新宿駅のガムテープ文字がナイキに 新店舗オープンを彩る修悦体の力

ナイキの新たな拠点「NIKE SHINJUKU」が4月10日に東京・新宿にオープンする。大阪の繊維商社のヤギと韓国のスポーツアパレルWINWIN SPORTS が共同出資したWINWIN YJVが運営する。世界一の乗降客数を誇る新宿駅をデザインのインスピレーションの源泉とし、グラフィックデザイナーの佐々木俊氏と、ガムテープを用いた独創的な駅案内表示「修悦体」で知られる佐藤修悦氏とのコラボレーションによって、店舗の世界観が構築されているのが特徴だ。

「新宿らしさ」の探求から生まれた、佐藤修悦氏とのコラボレーション

「NIKE SHINJUKU」のLEDメディアファサードを彩るロゴデザインを構築する上で、アートディレクターとして起用された佐々木俊氏にナイキ側から期待されたのは、「新宿という場所ならではのロゴであること、なおかつスポーツブランドのナイキらしさもあること」であった。この命題に対し、佐々木氏が共作者として提案したのが、佐藤修悦氏であった。

佐々木氏・佐藤氏共作のナイキ新宿ストアロゴ

佐藤氏はデザイナーではなく、長年、新宿駅の警備員として勤務してきた人物である。工事中の駅で利用者が困らないようにと、ガムテープを用いて案内表示を制作し始めたことから生まれた「修悦体」は、新宿駅を利用する人々にとって馴染み深い存在となっていた。佐々木氏は、自身にとって「新宿といえば修悦さんのガムテープ文字だと思った」と、その起用理由を語っている。

JR新宿駅構内に掲出されている新店舗オープンを知らせるOOH

佐々木氏と佐藤氏の協業は、今回が初めてではない。佐々木氏によれば、約6年前に佐藤氏が制作した「渋谷」の文字をアパレル商品に展開する企画で、自身が仲介役を務めた経験があるという。佐々木氏は「今回、尊敬する修悦さんと文字でセッションできたこと、さらにこのナイキという大きいブランドでそれを実現できたことがとてもうれしい。修悦さんの魅力的な創作物は、彼のお茶目さだったり、人間としての魅力によって成り立っているのだなと、改めて実感できました」と、今回の本格的な共作への喜びを語っている。

「修悦体」の根底には、目立とう、話題になろうという意図はなく、ただただ目の前の環境を良くしたい、人々を助けたいという純粋な思いがある。佐々木氏は、その作家性や職人技ならではの強さ、そして文字一つひとつに宿るユーモアや明るさに惹かれたという。

佐々木氏の佐藤氏への憧憬は、今回のコラボレーションに始まったものではない。弊誌『ブレーン』2018年8月号の連載「デザインの見方」で佐々木氏を取材した際、同氏はすでに佐藤氏への深いリスペクトを語っていた。当時、工事中の駅で初めて「修悦体」を目にした時の衝撃や、その文字に宿る明るさ、作家性といった議論を超越した強さに惹かれたと明かしていた。

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