが。

旭酒造
会長
桜井博志氏

桜井:マーケティングに否定的な考えを持っているわけではないのです。ただ、この写真をご覧ください。パリの凱旋門近くにある店で獺祭を愉しんでいる方の写真です。まさにこの笑顔がすべてなのです。お客さまが笑顔になる、幸せな気持ちなるものをお届けすれば、また飲んでくれる。日本の市場の何パーセントを獲得しようとか、海外でのシェアを倍増しようとか、私どもはそういうことを目的にしてブランドを展開していません。お客さまに幸せな時間を過ごしてもらって、結果対価をいただく、そういう考えを徹しております。だから、極端に聞こえるかもしれませんが、社会から必要とされなければ、企業は消えていくべき だと思っています。

スープストックトーキョー
取締役社長
松尾真継氏

松尾:私どもの会社でもマーケティングという言葉は使いません。先日、ある記者の方に、「大手コンビニがスープ事業に乗り出すそうで、今後のシェア競争についてどう思われますか」と聞かれたのですが、そんなことは意識したこともありません。結局、その企業が何を実現したいのかが最も大事なところで、桜井さんが言う通り、社会が必要とするサービス・製品を提供して、社会から価値があると共感していただけなければ、私も意味がないと思います。

私どもの理念は明確で、「世の中の体温を上げる」です。お客さまに美味しい温かいスープを食べてもらって体を温かくしてもらうという意味も含まれますが、例えば仕事のミスで落ち込んでいたとき、笑顔の接客や一所懸命に働くバイトさんを見て元気をもらったとか、私どものブランドに触れていただき一人ひとりの心が温まることで、社会全体の体温を上げたい、そのために事業を展開しています。

次ページ 「社員のモチベーションを高めるのはお客さまのブランドへの共感」へ続く