Z世代さんと言う人はいない。決めつけの刃に気をつけて。

ある日カフェで考え事をしていたときのこと。隣の席に自分と近い業界と思しき男性が、広告のターゲット論についてなにやら語っている声が聞こえてきたのです。

もちろん、誰に伝えるか、が明確であればあるほど、訴求もシャープになってといく……とは頭では理解しつつ、その人がなんだかやたらと「括りたがり」なのが気になって、そっちが気になって仕方ありませんでした。

「〇〇区に住むなんちゃら世代の女性は大型の四駆に乗って週末は神奈川方面より千葉方面に行きがちで飼っている犬の犬種はトイプードルかチワワで……」

ぼくの思考は途中でどこかへ旅立ち、やたらと括りたがるその人の、少し白髪の混じったもみあげを静かに見つめていました。

なんですかね、ターゲットを属性で分けるのはもちろん大事なことなんですが、なぜか脳内に悪魔のささやきのように聞こえてきてしまうのです。

けっきょくのところ「人による」と。

たとえが合っているかアレですが陰気なジャマイカ人だっているはずだし、酒に弱いスナックのママだってきっといる。

なんとか世代というのもそう。ゆとりとかさとりとかZみたいな言葉で区切れるほど人間は単純にできてないはずだし、それって原始時代から言われていたという「最近の若いやつは」と同じようななんとなく都合がいいだけの括り方なんじゃないかと。

そういう先入観に流されたら、なにか大切なものを取りこぼしてしまう気がしてしまうというか。複雑で、曖昧で、なんだかよくわからないのが人間。でもだからこそ愛おしいのが人間。という前提を頭のどこかに置いたうえで、ターゲット設定しなければ……と。データまみれの時代だからこそ、より強く思うのです。

みなさん、やたらとデータで決めつけたがるターゲティングおじさんにならないようお気をつけください。ぼくもじゅうじゅう気をつけます。

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野澤幸司(博報堂キャビン コピーライター/クリエイティブ・ディレクター)
野澤幸司(博報堂キャビン コピーライター/クリエイティブ・ディレクター)

日本郵政グループ「進化するぬくもり」、中外製薬「創造で想像を超える」、niko and…「であうにあう」、東京ガス「電気代にうる星やつら」、日野自動車「ヒノノニトン」、ヘーベルハウス「家族人数ぶんの幸せ」、バカラの新聞広告など。「妄想国語辞典」(扶桑社)でAmazon本総合ベストセラーに。これまで計9冊を上梓。

野澤幸司(博報堂キャビン コピーライター/クリエイティブ・ディレクター)

日本郵政グループ「進化するぬくもり」、中外製薬「創造で想像を超える」、niko and…「であうにあう」、東京ガス「電気代にうる星やつら」、日野自動車「ヒノノニトン」、ヘーベルハウス「家族人数ぶんの幸せ」、バカラの新聞広告など。「妄想国語辞典」(扶桑社)でAmazon本総合ベストセラーに。これまで計9冊を上梓。

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