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データを「集めて」「グラフにする」ことはできるけれど、そこからどうしたらよいですか?

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蛭川速

データ分析をストーリーで学ぶ書籍『社内外に眠るデータをどう生かすか ~データに意味を見出す着眼点~』が発売になりました。今回は、発売を記念して、本書のストーリーを少しだけアドタイで公開していきたいと思います。日々、データに向き合い、企画やプレゼンを行っている方は、主人公の遼平に共感しながらお楽しみください。

営業からはじめてのマーケティングへ

老舗の洋菓子メーカー「みなとや」のスーパー営業パーソンとして鳴らした仁科遼平は、緊張の面持ちで通勤中の電車内でつり革を掴んでいた。なぜ自分がマーケティング課へ異動なのだろうか。しかも、課長として異動。これまでの営業実績が評価されての栄転に嬉しい気持ちは確かにあるが、内示を受けたマーケティング課長のポジションにはやはり驚きを隠せなかった。

これまでの社会人人生を振り返っても、経験と勘に基づいた行動しかとっていない。マーケティングは論理的に物事を整理して合理的に意思決定するというイメージで、自分のこれまでのビジネススタイルとは正反対に属する仕事の進め方になる。しかもマーケティングのマの字も知らないズブの素人だ。

疑問の残る配置転換に対する不安はあるものの、チャレンジ精神の旺盛な遼平は意気揚々としていた。「何だか分からないものに立ち向かう時の高揚感というか、アドベンチャー的な取り組みはワクワクする」。遼平のそんな意識を見越しての異動だったのかもしれないとひとり考えているところで、電車は、みなとや本社のある茅場町駅に到着した。

みなとやは戦後、物資が不足している中で、黒糖を使ったキャラメル菓子に着目し一世を風靡した洋菓子店を発祥とする。創業者である南戸介司が一代で創り上げた中堅企業だ。介司のトップダウンの経営スタイルが組織と人に浸透している。

伝統を重んじる社風を維持しつつ2016年度には売上高200億円、従業員が1000名を超える今も、経営者の勘と経験に基づいた典型的なオーナー企業経営だ。介司の孫娘である陽子が社長になっても組織風土は簡単には変わらないだろうというのが社員の評価である。

陽子は遼平よりも一回り年上の48歳。大学卒業後、大手電機メーカーを経て経営コンサルティング会社へ転身。パートナーの職まで上り詰めたそんな時、みなとや経営者である父正人からの三顧の礼をもって昨年から取締役として勤務していた。

この4月から3代目社長に就任している。陽子は社内の硬直化した組織を打破しようと様々な改革を計画している。その一環として、仁科遼平の柔軟な発想力を活かしたこれまでにない新事業の展開を期待していた。

次ページ 「データをもとにした事業推進!?」へ続く