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【CES2023】「メタバース」と聞いてどの“五感”を思いつくかが、ブランド活動に違いを生む(玉井博久)

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世界最大規模のテクノロジーカンファレンスである「CES2023」が米国・ラスベガスで開催され、1月8日に閉幕しました。本稿では、江崎グリコの玉井博久氏が現地の様子と注目トピックをレポートします。

CES2023はメタバース推し

CES2023が1月5日~8日にラスベガスで開催されました。過去2年間はコロナによる国家間移動制限により、私はオンラインで参加しましたが、今年は3年ぶりにラスベガスに行き、リアル参加をしてきました。そもそもアメリカに行くのも3年ぶりでしたが、経由地のサンフランシスコでの入国手続きはコロナ前と何も変わらずスムーズ。ラスベガスに着いてからもCES会場では、マスク着用もコロナ陰性証明やワクチン接種証明の提示も不要で、3年前と何も変わらない状況でした。ただし出展者や参加者は3年前と比べるとやや減っていました。

開催初日朝の、メイン会場のひとつであるEureka Park入口の様子。

1月5日の開催に先駆けて、3日にはCESを運営するCTAからメディア向けに「CES2023 Technology Trends Update」として、今年の注目トピックが紹介されました。モビリティやサスティナビリティ、ヘルステック、ゲーミング関連のテクノロジーが紹介されましたが、なかでもメタバースに関する説明に比較的多くの時間が割かれた印象です。

CTAのSteve Koenig氏は、「メタバースはリアルトレンドだ」と力強く述べ、決して終わっていないと強調。むしろ、あらゆるモノ・サービスがメタバースにつながっていく広がりを「Metaverse of Things」という言葉で紹介したくらいです。メタバースは1990年代のインターネットと同じで、これからの重要なインフラになると述べます。今年は初めてCESメイン会場のコンベンションセンターで、メタバースをテーマにしたエリアを設置。CES全体でメタバースを盛り上げていこうとする印象すら受けました。

メイン会場のコンベンションセンターに今回初めてメタバースエリアが設置された。

翌4日に開催されたセッション「The Tech Trends That Are Now Required Knowledge for CMOs」においても、やはりメタバースが話の中心でした。Media.MonksのCatherine D. Henry氏は、「これからを担う世代がどの様な行動様式をとるのかを考えれば、メタバースにコミットしない手はない」と言います。ゲームは若い世代に支持されていますが、今のゲームの多くがバーチャライズした体験を提供していることもあり、「ネクストジェネレーションにとってみれば、バーチャルでの体験はごく自然なことだ」と。

さらに彼ら・彼女たちにとってみれば、ゲームというのはただ楽しむためだけのものではなく、ソーシャライゼーションの場であり、コネクションの場。そうした日常の欠かせない場においてバーチャライズされたものに日々触れている人々を考えれば、ブランドがメタバースに取り組まないという選択肢は考えにくいというのです。

メタバースとは、バーチャライゼーションとイマージョン

それでは「メタバースに取り組む」とはいったいどういうことなのでしょうか。ヒントはバーチャライゼーション(仮想化)とイマージョン(没入感)。「何かを仮想的につくり出し、それによって没入できる体験を提供していく」と解釈できます。ではブランドは、これから仮想化と没入感をどうやって実現すればよいでしょうか? 何が必要でしょうか?

私が真っ先に思いつくのはVRゴーグルを通して見るバーチャル空間で、次に思いつくのがARグラスを通して見る拡張現実。いずれも視覚情報です。とにかく目に見えるものがいつもの世界とは異なり、そこにあたかも自分が本当にいるような感覚をつくり出す、ということをイメージします。

しかし、こう考えている時点で、私は“メタバースでの差別化されたブランド活動をつくり出せない方”にいることを、今回CESに参加したことで思い知らされました。なぜ私は「仮想」「没入」という言葉を聞いただけで、「視覚」情報のリッチ化を前提に考えてしまっているのだろう、と。その発見をさせてくれたのが、日本のスタートアップであるアロマジョインでした。

次ページ「仮想と没入の実現において視覚情報の強化を前提にしない」へ続く