マーケティングの4Pすべてが流動化する時代の広告ビジネス(前篇) 安藤元博×音部大輔

MMMだけでは、未来のあるべき姿に向けたアクションは見てこない?

音部:安藤さんのご著書を読みながら、安藤さんは広告業界の立場からマーケティングの全体最適にいかに貢献できるかを考えていらっしゃると思いました。

「メディアごとにプラニング/バイイングと運用がばらばらに行われるため、全体最適での広告運用ができない。」(P40)

「「いま真に求められているのは、個別のルーツではなく、テレビやデジタルなど広告メディア全体を統合した対応、さらにはマーケティング活動全体の事業成果に貢献するプラニングと実行なのではないでしょうか。」(P41)

といった記述のあたり、私自身の課題感と近しいものがあると感じました。

また、第5章ではMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)について言及されていますが、マーケティング活動の効果をいきなり売上に設定してしまうと、MMMを使っても結果に至るプロセスがブラックボックスになってしまいがち。その途中の課程を設計し、結果を把握して、検証しつつ改善していきましょう、といった改善を促すことも「パーセプションフロー・モデル」の効用であると考えました。

安藤:音部さんの「パーセプションフロー・モデル」は“どう売れるか?”ではなく、消費者に“どう受け止められるか?”を起点に考えられたものですよね。そして受け止められ、消費者の心のなかに変化が起きる各過程を設計していかなければ、全体最適は実現しえないというお話だと思います。

それでは、各過程で想定したような態度変容を起こすことができたのか?それを広告活動におけるKPIに落とし込んで把握できるようにしているのが、AaaSではないかと考えています。

音部さんがおっしゃるように本著のなかでは、MMMについても触れました。AaaSにも「Analytics AaaS」というモジュールというかレイヤーを入れていますし、MMMは有効かつ重要な手段であると考えています。しかし、大切なのは数字を解析して見えることは、「何をすることによって何が起きるか?」がわかるだけであるということ。あくまでそこで得られるものは、戦略そのものではなく戦略立案のガイドにすぎないですよね。

そして、このガイドだけからでは、戦略実現のためどのような目標を持って何をどう管理すればよいのか、は導き出すことはできません。一方で、この部分を明確にしてくれるのが「パーセプションフロー・モデル」だと思います。未来のあるべき姿に向けて、広告活動で何をすべきか?どんな目標を設定すればよいのか、それを導き出してくれるものだと思います。

音部:MMMで扱うデータはすべて過去のことですからね。その意味で、MMMは「パーセプションフロー・モデル」と比較した意味で言うと、カスタマージャーニー・マップ的だと思います。カスタマージャーニー・マップは現状の消費者の購入に至るプロセスを明らかにし、そのプロセス、つまりは現状に近づけようとすることで、マーケティング活動の効率化を図ろうとする思想ではないかと思います。

一方で「パーセプションフロー・モデル」は現状を尊重しつつ、必要な消費者に新しいベネフィットや行動様式を提案し、市場創造を促していくもの。安藤さんは私の著書を正確に読み取って適切に抽出をしていただけていて嬉しいです。

安藤:MMMもカスタマージャーニー・マップも現状を可視化はしてくれますが、それだけをガイドにしてしまうと、現状に近づこうとする行動しか起こりえない。マーケティング活動の効率化にしかつながらない使い方は本質的ではないと思います。

音部:マーケティングの本義は市場創造で、価値の創造につながるべきものだと考えます。
※本記事は、後篇に続きます(後篇記事はこちら

安藤さんに聞いた「The Art of Marketing-マーケティングの技法」のここがおススメ!

「 理論の本であり、実践の本。もはや、実務で実践するしかない1冊 」
 

マーケティングに関しては、数々の理論の書籍が出ていますが、そういった本を読んだ瞬間にマーケティング戦略が立案できるようになるわけではありません。その点で、音部さんの「The Art of Marketing-マーケティングの技法」は、理論の本でありながら、実践のための本でもあるところが秀逸だと思います。

 

決して、奇をてらったことが書かれているわけではない正論中の正論をものすごくシャープに示した上で、かつ自らが携わられた経験にもとづく実践のノウハウ、方法を説いていらっしゃいます。

 

「フレームワークは嫌い」という態度で仕事をしている人が、ちょろっと立ち読みするくらいの感覚で接すると、「なんだ、フレームワークの話か」と思うかもしれない。しかし、音部さんの本は単純なフレームワークを解説したものではありません!

 

音部さんが実践してきたことを単に「真似してください」と投げかけているだけの、よくある単なる事例解説本でもありません。誰もがやらなければならないことを正面から扱った、真に実務に生かせる1冊だと思います。

 

音部さんに聞いた「広告ビジネスは、変われるか?
―テクノロジー・マーケティング・メディアのこれから」のここがおススメ!

「 メディアとコンテンツの分断を乗り越える構想がわかる1冊 」
 

マーケティングの全体最適を実現する設計図ができても、それを実践する段階においてメディアとコンテンツが分断しているという現状に課題意識を持っていたので、安藤さんが本著を通じて提唱するAaaSの概念に、非常に納得感がありました。

 

「パーセプションフロー・モデル」で提唱したマーケティングの全体最適をいかに実践に落とし込んでいけるか。それを考えた際、「パーセプションフロー・モデル」とAaaSは非常に相性が良いものと思います。

 

【プロフィール】

博報堂DYホールディングス 常務執行役員
博報堂 常務執行役員
博報堂DYメディアパートナーズ 常務執行役員
安藤 元博氏

1988年博報堂入社。以来、数多くの企業の事業/商品開発、統合コミュニケーション開発、グローバルブランディングに従事し、 “生活者データ・ドリブン”マーケティングの中核組織を率いてきた。現在、博報堂DYグループのテクノロジー領域を統括する。ACC(グランプリ)、Asian Marketing Effectiveness(Best Integrated Marketing Campaign)他受賞多数。ACCマーケティングエフェクティブネス、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル等の審査員を歴任。著書『マーケティング立国ニッポンへ−デジタル時代、再生のカギはCMO機能』(日経BP社)『デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎』(宣伝会議)ともに共著。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(社会情報学)。

 

定価:1,980円(本体1,800円+税)
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クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役
音部大輔氏

17年間の日米P&Gを経て、欧州系消費財メーカーや資生堂などで、マーケティング組織強化やビジネスの回復・伸長を、マーケティング担当副社長やCMOとして主導。2018年より独立し、現職。消費財や化粧品をはじめ、輸送機器、家電、放送局、電力、D2C、医薬品、IP、BtoBなど、国内外の多様なクライアントのマーケティング組織強化やブランド戦略を支援。博士(経営学・神戸大学)。 著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)。

 

定価:2,640円(本体2,400円+税) A5判 304ページ
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