Meta×博報堂のインサイト提供から見えた界隈にダイブする「これからの広告」とは?

Metaが推進する「パーソナルな超知能」への巨額投資は、SNSを単なる効率化の場から、ユーザーの「言葉にできない感情」に寄り添うプラットフォームへと進化させている。ハッシュタグに宿る細やかなインサイトをいかに捉え、ブランドとユーザーが共に価値を創る「余白」をどう設計するか。博報堂との連携事例から、広告が新しいカルチャーへと昇華する、次世代のマーケティング戦略を探る。

(左から)博報堂 クリエイティブディレクター 杉山芽衣氏、執行役員 生活者インターフェース デザインセンター長 エグゼクティブクリエイティブディレクター 嶋浩一郎氏、Meta日本法人 Facebook Japan 上級執行役員 営業本部長 坂下洋孝氏、エージェンシーパートナー 永久眞規氏

(左から)博報堂 クリエイティブディレクター 杉山芽衣氏、執行役員 生活者インターフェース デザインセンター長 エグゼクティブクリエイティブディレクター 嶋浩一郎氏、Meta日本法人 Facebook Japan 上級執行役員 営業本部長 坂下洋孝氏、エージェンシーパートナー 永久眞規氏

AI投資がもたらす「パーソナルな超知能」の世界

―Instagramは15周年を迎え、ユーザーだけでなく広告主や広告会社にとっても不可欠なSNSのひとつとなっています。テクノロジーの進化も顕著ですが、直近のプラットフォームの変化についてお聞かせください。

坂下:Metaのミッションは、人と人がつながる未来とテクノロジーを創出することです。

現在、世界人口の約半分にあたる35億人以上が毎日Metaのアプリを利用しており、特に日本は、Instagramのエンゲージメントが極めて高い最重要市場です。いま、この巨大なネットワークを支えているのが、2025年は年間で600~700億ドル規模、4年間の累計では1000億ドルを超えるAI投資です。

CEOのマーク・ザッカーバーグは「世界中のすべての人にパーソナルな超知能(スーパーインテリジェンス)を届ける」というビジョンを提示しました。2025年11月に段階的に提供開始したAIアシスタント「Meta AI」の日本語版も、段階的に提供を開始しています。

AIはもはや単なる自動化のツールではなく、個人の心に深く響く「体験」を届けるための、プラットフォームの中核を担っています。

杉山:いちユーザーとしてスマホを眺めていても、その進化を如実に感じます。以前は「さっき検索した商品」が追いかけてくるような印象でしたが、最近は「そうそう、今の気分はこれなんだよ」と、自分でも自覚していなかった感情をAIが掬い上げてくれる感覚です。

AIのレコメンドは単なる効率化と思われがちですが、実は「言葉にできない感情」や「気分」を読み取り、寄り添ってくれている。嫌な気分にならず、知っておいた方がいいとすら思える“感情の先回り”が、広告、ひいてはブランドの好意度を高めることにもつながっていると感じます。

坂下:実際、広告主の皆さんからも、AIによるパーソナライズがブランド認知につながっているという声を多くいただくようになっています。Instagramで目にするコンテンツの50%以上がAIによるレコメンドであるいま、生活者はより「共感」できる、自分に最適化された体験を当たり前に求めていると考えます。

「価値共創パッケージ」とさらなるインサイト発掘の挑戦

―そのAIの進化を、具体的な施策にどう落とし込んでいるのでしょうか。

永久:私たちはInstagramを「好きと欲しいをつなぐ自分ごと化プラットフォーム」と定義しています。

そこで重要になるのが、利用者やクリエイターと同じ目線でコミュニティに参加し、一緒にブランドの価値を高めていく「価値共創マーケティング」という概念です。私たちはそのための具体的なプロセスとして、「価値共創パッケージ」を提供しています【図表1】

図表1 価値共創を実現するプランニングプロセス

図表1 価値共創を実現するプランニングプロセス

これはブリーフィング段階からInstagram内のリアルな会話を分析し、特有のインサイトを抽出するものです。

例えば、資生堂さまとの取り組みでは、利用者がどのようなトーンで美容を語り、どんなハッシュタグに反応しているかを徹底的に分析しました。結果として、購入意向は業界平均の5.6倍、ブランド検索量は51%増という高いパフォーマンスを示しました【図表2】

価値共創パッケージの成功を受け、Instagramに眠るインサイトの重要性を再認識し、ブランド広告の新しい取り組みとして、現在嶋さま、杉山さまをはじめ、博報堂のクリエイティブディレクターの皆さまと、ブリーフ段階というプロジェクトの上流から連携させていただく体制へと発展しています。

ブランド新規顧客の獲得とファンの醸成

ANESSAでは、価値共創パッケージによる顧客インサイトの深掘りと、Data Clean Roomを活用したAdvanced Analyticsを掛け合わせ、戦略をアップデート。インサイトや分析結果をコミュニケーションプランへ精緻に落とし込むことで、クリエイティブの多角化とブランドインパクトの最大化を実現した。
 
●担当者によるコメント
Meta、博報堂との3社での継続的な協業を通して、ANESSAの潜在顧客に対して効果的なアプローチを実現することができました。共に挑んだこの共創の形は、ブランドとプラットフォームの新しい関係性を切り拓く、大きな一歩になると確信しています。今後も3社でブランドコミュニケーションの深化に取り組んでいく予定です。(ANESSA セルフサンケア・スキンケアデジタルマーケティング 戦略Gブランドマネージャー 西尾裕成氏)
 
