クリエイターの皆さんに独自のお題を設定してもらいプレイリストをつくってもらうシリーズ企画。今回は漫画家/イラストレーター/CMプランナーの岡村香穂さんに選曲をしてもらいました。プレイリストはSpotifyでも公開中です。
ヒロイズムはイヤホンの中に
子ども時代やティーンの頃、私たちはどこかヒロイックな気分で生きていられたのではないでしょうか。自分の物語の中心に立ち、世界がそれに呼応しているような感覚です。しかし歳を重ねるにつれ、さまざまな出会いや経験、そして過剰なほどの情報に触れ、その感覚を手放していきます。仕事や子育ての現実のなかで、ヒロイズムは時に足かせになってしまうからです。
それでも人生は、「よし、うまくいった」と単純に言い切れるものではありません。むしろ、割り切れなさや矛盾を抱えて続いていくものです。日々の中で、何の問題がない日でも、ふと心が空白になる瞬間があります。そんなとき、私は仕事の休憩中や電車の中で、ヒロイズムに浸ります。高岡早紀の耽美な歌に酔ったり、LEX の歌詞に触れ、あえて悲劇のヒーローのような気持ちになってみたり。『胸の振子』は80 年ほど前の曲ですが、とても沁みます。昔の曲や外国の知る人ぞ知る曲に出会い感動できた時、人類の普遍の物語と繋がるような喜びを感じるのです。
音楽には気分を上げたり、前向きにさせたりする力があります。しかしそれ以上に、とりわけ歌謡には、人間のどうしようもなさや揺らぎを含めて、人生そのものを肯定してくれるような響きがあるように思います。よく考えれば、死ぬことも、生きていることも、とても不思議で、とてつもなく壮大なドラマです。想像力を借りなければ、本来は耐えられないのかもしれません。
だからこそ、音楽を聴くひとときくらいは、その魔法に身を委ねていいのではないでしょうか。忘れがちですが、私たちはそれぞれが自分の人生の主役です。朝のドラマにナレーションが寄り添うように、私たちの人生にもまた、音楽がそっと寄り添っていてほしいと思います。
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