「カードって何?」から始まる次世代との対話 JCBが宣伝会議賞で見出した、若年層のインサイトと「思いの厚み」

日本発唯一の国際カードブランドとして確固たる地位を築くジェーシービー(JCB)。同社はマス広告による大規模なプロモーションを展開する一方で、宣伝会議賞の中高生部門への協賛を2023年から継続している。その背景には、クレジットカードを持つ前の若年層との接点創出と、企業からの発信では見えにくい「次世代のインサイト」を把握するという明確な狙いがあった。過去の応募作品から得られたブランディングのヒントや、社内を巻き込む白熱の審査プロセス、そして「買い物の情緒的価値」を問う今年度の課題への期待について、JCB広報部の大江明弘氏と渡部彩花氏に伺った。

マス広告では届きにくい層へアプローチ 「次世代のインサイト」を探る

JCBの広報部では、テレビCMなどを通じたブランドへの好感や共感の醸成、およびカード獲得につながる商品広告などを担っている。同社は日本発唯一の国際カードブランドとして高い認知度を誇り、マス広告などで広く生活者とコミュニケーションを図ってきた。

しかし、広報部の渡部氏は「マス広告だけでは、クレジットカードを持つ前の世代との接点が作りづらいという課題があった」と振り返る。金融教育の一環として教材提供なども手がける同社だが、18歳未満の中高生に対して、そもそもクレジットカードとは何かを知ってもらい、JCBというブランドに触れてもらう機会を広く求めていた。宣伝会議賞の中高生部門への協賛は、まさにこの目的に合致するものだった。

協賛のもう一つの大きな狙いは、次世代の率直なインサイトを得ることだ。広告は基本的に企業からの一方的な発信になりがちであり、若い世代がカードや自社のブランドをどう捉えているかは見えにくい。渡部氏は「中高生の視点を通じて、私たちがどう思われているのかが見えるのは非常に大きな収穫だ」と語る。マス広告では「そもそもカードってなんだっけ」と深く考えてもらうきっかけをつくることは難しいが、課題に向き合う中高生の思考プロセスを通して、自社の見え方を客観視できる貴重な機会だ。

役員も巻き込む白熱の審査 AI時代に見えた「言葉の厚み」

過去数年の協賛を通じて、同社は多くの気づきを得てきた。例えば、以前「日本生まれのJCBを応援したくなる」というテーマで課題を出した際のことだ。社内でも「日本生まれであること」は感覚的に強みだと捉えていたが、応募作品を見ることで「なぜ日本生まれが良いと思ってもらえるのか」という中高生の価値観が言語化され、ブランド理解の解像度が飛躍的に上がったという。それらの知見は、現在のブランドCMなどコミュニケーション施策のヒントとして蓄積されている。

また、複数年にわたる協賛の中で、広報部の大江氏は応募作品の質の変化を感じている。「AIの普及も影響しているのか、単に言葉を組み合わせるだけでなく、企業がどのような思いで事業を展開しているのかを深く分析し、考察した上でコピーが作られ、作品の背景にある思いの厚みが年々増している印象を受ける」と大江氏は指摘する。応募者がインターネット上でJCBを調べた際にどのような情報がヒットするのか、同社としても検索時のコミュニケーションのあり方を強く意識する契機になったという。

集まった数千件にも及ぶ応募作品は、日頃からテレビCMや各種広告コミュニケーションを担当している広報部広告グループのメンバー全員で目を通している。中高生が本気で考えた作品に対し、JCB側も本気で向き合い、白熱した議論を交わしているという。選定プロセスは役員報告にまで及び、そこでも意見がぶつかり合うほどだ。大江氏は「どれも素晴らしい作品であるが、例えば一昨年に選ばせていただいた『ずっと言いたかったんだ。「JCBで。」』というコピーは印象深く、私の頭の中ではすでに30秒のCMができ上がっているほど魅力的だ。若年層向けのプロモーション機会があれば、ぜひ形にしたいと狙っている」と熱を込める。

協賛企業賞 受賞作品(第62回宣伝会議賞 中高生部門)

買い物の「情緒的価値」をともに考える 今年度の課題と期待

こうした過去の蓄積を経て、今年度は「買いものは『JCBで』と言いたくなるキャッチフレーズ」という課題を設定した。この課題の背景には、現在展開中のブランドCM「買いものは、メッセージだ。」のコンセプトが深く関わっている。渡部氏は「買い物は単なる機能的なものではなく、誰かを思う気持ちや、思いをつなぐ情緒的な価値を生むもの。そこからJCBのブランド価値を実感していただきたいという狙いがある」と説明する。このテーマを中高生とともに考えることで、JCBの提供する価値をより深く理解してもらえるのではないかという期待が込められている。

本年度の課題:買いものは「JCBで」と言いたくなるキャッチフレーズ

応募者に向けて、渡部氏は「ぜひJCBのブランドCMをご覧いただき、JCBが大切にしている想いや目指している価値観に触れてほしい。また、CMのコンセプトを紹介するWebサイトのステートメントも参考にしながら、自分なりの視点で課題に向き合ってもらえればうれしい」とアドバイスを送る。さらに大江氏は、公式Xアカウントのチェックも推奨する。「CMに関する発信に対し、大変ありがたいことに数多くの方々から『JCBのこういうところがいい』と非常に熱量の高いコメントをいただく。我々自身が気づかされることも多いので、そうした反応もぜひヒントにしてみてほしい」と語る。宣伝会議賞を通じた若年層との対話は、JCBにとって自社のブランド価値を再定義し、社内に新たな熱量をもたらす重要なプロジェクトとして進化を続けている。

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宣伝会議賞事務局(株式会社宣伝会議内) 
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「宣伝会議賞」は月刊「宣伝会議」が主催し、広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。雑誌『宣伝会議』の創刊100号を記念して1962年に始まり、以降、若手コピーライターの啓発、ならびに人材の発掘・育成やコピーライターの意識の向上を目的に開催しています。現在は「コピーライターの登竜門」として知られ、日本最大規模の公募型広告賞の一つです。

協賛企業が提供する広告課題に対して、キャッチフレーズや企画アイデアを広く募集する事で、企業のマーケティング・ブランディング施策におけるクリエイティブ価値の創出機会として評価されています。審査員は広告界の第一線で活躍するコピーライターやCMプランナー、クリエイティブディレクター約100名が務めます。

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