価値共創パッケージで得られた顧客インサイトは、生活者の本音を起点にした新規クリエイティブ訴求の開発の実現と、インフルエンサーアサインメントのヒントになりました。また、Advanced Analyticsを活用することでインフルエンサー施策の売上貢献や、適切なインフルエンサー起用の方向性を可視化でき、実際のプランニングに生かすことができました。(博報堂 Executive Manager /部長 佐藤卓氏)

 

図表2 取り組み事例

期間:2025/7/15 ~ 8/31
※1 同条件で再度テストを行った場合に同じ結果と推定される確率(有意差): 99%
※2 同条件で再度テストを行った場合に同じ結果と推定される確率(有意差):98%

 

図表2 取り組み事例

図表2 取り組み事例

「#缶チューハイ」から「#チューハイ片手に」への変化

―クリエイター目線で、今のプラットフォーム環境をどのように捉えていますか。

:今のSNS空間には、共通の価値観で結ばれた熱量の高い「界隈(コミュニティ)」がいくつも存在していて、そこでの共感が人々の原動力となっています。

そうなると、これまでクリエイターたちは良い広告をつくるところで仕事が終わっていましたが、いまは載せた後、どうリアクションされ、どんな会話が派生していくかという「読後感」まで含めた設計が重要になってきました。そうした中で、私が注目しているのはハッシュタグを含めたInstagram内の会話です。

博報堂生活総合研究所が1月15日に発表した「感情に関する意識調査」によると、「ポジティブな感情であっても、浮かれすぎず落ち着かせる」と答えた人が6割を超えていました。炎上などを恐れて、気持ちを出す機会も相手も減ってしまう。生活総研ではこうした状況を「感情ミュート社会」と名付けました。

一方で、Instagramのハッシュタグを含めた会話を見ると、そこにはまだ、素直な「感情のひだ」が細かく漏れ出していると感じるんです。以前は検索用の「モノの名前」が書かれていましたが、いまは「気分」が込められている。例えば「#缶チューハイ」が「#チューハイ片手に」といった具合です。直接、言葉にすると角が立つような感情でも、ハッシュタグというフィルターを通せば、同じ感情を持つ人とつながることができる、という安心感がある。これは現代の短歌ブームにも通じる「感情の仮託」ではないでしょうか。クリエイターから見れば、Instagram内の会話はまさにインサイトの宝庫。「この気分、わかる」という共感の接着剤なんです。

杉山:そうした世界にいかにブランドが飛び込ませてもらうか、ということですよね。

つくり手として常に意識しているのは、界隈ごとの「作法」。タイムラインに流れてくる「いかにも広告然とした動画」は0.5秒で飛ばされてしまうけれど、その界隈の文脈に乗ったコンテンツなら、広告だと分かっていても最後まで見てしまいます。

:昨今「共創が大切」とよく言いますが、私はこのことを料理で例えて説明します。

例えば日本の伝統的な江戸前寿司の職人が、海外の人に「これが正しい寿司だ!」と強要しても、文化はなかなか広まりません。でも、現地の人たちが「アボカドを入れたら美味しいのでは?」とアレンジした「カリフォルニアロール」を認めることで、寿司文化は世界中に爆発的に広がりました。

ブランドとユーザーの関係も同じです。ブランド側が「これが正解」と押し付けるのではなく、ユーザーが自分たちの文脈でブランドを解釈し、遊んでくれる「余白」を許容する。その解釈の自由度こそが共創の本質で、カルチャーとして広がる可能性を秘めていると感じます。

杉山:すべてを説明しすぎず、受け手の想像力を発動させる「余白」があるからこそ、ユーザーは自分の文脈でブランドを解釈し、能動的な共感を持ってくれる。Instagramの、写真とコンパクトなテキストという組み合わせも、この「余白」をつくりだす一助になっていると思います。

ブランド価値を最大化させる長期的なビジネスパートナーへ

―今回、実際に連携していかがでしたか。今後の展望と合わせて、お聞かせください。

杉山:Instagramは単なる情報の拡散の場にとどまらず、「文化・カルチャーとして広がる情報」をつくり出せる点に可能性があると感じました。広告コンテンツを情報の起爆剤とし、それが生活者の共感を呼ぶことで界隈を形成する。

また、ブランドと商品の境界線がなくなりつつある現在、プラットフォーム上の情報の鮮度そのものが好意的に捉えられるため、スピード感を持って運用することでブランド広告としての価値を発揮します。

私の場合、その時々の時事ニュースやモーメントを捉えて、細かく運用をチェックしていますが、それを実現するためのチームづくりも重要だと思います。

:今後は単なる機能の解説ではなく、「なぜ今、人々はこういうコミュニケーションを求めているのか」という人間理解に基づいた戦略議論を、ブリーフィングの前段階からご一緒したいですね。ブランドが大切に積み上げてきたストーリーを届けることと、ユーザーの今の気持ちを汲み上げること。このふたつの境界線が溶け合ったとき、広告は新しいカルチャーの一部になれるはずです。

永久:これまで私たちは、仕様や媒体メニューの話など、プロダクトを起点として関わるメディアパートナーという立ち位置でした。今後はこれらに加えて、ワンチームとして長期的な関係性で戦略議論ができる、より強固なビジネスパートナーに進化していきたいと考えています。

坂下:AI時代において、エージェンシーの皆さまの存在意義はこれまで以上に高まっていくと確信しています。

特にクリエイティブ領域は、AIだけでは到達できない「ブランドを築く根幹」です。今回のような対話の機会をいただけたことを大変光栄に思うとともに、今後も戦略的なビジネスパートナーとして、共に新たな価値を創造していけることを心より楽しみにしています。

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