広報の効果測定、どうすればいいですか? 高広伯彦×本田哲也×片岡英彦(後編)

パブリシティ獲得からオウンドメディア活用まで広報企画の立案を指南する新刊『成果を出す 広報企画のつくり』(片岡英彦 著)が12月21日に発売となった。ここでは本書収録の鼎談を一部紹介。デジタル領域のマーケティングのプロであり研究者でもある高広伯彦氏、社会的な文脈を企業コミュニケーションによって創造する広報のプロ本田哲也氏、そして本書の筆者であり年間500本の企画に関与する東北芸術工科大学 企画構想学科 学科長/教授の片岡英彦氏の3人が、広報の効果測定について語り合った。

片岡:効果測定が広報活動においても求められるようになってきました。これまで広告と違って、メディア掲載については不確実性もあると言われてきましたが、効果測定の方法は多様化してきているように思います。

例えばユーチューバーに発注した施策の効果測定とマスメディアでの報道の効果測定について「費用対効果はどっちがいいの?」などと聞かれると、「ケースバイケース」としか答えられなかったりします。

僕が効果測定について質問された時は、旧来の広告換算や、どの媒体に載った、という測定は「やらないよりはやったほうがいい」と答えます。一方で広報活動の目的、KGIが売上を上げたいのか、見込み客を増やしたいのか、ゴールが定まっていないと効果測定ができないので、まずは目的を決めてもらうように勧めています。

忘れがちなのが、施策を実施するのであれば、施策を行う前と後で測定をしないと比較ができないという点です。何%上がったとか下がったとかを測定して「その差分を見ましょう」と話しています。例えば施策の後に店舗の売上が増えた、といったことは、因果関係までは分からなくても相関関係は測定できます。オンライン上のみのサービスに絞っていれば、デジタル上の広報活動とコンバージョンの関連性も分かりやすいですが、リアル・デジタル問わず事業をしていると、測定は悩みどころだったりします。

高広:細かいデータは取れるようになってきたとしても、片岡さんが言う「目的を決めること」が重要なポイントだと思います。

広報研究に出てくるフレームワークに、「インプット」「アウトプット」「アウトカム」の3つに分けるというモデルがあります。「インプット」は、施策そのものを指していて、それから得られる「アウトプット」、「アウトプット」から得られる「アウトカム」を測定するというものです。

広報活動は、何を目的として実施するのかに関してはバラバラなので、何にでも役立つユニバーサルな効果測定手法というのは現実的ではない気がします。目的はバラバラだったとしても、このフレームは適用できると思うので、取材対応などのインプットの結果、メディア露出などのアウトプットがあって、その結果、認知度が上がったなどのアウトカムを見ていく。片岡さんが言うプレ調査とポスト調査の差分を見るということですね。インプットに対してアウトプットとアウトカムをちゃんとつなげて語れるかどうかが重要だと思います。

片岡:アウトプット、アウトカムのつながりと、そこに紐づくコストを見ていく必要がありますね。

高広:例えばBtoB企業が製造業における自社のブランド認知度、パーセプションを向上させるという目的があって、ターゲットを企業のエグゼクティブと現場の2つに設定するとします。大企業の年齢層の高いエグゼクティブへのリーチは、日経新聞を中心にしたメディアにアプローチする。現場へのインプットはデジタルで行う。新聞・デジタルそれぞれの測定手法でアウトプットを測ったとしても、アウトカムとしては製造業におけるエグゼクティブから現場まで自社のブランド認知度が深まった、としてつなげて語ることはできます。測定ができていないというより、何を成果とするか考えるフレームワークができていないのではないでしょうか。

デジタルマーケティングにおいても、取れるデータは多いけれど、差分を見ていなかったり、仮説を立てて検証するためにデータを取りに行くといったことが抜け落ちたりしているところがあるように思います。

本田:コミュニケーション効果測定・評価協会(AMEC)では、「Integrated Evaluation Framework(統合型評価フレームワーク)」を2016年に発表しています。特徴は、アウトプット(実施活動による初期成果)、アウトテイク(どのように受け入れられたのか、ターゲットの反応やリアクション)、アウトカム(コミュニケーションがもたらした影響)の3つの「アウト」で成果を整理するところですが高広さんのお話とほぼ一緒。やっぱり効果測定をどうするかという話は、何のためにやるんですか、という目的設定と表裏一体。何を目的にするかを明確にして、合意してから始める。自分の仕事ではここを大事にしています。

効果測定を支援するツールもできているけど、テクノロジーが進化したからといってKPIを放り込めばすぐに成果が示せるというものではないと思っていて。目的設定と広報活動がフィットしているかどうかの理解が大事なのだと思います。

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高広伯彦氏

スケダチ代表取締役
社会構想大学院大学 特任教授
高広伯彦氏(たかひろ・のりひこ)

博報堂、電通、Googleや外資系企業等にて広告/マーケティング/デジタル領域の事業に20年以上かかわる。2009年スケダチ創業。マーケティングや事業開発支援を行う。マーケティング戦略などを専門領域とする研究者。著書に『インバウンドマーケティング』など。京都大学博士(経営科学)。

本田哲也氏

本田事務所 代表取締役
PRストラテジスト
本田哲也氏(ほんだ・てつや)

「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」に『PRWEEK』誌によって選出されたPR専門家。フライシュマン・ヒラード等を経て、2006年ブルーカレント・ジャパン設立、2019年より本田事務所代表取締役。著書に『戦略PR』『ナラティブカンパニー』など。

片岡英彦氏

東京片岡英彦事務所 代表取締役
東北芸術工科大学 企画構想学科 学科長/教授
片岡英彦氏(かたおか・ひでひこ)

日本テレビを経て、アップルコンピュータのコミュニケーションマネージャー、日本マクドナルドマーケティングPR部長などを歴任。企業のマーケティング支援活動のほか、WOMマーケティング協議会(現クチコミマーケティング協会)発足時のガイドライン検討委員を務める。東北芸術工科大学 企画構想学科 学科長/教授。

前編はこちら

鼎談の全文は書籍でお読みいただけます(この10年の広報活動の変化や、BtoB企業広報について、これから広報の仕事に就きたい人へのメッセージなど)

『成果を出す 広報企画のつくり方』
片岡英彦著

本書の内容
第1章 テレビのディレクターに「取材したい」と思われる企画
第2章 ユーザーが見たくなる「動画」を広報に活用する企画
第3章 「商品・サービス広報」の企画 提案に必要な要素を整理
第4章 「企業広報」の戦略を立案 施策後の態度変容を目指す
第5章  パブリシティ活動の目標設定と効果測定
第6章 「共創」の座組みを戦略的に構築 パートナーシップ広報の企画
第7章 著名人、インフルエンサーを活用した「口コミ創出」のための企画
第8章 進化する「周年事業」の企画 将来性を伝える機会に
第9章 全社戦略を紐づけ提案「インターナルコミュニケーション」の企画
第10章 広報活動のこれから」~人の心は物語で動く~
<特別鼎談>高広伯彦氏×本田哲也氏×片岡英彦氏

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