企業の価値向上を目指す上で、売上や利益といった数字はもちろん重要だが、それだけでは見えてこないのが「のれん」、すなわち非財務的な価値だ。
社会にポジティブな影響(インパクト)を与えながら持続的な成長を目指す「インパクトスタートアップ」。その普及と支援を目的とする一般社団法人インパクトスタートアップ協会(ISA)の活動は、企業の非財務的価値を体現しているといえる。
同協会の活動を通じて見えてくる、これからの企業価値のあり方について、ISAの理事を務める米良はるか氏に伺った。
ユニコーンだけが正解ではない。「成長」の定義をアップデート
かつてのスタートアップの世界では、時価総額10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」になることが、1つの大きな目標とされていた。それは今も、IPOを目指す上で重要な視点であることに変わりはない。
しかし、ISAではその価値観だけがすべてではないと考えている。米良氏は「会社経営には、ユニコーンという時価総額を目指す形もあれば、日本にある様々な社会課題に目を向け、ビジネスという手段で解決していく形もあると思います。ISA立ち上げ前から、そうしたプレイヤーがもっと増えてほしいと思っていました」と語る。
2021年10月に発足したインパクトスタートアップ協会(ISA)。その根底には、「社会課題解決と事業成長の両立」を目指すスタートアップを日本にもっと増やしたいという想いがあった。
「これまで社会課題解決の担い手は、主に政府や行政、つまり税金を使った取り組みが中心でした。しかし、課題が複雑化する現代において、民間が主導することで、よりコストパフォーマンス良く解決できる領域があるのではないか。そうした民間プレイヤーを増やしていきたいという思いも、協会設立の大きな理由です」と米良氏は続ける。
これまで行政やNPOが担ってきた社会課題解決を、民間セクターが「持続可能な事業」として担う。こうした変化は、企業の新たな信頼(のれん)を考える上でも重要な視点となる。
環境、教育、農業など、ISAの会員企業が取り組む社会課題は多岐にわたる。各領域のソリューションを持つスタートアップが、一社単独で規制緩和やルールメイキングに取り組むのは、非常に負荷が高い。しかし、協会というプラットフォームがあれば、同じ志を持つ企業が集い、連携し、市場全体の成長と課題解決を共に加速させることが可能になる。
非財務情報を価値に変えるハブ機能
ISAの会員数は、設立からわずか3年で320社を超え、日本のスタートアップエコシステムとしては最大級の規模を誇る。当初は、時価総額の成長を第一に目指す価値観とは少し異なる概念としてスタートしたが、現在ではユニコーンを目指すSaaS企業も加盟しており、その裾野は大きく広がっている。