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評価されるPR施策には、アイデアからストラテジーまで一貫したストーリーがある

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PRアワードグランプリの募集締め切り(10月26日)が迫ってきた。今年の審査員はどんなエントリーを期待し評価するのか。

昨年に引き続き審査員を務めるサニーサイドアップ 取締役CBOの松本理永氏、ジャーナリストでメディアコラボ代表の古田大輔氏に昨年の審査会の様子を振り返ってもらいながら、今年のアワードの展望について語ってもらった。

「PRってすごいな」と思わせる、未来への拡張性に期待

古田:昨年、初めて審査員を務めました。お声がけいただいた時には場違いではないかと思ったのですが、審査員長の井口理さんから「ジャーナリズムとPRは情報を伝える点では同じだし、同時に全く違うバックグラウンドの視点を持ち込んでほしい」と言われました。なるほどと審査団に入ったのですが、ものすごく勉強になりました。

パブリックとの関係性を変えていく、人々の認識を変え、行動を変えていくことに対する戦略の立て方、どう実現していくかということについて、目から鱗でした。僕は新聞社とインターネットメディアで社会課題を報じてきましたが、問題提起の次、どう解決していくのかということには、なかなか踏み込めていなかったと改めて思いました。

松本:私もずっと、「たのしいさわぎをおこしたい」をミッションとして会社をやってきているので、この2年間、PRアワードの審査員をやらせていただいて、とても勉強になりましたね。

古田:昨年の受賞事例の中で特に感銘を受けたのは、パンテーンの「#この髪どうしてダメですか」でした。資料に、僕が編集長を務めていたBuzzFeedの記事が添付されていました。いわゆるブラック校則–地毛が赤い人が、学校に地毛証明書を提出させられ、わざわざ黒く染めなければならない、そんな校則があっていいのかという問題提起の記事です。

 

そこからパンテーンは「自分らしく」という価値観を打ち出し、ポジティブなメッセージで世の中の人たちの認識、行動を変え、それを見た人たちはパンテーンのことが好きになる──。「ここがダメ」なのではなく、「こっちのほうがいいんじゃない?」ということを自然に伝える戦略をやり切っているところに感銘を受けました。

松本:審査員の高評価を得られる事例は、戦略を立てるところから最後のアウトプットまで一貫した流れがあります。無理やりつくった感じではなく、こういう課題の発見があって、こういう思いがあって、こういう巻き込みがあって、ちゃんと世の中が変わっていったなというところがしっかりある。ああ、いいPRというものは本当に全部がうまく、きれいに流れていくものだな、と実感しました。

特に昨年は、「今、100点の結果が出ていなかったとしても、これから大きなうねりになるであろう」という流れが見えるものや、PRを仕事にしている人や、志している人たちにとって「PRの力ってすごいな」と思えるような、未来を感じさせるようなものを選ぼうという話になりましたね。個人的にもそれは嬉しいことでしたし、そうした審査員長の方向性には大いに共感しました。

古田:「将来的な拡張性」ですね。拡がりを感じさせるものとしては、グランプリを受賞した大阪府住宅供給公社の「住民との共創で衰退していた団地の未来を変えていく『茶山台団地再生プロジェクト』」です。団地の問題は大阪だけでなく日本中にある。そこに住んでいる人たちのやる気やカルチャーをちゃんと醸成し、入居者が増えていく。同じことをやれば、日本中の団地がどんどん良くなっていくと思わせます。しかもそれを、一瞬の勝負ではなく、いろんな人と関係を構築し、変化を生み出していく。PRの力を感じさせられました。

完遂していない、途中経過のプロジェクトでもOK

松本:パブリックリレーションズはすごく広い概念ですし、その手法はさまざまに変わってきていますね。それでも審査においては、人々を巻き込んで変えていくという点でPRアワードに値するかどうか、と評価しながら見ていった感はあります。

古田:審査はすごく面白くて、皆さんの言っていることをメモにとっていたくらいです(笑)。

たとえば、博報堂 統合プラニング局 チームリーダーの永渕雄也さんがおっしゃっていたのは「パブリックリレーションズのs、つまり『ズ』が大切」ということでした。団地プロジェクトは「こういうことをやっています」という情報を伝える相手はまだそこに住んでいない人で、今後そこに入居したいと思う人を増やしていくキャンペーンです。でも、そのパワーを生み出すためには、今住んでいる人たちの関係性をきちんと構築しなければいけない。それが両方できている。リレーションズのつくり方が美しい。

松本:先ほど出た「未来」の話ですが、昨年も応募の時点で完遂していないプロジェクトがエントリーされていましたけれど、今年はおそらく、そういったプロジェクトの応募が多くなるのではないかと思っています。もしかしたら数カ月間ストップしている部分があるプロジェクトも、途中経過であっても、今年はここまでやり切ったというようなものがあればぜひ、躊躇せずにご応募いただきたいですね。コミュニケーションというものは絶対になくならないし、人が人に影響を与え、何か気持ちが動いていくということ、その結果掲載に結び付いたり世の中が動いたりするという意味では、PRの役割は、どんなことが起きてもなくならないと思うのです。

古田:今、世の中大変で、いろんな人たちがダメージを受けている。だからこそ視点を変え、認識を変え、行動変容を促すものは、強いメッセージ性や力を持つ可能性があると思います。直接的にコロナに関係するものも出てくるだろうし、それとは全然関係ないけれど、人のつながりを感じさせるようなものも出てくるのではないかと。

報道をしていくうえでも、コロナの現状を伝えるので手一杯になって、皆さんの生活にプラスになるような、参考になるような情報を提供することがなかなか追いつかない状況が続きました。そんな中で、PRの力で認識や行動変容を生んだ実例を見たいと思っているんです。

松本:そもそも、メディアの在り方やメディアに接する人の在り方が変わるだろうと再三言われてきたけれど、その変化はPR業に直結するものと思っていました。それがまさにコロナの影響で、その変化が加速したり、違う方向に変化したり、メディアの在り方も、発せられた情報の受け止め方も感じ方も変わる。そんなふうに価値観が変わっているところに、じゃあどんなふうに最後のアウトプットまできれいにやり切るかといったら、その戦略、やり方は変わらないけれども、考え方はすごく変わるだろうなという実感があるんです。

次ページ 「PRのプロなら、エントリーシートも魅力的に書けるはず」へ続く